石破総理の辞任にもつながる“総裁選の前倒し”について、自民党議員の4割が要求していることがわかりました。
石破総理は5日夜、自分に近い議員たちと、国会近くのホテルで会合を開き、総裁選をめぐる対応を協議していたとみられます。
日に日に増す総裁選前倒しの要求。
5日、鈴木馨祐法務大臣が、前倒しを求める考えを自身のSNSで表明。現役閣僚としては、初めてです。
また、5日朝、当選2回の議員が集まり、国会内で情報交換しました。
「だいぶ賛成が多い雰囲気ですが、どうなるか」
「参議院のほうは、どうなるかよくわからない」
5日にも態度を表明する可能性もと言われていた小泉農林水産大臣。
「私としては、一致結束につながるような対応が必要だと考えています」
国会議員295人と都道府県連47の総数342の過半数、172が要求すると、総裁選の前倒しが決まります。
ANNの取材では、都道府県連で要求するのは、4日から3増えて16、要求しないが1増えて5となっています。
「総裁としての器量がない。そういう判断で、早急に変わるべきだという結論」
また、要求する方針の国会議員は、全体の4割ほどの120人超え。過半数の172まで約40となっています。一方、要求しないのは約50人。さらに、態度未定・不明という人が120人ほどいる状況です。
北海道函館市が地元の向山淳衆議院議員は、総裁選前倒しを要求することを決断しました。当選1回で、麻生派に所属しています。
総裁選の前倒しを要求する考えを表明した麻生最高顧問。
「私自身につきまして、総裁選挙の前倒しを要求する書面に署名、そして提出をすると決めております」
派閥トップの言葉は、今回の判断に影響したのでしょうか。
「去年10月での初当選組、石破総裁の下で戦って、初当選させていただいた。こうした要求をするというのは、忸怩たる思いもある。政策実現のため、ご自身は要求することにしたと。私自身が発言してきたこと、表明してきたことと“同じお考え”」
麻生最高顧問は5日夜、茂木前幹事長と都内で会談。前倒し総裁選での対応などについて意見交換したものとみられます。
「いろいろ意見交換しました」
ただ、こうした状況を冷ややかに見る向きもあります。
「結局、党全体で、派閥をなくそう、党を改革しようとしているなかで、派閥を残した人たちが得をするとか、流れをつくるということでは、自民党が先祖がえりをしてしまうという感想を持ちました」
5日の石破総理。
トランプ大統領が、相互関税と自動車関税について、15パーセントに引き下げることを明記した大統領令に署名したことを歓迎しました。
「日米の関税をめぐる交渉は、政府の最優先課題であって、一日も早く、これがいい形で実現するようにということで、総力を挙げて取り組んできたものです。こういう形で多くの方々のご理解お力添えを得ながら実現したということは、本当にすばらしいことであったということに尽きます」
これで、石破氏が総理を続ける理由としていた関税交渉は一段落したはずです。
「私からトランプ大統領宛ての親書を作成いたしました。これをお届けをし、トランプ大統領とともに、日米関係の黄金時代をともに築いていきたい。そして、トランプ大統領を、ぜひ、日本にご招待したい」
さらに、石破総理は、物価高対策の追加経済対策を「この秋に策定」すると表明。この先も、政権を担う意欲を感じさせます。
「本人的には終わると思っていないのではないか」
総理周辺
「給付も含めて内容は詰まっていない。指示したら(政権に)何かプラスになるわけではない」
解散カードもちらつかせながら、党内の締め付けを図る石破総理。
自民党幹部からは、前倒し総裁選の日程について、「10月初めにも行う」との声も出ています。
◆自民党内を取材する澤井尚子記者に聞きます。
(Q.前倒しの要求が、約4割という状況で、党内はどのような空気なのでしょうか)
「取材を進めると、前倒し派が優勢と感じます。きょうは閣僚からも前倒しの声が上がりましたが、党の役職につく人の中でも、一定数が同様の意向を持っています。総理周辺を中心に切り崩しを図る動きもありますが、この週末、各都道府県連の意思決定次第では、一気に雪崩を打つ可能性もあると思います」
(Q.世論調査では、石破総理支持の声が多いなか、それでも前倒しの動きが高まっているのは、なぜなのでしょうか)
「中心になっているのは若手・中堅の議員です。『自民党をゼロから作る』という熱量が広がっているのが、大きいと感じます。もちろん話を聞くと、それぞれの地元で『まだ党内抗争をやっているのか』『単なる石破おろしじゃないか』という批判を受けているともいいます。ただ、国政選挙で2回もノーを突き付けられたのに、何もしなければ、国民からいよいよ見放されるという強い危機感があるんです。『党の表紙を変えて選挙に勝てる』という総裁選ではなく、『古い自民党をリセットする』『総裁以下の刷新を訴える』という声が、徐々に広がっているように感じます」
◆当の石破総理はどうなのでしょうか。政治部官邸キャップの千々岩森生記者に聞きます。
(Q.前倒しを求める若手議員には自民党への強い危機感があるということですが、こうした思いを、石破総理はどう見ているのでしょうか)
「もちろん、石破総理もそうした声は認識しています。先日の両院議員総会でも『多くの同士を失った。総裁たる私の責任だ』と、党内の思いを受け止める発言をしています。ただ一方で、総理は周辺に『誰がやっても大変な選挙なんだ』とこぼしています。党内の前倒し論についても、基本的には『自分をおろすための政局だ』というとらえ方、反発して、進退について頑なになっているという側面もあります」
(Q.4割近くが要求するとなると、かなりの勢いで前倒しが決まる公算も出てきました。事実上の“退陣要求”を突きつけられる形となりますが、その場合、石破総理は、どういう対応に出ますか)
「石破総理は、まだあきらめていないと思います。総理の側近は、所属議員らに、前倒しに賛成しないよう説得にかかっています。さらに、石破総理本人から直接『賛成に回らないでほしい』と言われた議員もいます。今夜、石破総理は、側近の閣僚や秘書官らと都内のホテルに集まりました。“解散カード”もあるのではとの疑心暗鬼も広がっているところです。実は、きのう、取材しますと、官邸内では、前倒しの結論が出る前に、つまり今週中に、総理が、ある意味で“潔く”自ら身を引く案も浮上していました。ただ、これは強い反対で、いったん、消えました。いずれにしても、石破総理は、揺れる心境のなかで、この週末、ギリギリまで局面打開を模索するとみられます」