自民党の総裁選が、22日、きょう告示され、5人が立候補を届け出ました。
東京・新橋のSL広場に熱心な支援者を集め、第一声を上げた茂木敏充前幹事長。
「お力をお貸しください」
「初の女性総理」を目指す高市早苗前経済安保担当大臣の出陣式。最前列を女性で固めました。推薦人をみれば、前回13人いた、いわゆる“裏金議員”がゼロになりました。
「高市早苗、勝つぞ」
閣僚の更迭など緊急時に、後任として、度々、起用されてきた林芳正官房長官。
「いつまでも緊急登板ではありません。林芳正の勝利目指して、頑張ろう」
国会近くの神社で必勝祈願した小林鷹之元経済安保担当大臣。陣営の核となるのは、当選5回の同期議員です。
早くも感極まったような表情を見せていたのは小泉進次郎農林水産大臣です。眼前には、多くの国会議員。出陣式の出席者は、ほかの陣営を大きく上回る92人に上りました。去年の総裁選で獲得した国会議員票は75票。今回、それを上回ることは固そうです。
そして、午後、所見発表演説会が行われました。
最初に演説に立ったのは小林氏。石破政権では無役を貫き、重要閣僚の経験はありません。
「閣僚経験が少ないとのご指摘もいただきます。確かに少ない。でも、経験したポストの数だけで国を力強くけん引できるかといえば、私はそうじゃないと思います。大事なことは、ぶれないこと」
党改革については、こう訴えました。
「解党的出直しにあたって、私は、2点、申し上げます。1つは原点回帰です。みんなでやろうぜ。そして、もう1つは世代交代です」
5人の中で最年長の茂木氏も、若返りに言及しました。
「若手や女性を思い切って登用していきます。閣僚の平均年齢は、10歳、若返らせます。3割は女性を登用します」
林氏は、冒頭、いまの心境として、討幕運動の中心的な役割を果たした幕末の志士の言葉を引用しました。
「実こそあれば今日今宵一夜明ければみんな来る。高杉晋作が、まさにいまから挙兵というときに残した言葉です」
ただし、掲げるのは、石破路線の継承です。
異彩を放っていたのが、高市氏です。
「高市早苗、奈良の女です。大和の国で育ちました」
そう言うと、万葉集の和歌を高らかに詠みあげました。
『高円の秋野の上の朝霧に妻呼ぶ雄鹿出で立つらむか』。連れ合いの愛する雌鹿を読んで雄鹿がすっと立った。その光景が目に浮かんでくるようじゃないですか。そんな奈良のシカを足で蹴り上げる、とんでもない人がいます。外国から観光に来て、日本人が大切にしているものを、わざと痛めつけようとする人がいるんだとすれば、何かが行き過ぎている。そう思いませんか」
高市氏は、自民党から離れた層を取り戻すと述べていました。外国人政策を、そのための最重要課題と捉えているようです。
最後に演説に立った小泉氏。
「我々に課されている使命、それは自民党を立て直すこと。そして、ここにいる全員で、みんなで立て直すことだ。初当選の直後、地元横須賀の選挙事務所で『解党的出直しが必要だ』と述べたことを、いまでもはっきりと覚えています。あれから16年、再び、解党的出直しが求められています」
『解党的出直し』。それは、自民党が30年以上唱えてきた言葉。今回は、何が違うのでしょうか。
「小泉さんの初当選のときも、そう言ってたと。そのときとの状況の違いについては、あまりはっきりおっしゃらなかった」
「お行儀よく、いろんなお話してるから、逆につまらないなと率直に言って思う」
「大きな枠組み等へのご提案は、真摯に耳を傾けて、国民のために考えることが本筋だ」
「誰がなるかよりは、何をスピーディーに成し遂げるか。年内に成し遂げられるのか、しっかり見定めたい」
◆今回の総裁選で、自民党が掲げたテーマは『# 変われ自民党』。各候補者の演説で、その変化は見られたのでしょうか。政治部自民党担当の澤井尚子記者に聞きます。
(Q.各候補の演説後、党内はどんな雰囲気でしたか)
「総裁選特有の緊張感がある一方、今回はどこか冷めた空気が漂っている印象を受けました。といいますのも、“解党的出直し”という反省の色を持って臨むべき総裁選が『国民に“お祭りムード”に映ることを避けたい』議員心理があるようです。各陣営、踏み込んだ政策を避けていて、態度を決めていない、総裁選を遠巻きに見ている議員からは『誰の政策も変わり映えしない。国民世論には通用しないのではないか』と冷ややかな声も聞かれました。ただ、そのなかでも各候補、“独自性を打ち出したい”という心理があるようで、高市氏が和歌を紹介するなど、個性を強調している印象でした」
(Q.現時点の情勢と今後はどうでしょうか)
「取材で、議員票が3桁に迫りつつある小泉氏が一歩リードで、党員票で強い高市氏が、それに続く状況です。ただ、議員票、党員票ともに、不確定な要素も多く、それ以外の陣営は決選投票を見据え、まずは2位を狙う戦略です。特に、林氏は、石破路線を引き継ぐことを強くアピールしていて、去年の“石破票”の取り込みを狙っています。その石破総理ですが、23日、国連総会に出席するため、アメリカに出発するのを前に、午後8時半ごろまで、都内のホテルで、自らに近い議員らと会合を行っていました。石破総理の今後の動きも注目されます」