10日、自民党の茂木前幹事長が総裁選への出馬を表明。さらに11日、小林鷹之氏も出馬の意向を表明した。
【映像】仲が良すぎる? 笑顔で万博会場を歩く小泉大臣と吉村府知事
少数与党の自民党にとって、野党との連立も焦点になってくるが、野党各党はどのようなスタンスなのか? テレビ朝日政治部の笠井美来記者に聞いた。
━━自公政権が連立を組む候補として名前が挙がっているのはどの党か?
「10日、茂木前幹事長は出馬会見で連立を組む可能性がある党として日本維新の会と国民民主党の名前を挙げたが、今のところ有力視されているのは日本維新の会だ。維新は教育の無償化や社会保険料の引き下げの実現で与党と合意して2025年度予算案に賛成したという経緯がある。また、参院選で伸び悩んだ結果を受けて、吉村代表以外の執行部の顔ぶれが変わった。自民党と太いパイプを持つ遠藤国対委員長が執行部に再登板したことは『自公維連立の布石なのでは』という見方が与野党内で広がっている。藤田共同代表はかねてから石破政権との連立は否定していた。今後は『自民党がどのような意思を持って総裁選を行い、新しい総裁が誕生するのかしっかりと見極めたい』などと話している」
━━維新の党内からはどのような声があがっているか?
「大阪の府議を中心にした地方議員の間では今、維新が柱として掲げている統治機構改革の一環として、首都である東京が大災害などで機能不全になった時に別の拠点に移すという首都機能を分散させる『副首都構想』を実現するために連立入りすべきではないかと求める動きもある。ただ、特に大阪以外の選出議員からは反対の声も上がっていて、ある所属議員は『もし副首都構想の実現を掲げて自公に連立入りなんてすれば、大阪以外で選挙で勝てなくなってしまって党が潰れてしまう』などと不満を漏らしていた。そして、8日には維新の議員3人が離党届を提出する動きもあった。3人の離党の理由は三者三様だが、そのうちの1人である斉木衆院議員は『副首都構想は連立のバーターではない。あくまで自民党に代わる政治改革が必要だ』と批判して、副首都構想だけを条件に挙げて、安易に連立するのは良くないと反対した」
━━維新が連携する条件として、どのようなものが考えられるか?
「今、自公は衆参ともに少数与党で自民党内では連立の相手として維新を推す声が強く、維新も期待の声があることは重々理解している。そういった“ラブコール”を逆手にとって、自分たちが実現したい主な政策である『副首都構想』『社会保険料引き下げ』『教育無償化』を飲ませる戦略を描いている。藤田共同代表は『単一の政策の取引での連立はあまりにも軽すぎる』と慎重な姿勢だ。これまでの過去の歴史を振り返ってみると“自民党に取り込まれた政党”は数年以内に全てほぼなくなっていると話をしていて、連立入りすることで、党の存続に一定の影響を及ぼすことへの危機感も持っている。藤田共同代表はインターネット番組に出演した際に『例えば10個くらいの政策課題をテーブルに並べて、合意できるかどうかと考えるのはありだと思う』という発言もしている」
小泉大臣は維新と親和性が高い?

━━維新は次の自民党総裁候補の中で「この人だったらいい」というような希望はあるのか?
「特に小泉農水大臣は維新と親和性が高いのでは、と言われている。8月、小泉大臣が大阪関西万博に視察に行った際、吉村代表が大阪府知事として同行して、その最後に記者団の前で互いに“改革派の政治家”だというように褒め合うなど、距離の近さがうかがえた。ただ、維新のある幹部は『あまり小泉大臣と表で仲良くしない方がいいのではないか』と藤田共同代表に忠告しているようだ。特定の人と蜜月をアピールすると、それ以外の人との距離感が際立ってしまう。だからあえて維新は中立の立場を貫く姿勢を示している。そして維新は林官房長官とのパイプも持っている。9日には林官房長官と維新の馬場前代表が会談をした。このように、維新には、今総裁候補として挙がっている人たちと話ができる関係であるという強みがある」
国民民主にとって相性がいい“ポスト石破”は誰か?

━━他に自民党が連立を考えている政党はあるか?
「連立相手の候補として国民民主党の名前も挙がっている。先月ANNが行った世論調査では、『もし自公政権に野党を加えるなら』という問いかけに対して、およそ14%が国民民主党と答えてトップという結果になった。自民党内からも期待する声は上がっている。その理由は、国民民主は7月の参議院選挙でも議席を大幅に増やすなど政党支持率が依然として高いからだ。先月のANNの調査でも政党支持率9.3%と、野党の中ではトップだった。その上国民民主は支持母体である連合の組織票を持っている」
━━国民民主の側から見て自民党との連立の可能性はあるのか?
「国民民主はあくまでも『政策実現が第一』だと一貫して主張している。103万円の壁の見直しやガソリン減税などが実現できるなら、新総裁が誰であろうと相手にはこだわらない。逆に言うと自分たちが掲げている政策を実現しない限り連携はできないというスタンスだ。また、新しい政権が発足してからすぐに解散総選挙になることも念頭に置いており、その際に自民党との選挙区調整が難しいということから、国民民主は連立入りについては当面は現実的ではないと否定している。国民民主は政策を実現するための協議を進めつつ、今後の自民党内政局も慎重に見定めたい考えだ。ただ、最近ある国民民主の幹部が『誰が新しい自民党の総裁になっても自民党は終わるのではないか』と漏らすなど、自民党を少し突き放しているようにも見える。一方で、仮に他の野党が国民民主より先に連立を組むような動きがあるとしたら、自分たちが掲げる政策が通りづらくなるということも懸念しており他の野党の連立入りを牽制する言動も目立っている。ある国民民主の中堅議員は『ライバルは維新と参政党だ』と漏らしていて、まずは野党の中で存在感を発揮して、仮に連立入りの可能性が出てきた場合に、自分たちを一番高く売れるポジションに置きたいという思惑が透けて見える」
━━国民民主にとって相性がいい“ポスト石破”は誰か?
「高市氏と茂木氏などは国民民主と財政政策の考え方が比較的似ていると見えている。ただ、この手の話は具体的に名前を挙げた途端に様々な憶測を呼んでしまうため、国民民主の側から言及することはあり得ないと思う。今の衆参少数与党の状況で野党の協力が必要なのは自民党の方なので、維新も国民民主も自分たちを安売りせず、価値を最大限高めた上で、各党の政策を実現させたいという方針だろう」
参政党のスタンスは?

━━野党第一党である立憲民主党はどう向き合っていくのか?
「立憲は新しい総裁のもとで自民党と大連立を組むということには慎重だ。ある執行部は『2大政党制の時代は終わった』として、与野党で政策の一致点を見出していきたいというスタンスだ。ある幹部は協議を進める上では林官房長官がやりやすいと個人名を出して話していて、自民党内でもリベラル色の強いトップを期待するという声が上がっている。また、11日の午後に安住予算委員長が幹事長に就くことが発表された。安住氏は国対委員長を長く務めたことで国会運営に精通している。国対運営を担ってきたという経験から、与野党に幅広い人脈を持っているので、その手腕を期待する声が上がっている」
━━参政党はどのようなスタンスか?
「参政党の神谷代表は、今の自公政権との連立には否定的な立場だ。ただ、外国人の受け入れ問題などを念頭に政策では自民党と是々非々で向き合っていきたいとしている。参政党は、7月の参院選で議席が急増したことで、秘書や党職員の確保など事務的な準備が今追いついておらず今は政策云々というより、党の体制を立ち上げることを優先させたい考えだろう。そんな状況だが、8月末に神谷代表が自民党の麻生最高顧問と国会で会っていたという興味深いことも起きている。とはいえ、その際は連立の話ではなく、党運営や党の人事について相談をしていたという」
━━どの党も慎重に探り合っている、という状況なのか?
「そういった印象はぬぐえないと思う。野党からすると、今自民党の支持率が低いこの状況で政権に入るメリットはない。わざわざ連立入りしなくても、政策ごとに部分的に連携することもできる。野党は参院選後から続いている自民党内政局による政治空白の長期化を批判しているが、衆参少数与党の状況に手を打てていないのも事実だ。ある立憲の幹部は『多党化が進んで多数派工作が困難になった。そんな状況で野党をまとめようとすると、もしまとめられなかった時に批判される』と述べていて、政策の一致点を見出しながら、丁寧に合意形成を図っていきたいと考えている。衆参で少数与党にもかかわらず、政治を主導する積極的な動きは野党もなく、各党受け身の状態こそ、今政権交代が起きていない理由の一つだろう」 (ニュース企画/ABEMA)