高市前経済安保担当大臣が、自民党総裁選への立候補を正式に表明し、自身の政策も発表しました。
「日本と日本人を心底愛する者として、日本と日本人の底力を、本当に信じてやまない者として、再び、自民党総裁選挙に立候補します。ジャパン・イズ・バック。こう、もう一度、日本は、声高らかに言わなくてはなりません。明るくなければ未来じゃない。安全でなければ日本じゃない。日本を、もう一度、世界のてっぺんへ。高い志と、燃えるような思いを胸に、この場に立っています。だからこそ、いま、日本の国力、国の力を強くしなければなりません」
そして、去年も主張した保守的な政策を打ち出します。
「自由民主党の総裁を目指す者として、申し上げなくてはならない。第1に、時代の要請に応えられる日本国憲法の改正をすること。第2に、男系の皇統を守るため、皇室典範を改正すること」
また、不法に滞在する外国人への対策や、海外からの土地取得を規制する司令塔機能の強化も示しました。そして、より力を込めたのは、経済政策です。
「いま、最も急がなくてはならないのは、生活の安全保障。物価高から暮らしと職場を守ること」
選挙前の5月に唱えた食料品の消費税をゼロにするという主張は封印しました。
「これを見直すことになると、1年ぐらいはかかってしまうと。いまの物価対策に即効性はないと思いました」
「ガソリンと軽油の暫定税率を廃止していく。人手不足の中でも、就労時間調整の一因となる年収の壁を引き上げる」
ガソリンの暫定税率は、石破政権で7月、年内廃止を野党4党と合意した懸案です。また、『年収の壁』は、去年、自民・公明・国民民主の3党が、178万円への引き上げを目指すことで合意した政策です。
それだけではありません。
「給与収入に応じて手取りが増えるようにする『給付つき税額控除』の制度設計を進める」
それぞれの所得に応じて、減税や現金給付を行う措置ですが、7月の参院選でこれを訴えていたのは、立憲や国民民主、維新といった野党です。
与党は19日、立憲民主党の野田代表と会談し、『給付つき税額控除』の制度設計を、来週、始めると合意したばかり。実は、これは、高市氏の持論でもあります。
野党と馴染みそうな主張は、経済政策のほかにもみられます。
首都機能のバックアップ。これは、維新が唱える『副首都構想』と重なります。上京していた日本維新の会の吉村代表は、こんなことを言っています。
「副首都の方向性に反対だという自民党の総裁の方と組むことは絶対にありません。自民党の総裁候補に、維新が考える副首都の大きな方向性について、賛成なのか、反対なのか問うていきたいと思います」
少数与党のいま、総裁の座に就いても、野党との連携は欠かせません。自公の連立に、新たな仲間を加える可能性にも言及しました。
「基本政策が合致する野党と、できれば連立政権を組む。そこまで考えてやっていきたい」
さらには、去年、票を2分した末に敗れた石破総理の悲願にも歩み寄りを見せます。
「防災庁でございますが、去年の総裁選挙の時点では、私は反対の立場でした。ただし、石破総理が大変な努力をされて、つくることで動き出しておりますので、これを否定するつもりはございません」
従来の主張から、幅を広げた政策発表は、1時間半に及びました。
これで、4人が政策発表を済ませたことになります。
残る小泉農林水産大臣は、20日に記者会見を開く予定です。
政策には、ガソリン暫定税率の速やかな廃止や、2030年度までに平均賃金100万円アップを目指すことなどを掲げます。
総裁選は、22日、告示されます。
◆高市氏が主要政策に掲げた『給付つき税額控除』とは、どのようなものなのでしょうか。
『給付つき税額控除』とは、物価高対策の1つで、特に所得の低い人を対象にした制度です。
具体例を挙げてみていきます。
例えば、10万円の『給付つき税額控除』を実施した場合。
所得税を15万円を納めている人の場合、10万円が減税され、5万円を納税します。
所得税を5万円納めている人の場合、5万円を納税する必要はなく、さらに5万円の現金が給付されます。
所得税を納めていない人の場合、10万円の現金が給付されます。
低所得者にとっては、現金支給の恩恵がストレートに感じられる制度ということです。
アメリカやドイツなどで導入されていて、低所得者や子育て世帯への支援策として効果があるとされています。
7月の参院選では、立憲民主党など野党が公約に掲げていました。そして、19日、自民・公明・立憲の党首が会談を行い、『給付つき税額控除』の制度設計を議論するための協議体を立ち上げることで合意しました。これについて、石破総理は「安定財源確保策なども含めた制度設計上の課題を整理するため、速やかに協議を始めたい」と、立憲・野田代表は「どなたが新しい総裁になっても、協議の継続を確約してほしい」 としています。
高市氏は、参院選の前に食料品の消費税をゼロにするとしていましたが、今回はそれを封印して『給付つき税額控除』の導入を検討するとしています。今回の総裁選で、この政策を訴えた狙いは、どこにあるのでしょうか。
◆政治部・自民党担当の澤井尚子記者に聞きました。
澤井記者は「少数与党のいま、野党との協力は不可欠。『給付つき税額控除』のほかに、『年収の壁引上げ』『首都機能のバックアップ体制』などを掲げて、立憲・国民・維新との連携を意識している。“総理になれば、どの党ともうまくやれる”というアピールでは。
さらに、党内に対しても、リベラルな立憲の主張に寄り添う姿勢を見せることで保守色をやわらげ、総裁選での支持拡大を狙っている」といいます。