10月4日に総裁選を迎える自民党。石破茂総裁の後任として5人が立候補し、各種メディアで討論し、また街頭での演説も行い、それぞれ掲げる政策をアピールしている。総裁選は議員、党員の投票によって決まるが、今話題になっているのが自民党員の減少だ。昨年の総裁選時は約105万人だったところ、党員数は約14万人も減った。ピーク時には500万人を超えたとされ、30年前でも350万人近くいたことを考えれば、いかに減ってしまったかがわかる。
石破総裁になって以降、昨年の衆院選、今年の参院選と国政選挙で完敗した影響も大きいが、党員からは銃撃されて亡くなった安倍晋三元総理の時代と比較し、現状を嘆く声も大きい。「ABEMA Prime」では自民党員、さらには自民党を離れ参政党の党員に“鞍替え”した人を招き、現在の党に対する不満などを聞いた。
■自民党員、ピーク時の2割以下まで減少…

党員がピーク時の5分の1にまで減ってしまった状況を、現役の自民党議員はどう感じているか。環境副大臣も務める衆議院議員・小林史明氏は「やるべきことを早くやれなかった。1つは物価高対策。世の中や野党から提案があった中、ずっと無理だと言い続けてきた。ただ、インフレで税収が伸びる中、本当はできたこともあると思う。もう1つは治安や外国人問題。これももっと早く対処できたはずなのに、目を向けて対処できなかった。そういったことが今の評価につながっている」と反省を述べた。
40代の会社員・草薙さんは2009年に自民党員になった。「私は保守の政治を支えたくて、麻生政権の時に党に入った。麻生さんは保守本流という感じだった。その時の自民党は人気がなく弱火だったので、支えたい気持ちが強くて入った。支持者から手紙が来たら議員がめちゃくちゃ力になると聞いてクリスマスカードを出したら、安倍さんや麻生さんから手書きで返事をくれたことがある。それで『国民が支える政治の力』を実感したし、こんなに議員と距離が近いことがあるんだとも思えた」。
ところが昨年の総裁選では、高市早苗前経済安全保障担当大臣に投票、党員票では1位になったものの、決選投票では議員票の力がそれを上回る形で石破総裁が誕生した。「高市さんの党員票がすごく伸びているのに、最終的には議員票で決めるのか、と思った。距離が遠くなった感じもあるし、もはや党が国民の声を全然聞く気がないことが、スタンスとして見えている。『政治の専門家なんだから、俺らに任せておけ』というポーズがある。電話で党に質問しても、それはメディアの誤報とかSNSの誤報という答えばかり。一方的なシステムが嫌になった」と、思いを語った。
さらに草薙さんは、自民党を離れ、参政党員になることを決めた。「参院選の時に、友だちに参政党の議員さんの動画を教えてもらった。参政党の『参政』は、国民の参政権を求める『参政』だと。『国民はもっと政治参加してください。なぜならバックは国民だから』というのを聞いて、求めるのはまさにこれだと思ったのがきっかけだった」。自民党内で感じた不満も、参政党では解消されている。「議員との距離が本当に近い。スローガンも『日本人ファースト』から『日本ファースト』にしようと言い出した時、SNSで揉めたら、やはり日本人ファーストにしようとなった。レスポンスの早さもある」と高く評価した。
■自民党→参政党に移る支持者も

また正義が勝ってしまった!さんは、今回の総裁選の結果次第で、党を離れるかどうかを決めるという一人だ。安倍政権を支持するために、10年以上前に入党したが、気持ちは下がり始めている。「僕は自民党ファンではなく安倍ファンだった。だから安倍さん的な自民党に戻ってほしい。安倍さんが暗殺されて以降、(当時の)岸田総理がどんどんオールドメディアに迎合した。LGBT法にしても、統一教会の件にしても、メディアに迎合して潰しにかかっている。私はどこの信者でもないけれど、信仰の自由はきっちりして、憲法を守る立憲主義の自民党というところを見せてほしかった」と語る。
その上で、前回の総裁選では「安倍的なものを求めているのに、反安倍の石破さんが総裁になって、絶対に選挙に負けると思ったら、その通りの結果になった。だから僕も、比例は国民民主党に入れたくらい」。今回の総裁選でも「オールドメディアがおかしな方向に世論誘導したら、戦うのが自民党の総裁だと思う。小泉さんはメディアに推されている。やはり高市さんや安倍さんみたいに、メディアに叩かれるくらいでなければダメだ」と訴えた。
党員歴が10年を超える70代の予備校講師・佐々木さんの中にも熱い思いがあった。「一昔前までは、社長が会社丸ごと、組合全体で党員になるようなところもあったが、今は自由意志で入っている人が非常に増えた。そういう人たちがどんどん辞めると、要は議員たちだけでトップを決めるという、昔の自民党に戻ってしまう。だから自分はそれを食い止めるために、まだ残っている」と、党に残る理由を語る。ただし、どんどんと党員が減る現状には、党の魅力が減ったことを理由にあげた。「政治が面白くない。安倍政治の時はとてもおもしろかった。(安倍政権時に)若者の求人倍率は0.6が1.2になり、民主党時代には株価が7500円だったところ、安倍さんになったら1万5000円にもなり、先が明るくなった。気持ちが全然変わった時だ。ただ、今はそれが全くないから、離れていくのは当然だ」。
さらに議員たちの姿勢についても疑問符を投げかける。「議員たちが、自分が当選することしか考えていなくて、国民の生活を考えていない。安倍さんは若者の就職率を高めようとしたし、あるいは氷河期世代を救おうと政策を打った。今はそれが何1つない」と苦言を呈した。
■「解党的出直し」に必要な新総裁は

党員・元党員の3人が抱える不満・訴えは、総裁選に声として届くのか。今回は「解党的出直し」という言葉を掲げて、5人の候補は出直しを誓っている。今や“元党員”である草薙さんは「小泉さんが主力と言われているが、石破総理のものを引き継ぐといっているので、それは解党的ではないと思うし、それでは結局変わらないし同じことになるだけ。今回も高市さんがトップになったとしても、(決選投票で)議員票で小泉さんになるだろう」と予想した。
また正義さんは「私は保守回帰をしてほしい。意識高い系の政策というか、たとえば気候変動とか人権とかの問題をやりすぎると、本当にうんざり。やはり経済をしっかりやって、メガソーラーの全廃くらい強いメッセージを出さないと自民党の復活はない。実際、メガソーラーは全然エコじゃないし嫌われている。雇用も生まないし、原子力発電所よりも反対運動の数は多いと思う。(総裁選は)どうか党員票で(結果を)ひっくり返さないでほしい」と述べた。
佐々木さんも、解党的というならば、明確にトップも変えるべきだと語る。「トップが小泉さんや林さんでは、国民が否定したものがそのまま続くだけで、解党的な出直しにはならない。保守回帰というか、反グローバリズムを標榜する方になってもらうしかないし、そうなれば党も大幅に変わると思う」と期待した。
3人の声を聞いたEXIT・兼近大樹は、古くからの支持者が離れ、新たな支持者獲得を目ざす転換期にあるという私見を示した。「自民党内もいろいろなことを考えてやってきたと思うが、これが結局古参の人たち、もともと応援してくれていた人たちからすると『ちょっと変わっちゃった』になってしまった。古参を大事にできなかった末路という感じ。ただ新しい層も獲得しないといけない。大衆受けするには丸くなるしかない。尖ったところが好きだった人は、もっとアクティブなところを応援したくなるもの。そこのバランスをどう取っていくかが、今後すごく重要だと思う」。
また党として、以前の保守のイメージから変わってきているという声に対しても、前向きに捉える。「自民党内のみなさんも、これだけ意見がバラバラ。それでも党であることの価値はめちゃくちゃあると思う。基本的に党は、同じような人が集まって1つのところに向けて走るが、国はそうではない。いろいろな意見がある中で1つにまとまるのが国。そう考えると、同じ意見ばかりでいるよりも、ウイングを広くいろいろな意見が取り入れられることの方がポジティブだ」とも述べていた。 (『ABEMA Prime』より)