石破総理の辞任表明は事実上、次のリーダーを決める総裁選の号砲が鳴ったことを意味します。8日に早くも名乗りを上げる人もいました。
茂木氏が“最速”出馬表明
「党の分裂を招いてはならない。そういった判断だと。そのことに対して敬意を表したい」
辞任表明を受け、こう語った小泉農水大臣。6日に菅元総理とともに、自ら進退を決断するよう説得したとみられますが。
(Q.会談は大臣から、総理から)
「菅元総理に私から電話をして、菅元総理から話されるのが一番なのではないかと。そういう中で『小泉さん一緒に行こう』という話を菅元総理からいただいて」
来月4日に投開票を行う方向で最終調整されている、自民党の総裁選挙。一番乗りで出馬を表明したのは、この人でした。
「こんな時だからこそ、これまで党や政府で様々な経験をさせていただいた、私の全てをこの国に捧げたい」
外務大臣や政調会長などを歴任し、第一次トランプ政権の時には関税交渉を担当。一連の政治とカネの問題を受けて解散するまで「鉄の結束」を自称する平成研=旧茂木派の会長を務めました。しかし、去年の総裁選で負けて“非主流派”に。先週、同じく政権と距離を取る麻生最高顧問と会談していました。
今も党内で唯一の派閥を率いる、麻生氏。
「昨日、石破総理大臣が辞められる、総裁を辞任するという話になるとは思ってなかったんですけど。どうせ言うなら、もう少し早く言ってくれれば良かったのにと思わないでもないんですけど」
“フルスペック”に期待と不安
早くも“号砲”が鳴った形の総裁選。動向が注視されるのは小泉氏と高市氏です。小泉氏は「次の自民党総裁」を問う世論調査で1位でした。石破総理も現職閣僚の出馬は「当然認められる」としましたが。
(Q.出馬の意思は)
「党の一致結束に対して何ができるのか考えて今後判断したい」
去年の総裁選。1回目の投票で議員票を最も多く獲得した、小泉氏。陣営にとっては、その形式がネックとなりそうです。
「フルスペック型でやれば高市さんのほうが有利だろう」
“フルスペック型”とは一体どのように行われるのか。立候補するには、まず国会議員の推薦人20人を集める必要があります。そして投開票へ。国会議員の295票、党員・党友の295票、合わせて590票を争います。1回目の投票でその過半数を超える候補者がいた場合、そのまま当選となりますが、誰も満たなかった場合は1位と2位で決選投票になります。
「去年も党員票集めでかなり苦労した。農政改革もマイナスに働くかもしれない」
前回、党員票では3番手にとどまった小泉氏。一方で、トップだったのが…。
「この選挙が終わったら、自民党に一本背骨をドンと入れ直す。それをしないと、本当にしないと、多くの皆さんに対して申し訳ない」
参院選の期間中、すでに総裁選への意欲とも取れる発言をしていた、高市氏です。ただ実は、その足下も盤石ではありません。前回、苦労して集めた推薦人20人。そのうち9人がその後の国政選挙で落選するなどして、国会議員の身分を失っています。
「党員票頼みなのでフルスペックになればもちろん有利だ。党員票をどれだけ積めるかどうかで勝ち筋が見える」
高市氏は現時点で総裁選についてコメントしていません。
8日夜、都内のホテルに集まったのは、林官房長官と支持する議員たち。関係者によると、林氏はすでに出馬の意向を固め、周囲に伝えているといいます。また、前回初めて出馬した小林鷹之氏にも若手議員から出馬を求める声が出ています。
少数与党“連立拡大”の行方
動き出した次期総裁選び。しかし、衆参ともに与党が過半数割れしている今、難しい国会運営を迫られます。連立の相手として取り沙汰される、維新。吉村代表は先月、小泉氏との蜜月ぶりをアピールしていましたが。
「公約実行にあたって、その趣旨に賛同してもらえる。これは与党・野党問わずしっかり協議をしたい。ただ、与党自身が方向性が定まっていないので、そこは見極めたい」
これまでも政策によって協力する姿勢を見せてきた、国民民主は。
「連立は選挙区の問題も出てくるので簡単ではないと思う。当面まずは政策ごとに協力できるかできないかを判断していくことになる」
総裁選 来月4日に投開票で調整
石破総理の後任を選ぶ総裁選は、去年9月に行われた前回の総裁選に出馬した5人を中心に展開していくとみられています。
前幹事長の茂木氏は8日午前10時ごろ、いち早く出馬を表明しました。「私の全てをこの国に捧げたい」と決意を示しています。
そして、林氏は、関係者によりますと、周囲に“総裁選へ出馬する意向”を伝えているということです。
小林氏は7日「仲間と相談をしていきたい」と話すと同時に「次の総裁選が党再生のラストチャンス」と、総裁選への強い思いを話しました。
注目は、前回の総裁選で多くの票を集めた高市氏、そして小泉氏がどう動いていくのか。小泉氏は8日、出馬について「今後判断したい」と話しています。
高市氏は沈黙を守っていますが、出馬に向けた準備を始めているとみられています。
総裁選の日程は、来月4日に投開票を行う方向で最終調整に入りました。国会議員に加えて、全国の党員・党友が投票を行う、いわゆる“フルスペック型”と呼ばれる形式にする方向で調整をしているということです。この場合は国会議員票と党員票、それぞれ295票の合わせて590票で争われます。このうち過半数を得た候補者が新たな総裁となりますが、1回目の投票で過半数を超えなかった場合は、1位と2位での決選投票となります。
自民党は9日、総務会と選挙管理委員会を開き、総裁選の実施方法などについて正式に決定する見通しです。
問われる「解党的出直し」
総裁選の行方について、山本志門政治部長に聞いていきます。
(Q.今回の総裁選は、自民党が崖っぷちからはい上がれるどうか、非常に大きな意味を持つ選挙だと思いますが、どうみていますか)
「これまでは顔を変えたら支持率上がる、選挙に勝てる、この繰り返しで乗り切ってきました。ただ今回はそういう状況ではありません。自民党の存在意義そのものが問われていると思います。石破総理は退任の会見で『解党的出直し』と言っていました。それをどれだけ説得力を持って各候補者が訴えられるかが問われると思います」
(Q.「解党的出直し」とは、どういうことだと思いますか)
「痛みを伴う改革を自分たちに向けてできるのか、ここが大きいと思います。『国民には負担を押し付けるのに、政治家は“政治とカネの問題”のけじめすらつけず、身を切る努力をしていない』といった有権者の不満は沸点に達していると思います。足元を見てみますと、物価高や低迷する経済など大きな問題に、政治がいまだきちんと答えを出せていません。背景には、関係の深い業界のしがらみに縛られて、自由な政策を進められない自民党の現実があります。自民党の関係者からは『一度、下野することになっても改革をやり切るべきだ』という声も聞こえてきます。『解党的出直し』と言うならば、そのぐらいの覚悟を持つべきだと思いますし、中長期的にはそれが信頼の回復、党の再生につながっていくと思います」
(Q.少数与党として迎える総裁選は初めて。これはどんな影響を与えますか)
「少数与党が前提の総裁選ですから、そもそも新総裁が誰になろうと、必ず総理大臣になれる保証はありません。つまり、野党とどう協力していくか。少数与党としての振る舞いを臨時国会が始まる前に示さないと、政権運営が立ち行かなくなる可能性が出てきます。他党との連携ができるかどうかが、ポスト石破の焦点になります」
(Q.他党との連携という観点で、特徴があるのは誰ですか)
「小泉氏と高市氏です。現実性が高そうなのが維新との協力だと思います。その点で、小泉氏は、後ろ盾に維新との関係が近い菅元総理がいるので、連携がスムーズにできるという期待感が党内にあります。高市氏はまだはっきりしていませんが、積極財政という姿勢でいえば国民民主と近いので、協力できる余地があります。ただ、公明党からは『保守中道路線でなければ連立は組めない』と高市氏をけん制するような発言も出ています」
(Q.国民の信頼を取り戻すため新総裁に求められるものとは)
「国民には『政治が何かを変えてくれる』という期待感よりも『生活が良くなっていくイメージが全然見えない』という失望感が大きいと思います。参院選以降、政治空白は否めないと思います。次の臨時国会では、政治不信を払しょくするために、野党との政争に明け暮れるのではなく、建設的な議論をして、きちんと結果を出していく国会にしてほしいと思います」
「自民党の総裁選が行われるたびに、私たちは各候補が抱く理想の政策や、政治の姿を聞いてきました。しかし現実には、その倍以上、恐らく実現不可能な大言壮語や空約束のような話も聞かされてきました。そして、今や自民党にはもうそんな余裕はないと思います。失敗の本質を理解して大胆な党改革を行う突破力。そして、野党とも協力しながら着実に政策を前に進める実現力。いずれも、次の自民党総裁にとっては必須条件ではないかと思います」