政治

ABEMA NEWS

2025年9月26日 07:01

「あいつは政治家じゃねぇよ」菅氏vs岸田氏の戦い…生殺与奪の権利を握る幹事長 総裁選“命がけ”の歴史

「あいつは政治家じゃねぇよ」菅氏vs岸田氏の戦い…生殺与奪の権利を握る幹事長 総裁選“命がけ”の歴史
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 過去の総裁選から振り返る“命がけ”の歴史。ABEMA的ニュースショーでは、ジャーナリストたちの独自取材をもとに考察した。

【映像】岸田氏が出馬会見で掲げた“岸田ノート”(実際の映像)

 2021年8月、現職の総理総裁である菅義偉氏に総裁選に挑戦状をたたきつけた男がその前年に総裁選で菅氏に惨敗した、岸田文雄氏だ。

 政敵を完全に打ちのめした菅氏は、のちに総理になって記者に「岸田はもう終わりだ」と語った。その理由を問われると「だってあいつは戦わないじゃん。安倍(晋三)さんも橋下(徹)も戦う時は徹底してやるよ、それが政治だろう。俺から見たらあいつは政治家じゃねえよ」と応じた。

 しかし1年後、攻守が逆転。菅政権はコロナの感染者数が下がらず、支持率が低迷。さらに総裁・衆院議員の任期が満了するなか、菅氏から「戦わない」「政治家とは言えない」とまで言われた岸田氏が挑戦状をたたきつけた。

 現職の総理総裁に同じ政党の仲間が挑むことは、負ければ「一族郎党」が干されることを意味する。岸田氏にとってはまさに政治生命を賭けた戦いだった。

 総裁選出馬会見で、岸田氏は勝負に出た。「幹事長の任期は1期1年(連続)3期までとする」と絶大な権力を誇っていた、二階俊博幹事長(当時)に矢を放った。

 当時二階氏は田中角栄をも超えて歴代最長となる5年以上、幹事長の座にいた。自民党において、党の金庫と選挙の公認権、つまり「カネ」と「人事」という生殺与奪を握る幹事長の権力は絶大だ。岸田氏は、菅・二階氏という権力の中枢にくさびを打ち、くすぶっていた不満という火元に見事に発火させた。

 総裁選出馬会見の数日前、都内のホテルに岸田派の主要メンバーが集まった。岸田派の若手からこんなニュアンスの発言があった。「菅総理以上に、5年以上も幹事長職を続ける二階氏への反発が党内には強い。だから総裁選出馬会見で幹事長への任期制を唱えれば、賛同者が一気に増える」。

 岸田氏をあおる若手に対し反対するベテラン・中堅もいた。「幹事長を本気で怒らせてもし選挙に負けたら、岸田派は次の選挙で公認をもらえなくなる」。双方の意見を聞いた岸田氏は「あとは俺に預からせてくれ」と、一言だけ発したそう。

 そして総裁選出馬会見では主戦論を選び、「聞く力」を誇示する岸田ノートまで手に掲げた。この会見で明らかに党内の流れが変わった。権力の空気に敏感な菅氏を焦らせ、自滅に追い込み、「戦わない男」と揶揄された男は、最後に戦いを選び宰相の座を勝ち取った。

 自民党は結党時から派閥が存在している。自民党内に派閥が生まれたわけではなく、派閥が集まり自民党ができた。その派閥間の、まさに血で血を洗う「主流派」の争いが、総裁選だ。

 ジャーナリストの青山和弘氏は「安倍氏が辞めたときに、岸田氏は菅氏と戦った。そのとき、みんな菅氏の勝ち馬に乗って惨敗した。これで岸田氏は総理候補として終わったと言われた。ところが菅氏が、コロナが急に進んで東京五輪の話もあって、一気に支持率が悪化した。ここで岸田氏は勝負に出る」と解説。

 「やはり二階氏を追い落とすことを画策した。勝負できない男と言われていたのが、あのときは本当に賭けたという感じ。岸田氏は総理になってから“元の岸田氏”に戻っちゃった感じがあるが、あのときはものすごい決意を感じた。本当に覚悟を決めた戦いだった」と振り返った。

(『ABEMA的ニュースショー』より)

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