石破総理が9月7日の夜、突然の辞任表明をしましたが、大きなカギとなったのが、前日に行われた菅元総理と小泉農水大臣による3者会談でした。
決断の舞台裏と今後のポスト石破の動きについて見ていきます。
■石破総理「党分断は本意でない」最大の心残りは…
9月7日午後6時から行われた会見で、石破総理は辞任を表明しました。
「まだやり遂げなければならないことがあるという思いもあるが、身を退くという苦渋の決断をした。それは、このまま臨時総裁選要求の意思確認に進んでは、党内に決定的な分断を生みかねないと考えた。それは決して、私の本意とするところではない」としています。
「かねてより私は地位に恋々とするものではない。 やるべきことをなした後に、しかるべきタイミングで決断すると申し上げてきた。米国関税措置に関する交渉に1つの区切りがついた今こそが、そのしかるべきタイミングである」
「政治とカネの問題をはじめ、国民の皆様方の政治に対する不信を払拭することは、いまだにできていない。このことは私にとって最大の心残り」とし、
次の総裁選については、
「来る総裁選には出馬は致しません。新しい総裁が選ばれるまでの間、国民の皆様方に対して果たすべき責任を着実に果たし、新しい総裁・総理にその先を託したい」と明言しました。
■辞任決断の舞台裏 小泉農水大臣や菅元総理などが説得
政治ジャーナリストの田崎史郎さんが取材した、辞任決断への舞台裏です。
党内に解散論などで、疑心暗鬼が広がっていることを受けて、石破総理が辞任表明する前日、小泉農水大臣が菅元総理に電話をしました。
2人の電話内容です。
「この局面で石破さんに言葉を届けられるのは、4年前に自ら身を引かれた菅さんしかいない」
「分かった。行く時は進次郎さんも一緒に来てくれ」
辞任表明の前日、9月6日午後8時半ごろ、小泉農水大臣と菅元総理は総理公邸で、石破総理と2時間会談をしました。
「党を割ってはならない。今の自民党を救えるのは総理しかいない。ご判断をお願いしたい」として、約30分で公邸を出ました。
「自民党が一致結束するために、前倒し要求の手続きをスタートさせてはいけない。それを止められるのは石破総理だけ」として、自発的な退陣を促したということです。
過去には、2021年、小泉農水大臣が菅政権で環境大臣だった時、当時の菅総理と連日会談を行い、退陣を進言。
これを受けて、当時の菅総理は退陣を決断した、ということがありました。
さらに、辞任表明の3日前、9月4日には、石破総理と共に政治改革を行ってきた、自民党の渡海政治改革本部長が内密に官邸を訪れ、石破総理に自発的な退陣を促したということです。
一方、辞任表明の当日には、赤沢経済再生担当大臣、岩屋外務大臣、平デジタル大臣らが内密に総理公邸を訪れ、石破総理に続投を求める『巻き返し工作』を行ったということです。
1、前倒し総裁選を要求する国会議員、都道府県連が過半数を上回る見通し
2、菅元総理、小泉農水大臣、渡海政治改革本部長らの説得
■総理続投 ギリギリまで模索 背景に“支持率”?
一方で、石破総理は週末、 ギリギリで打開策を模索していたようです。
石破総理が辞任を決断するまでを振り返ります。
9月2日、自民党は参院選挙の敗因をまとめた総括報告書に、
「党を一から作り直す覚悟で解党的出直しに取り組む」と明記しました。
さらに、選挙結果の責任を取るとして、森山幹事長、小野寺政調会長、鈴木総務会長、木原選対委員長の党4役が、石破総理に辞任の意向を伝えました。
「地位に恋々とするものでは全くない。しがみつくつもりも全くない。責任から逃れることなく、しかるべき時にきちんとした決断をするということが、私が果たすべき責務」とし、続投する意向を表明しました。
そうした中、9月4日には日米関税合意に関して、トランプ大統領が『相互関税』の特例措置や自動車関税の引き下げに関する大統領令に署名をしました。
これにより、石破総理が最優先課題としていた日米関税協議が大きく進展する結果となりました。
「関税協議を受け、続投方針に変わりがないか」と進退について問われると、
「別に関わりがあることではありません」と続投の意向を示しました。
さらに同じ日の夕方には、物価高に対応する追加経済対策を
「今秋に策定する」と表明し、この先も政権を担う意欲をにじませていました。
また石破総理本人や側近らは、
「(総裁選の前倒し)賛成に回らないでほしい」と所属議員を説得するなど、先週末ギリギリまで局面打開を模索していたとみられます。
こうした石破総理の強気の背景にあったのが、支持率です。
ご覧の方法で行った8月のANNの世論調査では、
「石破内閣を支持する」と答えた人は、34.1%。
「支持しない」と答えた人は、46.9%で、
前の月と比べ、石破内閣の支持率が2.5ポイント伸びました。
また「石破総理は辞任すべきだと思いますか?」という質問に対しては、
「思う」と答えた人は36%だったのに対して、
「思わない」と答えた人が49%と、半数近くいました。
■石破総理 解散チラつかせ抵抗も?「威圧だ」困惑の声
「総裁選になるなら解散する」と漏らし、党内に広がる総裁選前倒し要求の動きをけん制。
「石破さんに近い議員が『総裁選前倒しになったら解散するぞ』と脅していた」といいます。
衆院解散の可能性について自民党内の見解です。
「『しかるべき時に決断』と総裁ではなく、内閣総理大臣として言った。これは解散の可能性をにおわせているんだなと思った。要は権力を使った威圧だ」
「総理にはもう解散風を吹かすしか手がなく、それだけ追い込まれているということだ」といった見方がされていました。
「いろんな考えがあったことは否定しない」としました。
「石破総理が『解散』に踏み切らなかったのは、解散に必要な大臣らの賛同が得られないと見込んだからではないか」ということです。
■総裁選いつ?“ポスト石破”は誰に?野党との連立争点に
石破総理の辞任表明を受け、自民党の総裁選は今後どうなっていくのか見ていきます。
総裁選の仕組みは、2通りあります。
まず総裁選の正規のやり方であるフルスペック型です。
これは、自民党の衆議員と参議院を合わせた国会議員295人の票と、議員票と同数の党員・党友票の合計で争われます。
全国の党員・党友の動向は議員票にも影響するため、票の比重が大きいということです。
次に簡易型です。
総裁が任期途中に辞任するなど『特に緊急を要するとき』に適用することができ、国会議員295人の票と、47都道府県連の代表それぞれが3票ずつ、計141票投票することで争います。
簡易型は、国会議員の票の比重が大きいということです。
想定される今後のスケジュールです。
9月7日、石破総理が辞任を表明したことを受け、今後新しい総裁を決める総裁選が実施されることになります。
10月中旬以降には臨時国会開催を見据える中、田崎さんによると、
簡易型で行う場合は、9月後半ごろに総裁選が行われることになるのではないかといいます。
一方、フルスペック型で行う場合は時間がかかるため、10月4日ごろに、総裁選が行われることになるのではないかということです。
「できるだけ党員の皆さんが、 直接ご参加頂ける形を模索することは大事なことだと思っている。 ただ政治が停滞をすることなく、しっかりと対応するということが、 政権を預かっている我々の責任であるというふうに思うので、できるだけその事を考えながら対応したい」との見解を示しました。
田崎さんに総裁選に立候補する可能性がある人物を伺いました。
田崎さんは5人の名前を挙げています。
まずは、前回、石破総理と決選投票を争った 高市早苗前経済安保担当大臣。
次に、前回の総裁選の1回目投票で3位だった、小泉進次郎農水大臣に、
前回の総裁選の1回目投票で4位だった、林芳正官房長官。
前回の総裁選の1回目投票で5位だった、小林鷹之元経済安保担当大臣。
そして、茂木敏充前幹事長です。
「ベテランも若手も本当にOne自民として、しっかりとまとまれるような、そういう体制を作るということが急務だと思っている。党所属の国会議員の1人として、自分自身に何ができるのかということについては、また仲間としっかりと相談をしていきたい」との見解を示しました。
総裁選への党内の反応です。
「次の総裁選は、どの野党と手をつなげるかという観点を見る。今までにない総裁選」
「次の総裁選は消去法で決めていく。野党との連立を見据え考えると、小泉大臣が筆頭格だろう」という声が上がっています。
総裁選への与党の反応です。
「保守中道路線の理念に合った方でなければ連立政権を組むわけにはいかない」と発言しています。
(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年9月8日放送分より)