9月22日に告示、10月4日に投開票される自民党総裁選。ニュース番組『ABEMAヒルズ』では、コメンテーターで慶應義塾大学教授・教育経済学者の中室牧子氏が注目する政策について語った。
中室氏は注目する政策に、高市早苗氏の「給付付き税額控除」をあげた。
「あまり聞き慣れない言葉かもしれないので説明すると、参院選にも出てきた給付というのは、1世帯あたり2万円と言われていた。そのあと出てきたのは、いわゆる所得制限のような感じで、一定以上の所得がある人はもらえないけれど、それ以下の人はもらえますという形やいろいろな議論がある。例えば、給付の1つの形である生活保護を考えると、これも同じことだが、ある一定の所得を下回っている人は、生活保護費をもらえる形になっている。こういう給付の仕組み、実は貧困の罠に陥りやすいと言われている」
「貧困の罠とは、給付をもらえるギリギリのところまでしか働かないということ。1円でも超えてしまうともらえないので、働き控えをしてしまう。でも人手不足なので、働き控えを起こされてしまうと困る。なので、働くことがインセンティブになる。でも、低所得の人たちには充実した給付を実現したいというふうに考えるので、諸外国で行われている給付付き税額控除は、極めて合理的な仕組み」
ただ、物価高対策としてはふさわしくないと中室氏は言う。
「高市氏がどういう目的でこれを出したのかは承知していないが、現下の物価高対策だとすると、ふさわしくない。なぜかというと、今の日本でやろうと思うと、かなり大掛かりな工事が必要になる。所得税は国税庁の所管なので国が取っている。でも、所得がゼロの人は一体どういう状況になっているか国は全然把握していない。地方自治体が住民税を取っている。この人たちは住民税非課税世帯といって、この人たちも含めて地方自治体が管理している。なので、人々の非常に細かな所得は、国ではなくて地方自治体が承知しているということ。でも、この地方自治体が把握している納税者の情報を勝手に国とやりとりすることはできない。このためには法改正も必要だし、情報のやりとりをするためのしかるべきシステム投資も必要。私もいろいろ専門家に聞くが、2年くらいはかかるのではという人もいる。制度を整えるために2年かかるとすると、現下の物価高対策としては全く適切ではないし、生活保護費や児童扶養手当など、様々な給付とどのように整合性をとっていくのかということも考えないといけないので、すぐにやれる政策ではないと思う」
(『ABEMAヒルズ』より)