石破総理が辞任し、総裁選が行われるが、“ポスト石破”は誰になるのか? 有力視される5人の候補についてテレビ朝日政治部の大石真依子記者に聞いた。
【映像】石破総理の辞任会見に“異例の人物”が同席(実際の映像)
━━いち早く出馬の意欲を表明した茂木敏充前幹事長をどう見るか?
「まずスピード感に非常に驚いた。また会見での『私の全てをこの国に捧げたい』という言葉からは強い覚悟を感じた。来月には茂木氏も70歳を迎えるので、自分でも今回がラストチャンスと考えているのでは、と想像する」
━━茂木前幹事長はどんな人物なのか?
「一言では言い表しづらいが、ずば抜けた実務能力の高さには定評がある。岸田政権で党の幹事長を務め、それ以外にもこれまで外務大臣や経産大臣といった主要な大臣ポストも経験しているので“経験値”は林芳正官房長官と並び、5人の中でもトップクラスだろう。一方で、弱みは知名度の低さで、世論調査を見ても“次の総理”として名前が挙がってこないため党員票の獲得はあまり見込めない。国会議員票に関しても、旧茂木派に所属してた中堅と若手の衆院議員は茂木氏を支持する見通しだが、それ以外にどこまで広げていけるかは不透明で、ここから茂木陣営が頑張っていくだろう。ちなみに、前回の総裁選では9人中6位だった」
━━茂木氏は怒りの沸点が低いとされ、官僚から“瞬間湯沸かし器”と呼ばれることもあると聞くが、人柄・能力などはどうなのか?
「最近はYouTubeやTikTokなどのSNSでの発信にかなり力を入れており、近寄り難いというイメージの払拭に努めている印象がある。また、茂木氏には『映像記憶能力』があると言われている。私がある会議の取材した時、記者もたくさんいたのだが会議後に『現場にいたね』と声をかけられて非常に驚いた。距離も離れていたし、集団で群がっている記者のうちの1人でしかなかったが“映像”として記憶され、その中に私も入っていたようだ。さらにトランプ大統領から『タフ・ネゴシエーター』と呼ばれるなど、交渉に長けている。実務能力の高さをどう総裁選期間中に国民・党員にアピールできるかが腕の見せどころだろう」
━━一番手で出馬表明した狙いは?
「おそらく、埋没を避けるためだろう。茂木氏の側近議員は、前回の総裁選で目立てなかったという反省を経て今回は最初に行ったのでは、と茂木氏の心中を分析していた」
誰が最有力か?

━━高市氏の強みと課題は?
「強みは知名度と“保守のカラー”だ。自民党を支持してきた岩盤保守層が自民党から離れてしまったという指摘がある中で、力強い国家観を持つ高市氏に党内から期待の声があるのは事実だ。一方、弱みは国会議員の仲間の少なさだ。党内にも強烈な高市氏の支持者がいる一方で、仲間が多いかといえばそうとは言えない。前回の総裁選で自身を支持した旧安倍派の議員が去年の衆院選で多く落選してしまった中で、今回どれだけ議員票を積み増せるのかが課題だ。また、これまで政調会長や総務大臣など様々なポストを経験してきたが『なんでも自分でやりたがる』という。周りを巻き込むのがすごく苦手で、自分で仕事を抱え込んでしまうという声もあり、総理になった時に内外の課題がたくさんある中で、果たして総理の職が務まるのかと心配する声は周りからよく聞かれる」
━━小泉氏はどうか?
「知名度と発信力は誰にも負けないと思う。党内には“いつかの総理候補”という期待感があり、小泉氏を慕う若手・中堅議員は多い。議員票と党員票、どちらもある程度期待できる。急遽農水大臣に就任した際にも、次々と政策を打ち出した姿には党内から評価の声が上がっていた。弱みは『本当に総理を任せて大丈夫なのか』と思わせてしまうような発言が時々出てしまうこと。環境大臣時代にも“セクシー発言”などもあったが、去年の総裁選期間中の9人での討論でも他の議員に比べると発言の内容が甘かったり説得力が足りないと指摘される場面があった印象だ。またこれまでの経歴を見ても財務や外務、経産といった大臣の主要ポストを務めたことがなく党三役の経験もないため、実務能力が未知数という部分もある。『若さ』については小林鷹之元経済安保大臣にも共通していると思うが、中堅・若手に『古い自民党を1回立て直して生まれ変わらせたい』という思いがある中で、そのために党の顔を変えることは一つの手段として分かりやすくはある。そういった観点から言うと、小泉氏や小林氏は中堅・若手から支持を得やすい」
━━官房長官を務めている林氏は?
「8日午前の記者会見では『総裁選についてのコメントは差し控える』とかわしたが、7日、旧岸田派の幹部に出馬の意向を伝えたという。強みは『実務能力の高さ』で、ある官邸幹部は『これまで一緒に仕事をしてきた中で一番頭が切れる政治家は間違いなく林さんだ』と話していた。また、石破政権でナンバー2の官房長官を務めてきたので、石破総理の立場からすると自分が進めてきた政策を引き継いで実行してくれる期待感が一番持てると思う。議員票に関しては、旧岸田派がある程度固まって林氏を支援するという見通し。しかも林陣営はすでに何度か会合を内々に開いて、作戦会議を行ったりもしているので、出馬表明こそまだだが着々と準備はしているようだ」
━━前回石破総理に入った票は林氏に流れるのか?
「石破総理に入れた党員は“リベラル的”なところを期待しているのであれば、おそらく高市氏に乗っかることはなく、小泉氏や林氏に乗る気がする。だから、党内では『小泉さんと林さんが出ると“票が割れる”から、どちらかを勝たせたいのであればどちらかに絞るべきではないか』という声もある。だから考えられるのは、1回目の投票で誰も過半数を取れなかった時に、決選投票で小泉氏か林氏が残った時に『もう片方の陣営はそっちに票を乗せよう』といったところまで含めておそらく各陣営間で交渉が行われていると想像している」
━━小林氏はどうか?
「若さと、前回の総裁選で初めて出馬をしたことで知名度がある程度上がったことが武器だが、弱みとして、国会議員としての経験の浅さがあり、小泉氏以上にウィークポイントとしてあるだろう。党役員の経験や主要ポストの大臣経験などがないので、総理大臣という立場になると、国会議員プラス大臣を束ねて国の舵取りをやる立場なので、その仕事が勤まるのかというと、若干心許ないという指摘は党内からもある」
━━誰が最有力か?
「前回の総裁選で、高市氏は推薦人集めから苦戦し“泡沫候補”だと周囲から言われ続けたが蓋を開けたら決選投票に残った。だから本当に今の段階ではわからない。もちろん高市氏と小泉氏が主軸だと思う今後は討論会などの機会も増えるので、その論戦を見て判断する党員もいるだろう。そして、国会運営を進めていくためには野党との協力が大きな課題になる。“ポスト石破”は野党との協力を含めた今後の政権運営構想を語ることが求められると想像する」 (ABEMA/ニュース企画)