1000万人以上が利用している『ふるさと納税』。
仲介サイトを利用した場合、“返礼品とは別”で行われていたポイントの付与が今月いっぱいで禁止になるため、駆け込み需要がピークを迎えています。
“駆け込まれる側”もフル回転です。
北海道・白糠町の水産加工場は、朝から大忙しでした。
ふるさと納税で、件数・額ともにダントツの北海道。そのなかでも、白糠町の納税額は、去年トップです。
「9月の段階で、まだ10日くらいですけど、昨年の9月実績を超えましたね。このままいくと、昨年の9月の3〜4倍の可能性があるのかなと」
来月から廃止になる、仲介サイトのポイント付与とはどのようなものがあるのでしょうか。
例えば、『ふるなび』は、抽選で寄付額の100%、『さとふる』も、条件や上限はあるものの、寄付額の最大1000%ものポイントを付与。つまり、寄付額の10倍のポイントが返ってくるキャンペーンを打っています。
これにNOを突き付けたのが、総務省でした。
「公金を使用した公的な税制上の仕組みであり、いわゆるネット通販であってはならない」
総務省の決定に街の声です。
「色々と物価も上がって、ポイント制のものも(還元率が)悪く、良くなるものはない。楽しみは減るかな」
「買い物するわけではないので納税者からすれば、より得をする方が良く見えますけど、本来あるべき姿を考えると、無くても仕方ないかな。あった方がうれしいけど」
そもそもふるさと納税は、納税者が、能動的に地方創生へ参加できるところに大きな意義があります。
かつて、炭鉱の町として栄えた白糠も、いまや、人口7000人に満たないほどになっています。資源不足で漁業の経営安定化も喫緊の課題です。
そんな町にとって、この税収は、公共施設の建設や子育て支援などに大きく貢献しています。
「やっぱり医療費が18歳まで無料。町でそういうのがあるので、すごくありがたい」
2000円を引いた額が、住民税や所得税から控除されるふるさと納税。その分は、地方などの寄付先に行くため、東京都の税金の流出は年々増加。今年も過去最悪を更新しています。
そこで、税収減に苦しんでいた都心部の自治体に動きが出ています。
千代田区では、去年10月から、返礼品を開始しました。
「都心の魅力あふれる飲食店やホテルがある。こうしたところで、飲食や宿泊に使えるデジタル商品券をご用意しようと」
ふるさと納税は“モノ”に限りません。寄付先の自治体を実際に訪れ“体験する”返礼品も制度上、認められています。千代田区は、こうした “コト消費”にも使える電子商品券を返礼品に加えました。
「この半年間に(嘉門だけで)19件ほど、お客さまがいらしていただいて、帝国ホテルを利用したことがないお客さまもご利用いただけまして、こういった機会にお楽しみいただけている」
千代田区によりますと、今年度の流失額は21.8億円。対する寄付額は16億円を見込んでいます。
また、港区では、来月から、駅チカの水族館を“閉館後に貸し切り入場できる権”の返礼品を計画中です。
ふるさと納税をめぐる制度は、年々変化しています。
「自由競争といえば自由競争。自治体の努力もあっての制度。(政府が)どこまで介入するか難しいけど、あまり制限されてしまうのも良くない」
◆ふるさと納税の仕組みです。
好きな自治体に寄付した額とほぼ同額が、自分の住む自治体に納めるべき額から控除されます。つまり、自分が住む自治体にとっては税収が減ることになります。
今年度の課税における住民税の控除額です。つまり“ふるさと納税によってどれだけ税収が流出しているか“です。
1位の横浜市は、約343億円の税収減、2位の名古屋市は約198億円など、都市部の自治体が数多く並びます。
都市部では“体験型”の返礼品などを揃えています。
いくつか事例を紹介します。
流出額約343億円の横浜市では、相鉄本線の駅での“駅長のお仕事体験ツアー”を、今月、発表しました。窓口での改札業務や構内放送、手旗による合図などを体験できます。寄付金額は4万円で、募集は8人。小学生以上が対象です。
流出額約154億円の川崎市。川崎市といえば工業地帯の夜景が有名ですが、その夜景を見ながら、ゆっくりフレンチとお酒を堪能できる“2階建てバスツアーの貸し切りプラン”を打ち出しています。寄付金額は100万円です。
流出額約123億円の世田谷区では、11月に開催される『世田谷246ハーフマラソン』の優先出走枠を用意しています。2000人しか走ることができない人気のイベント。寄付金額は3万5000円ですが、参加料を別途支払う必要があります。
都心のある自治体の担当者は、「これ以上、税収が減り続けるのは看過できない。ふるさと納税の仕組みは、都市部はどうしても不利な面がある。知恵を絞って工夫を凝らして、活路を見出すべきと考えている。都市型のふるさと納税の可能性に挑戦してきたい」としています。