4日に行われた自民党の総裁選で、高市早苗新総裁が誕生した。その流れをつくったのは、麻生太郎最高顧問だという。両氏は5日、党本部で会談し、人事について協議したとみられている。
初の女性総裁誕生 舞台裏
自民党70年の歴史で初の女性総裁誕生となった。第29代自民党総裁となった高市氏は、奈良県出身で1993年の衆院選に無所属で出馬し初当選。当選同期には安倍晋三元総理もいた。
1996年に自民党に入党し、これまで総務大臣、政調会長、経済安保担当大臣など歴任しており、党内きっての保守派として知られており、安倍元総理に思想信条が近く安倍氏の「遺志を継ぐ」と公言している。
総裁選出馬は今回で3度目。3度目の正直で、初の女性総裁の座を射止めた。
高市新総裁誕生に大きく影響したのが決選投票での議員票の動きだという。1回目と決選投票の議員票の動きを見ていく。
1回目の投票で高市氏が獲得した議員票は64票、小泉進次郎氏が獲得した議員票は80票だったので、この時点では小泉氏に議員票で負けていた。
だが、決選投票での議員票をみると高市氏が149で、小泉氏が145と高市氏が85票も積み増して逆転勝利した。
この85票には、1回目の投票で茂木敏充氏を支持した議員や小林鷹之氏を支持した議員の票が多く含まれているほか、旧岸田派の林芳正氏を支持した議員の一部も高市氏に流れたとみられている。
では注目されていた総理経験者は決選投票でどう動いたのか?菅義偉氏、岸田文雄氏、石破茂氏が小泉氏に票を投じたとみられる一方、麻生氏は高市氏に投票したとみられている。
総裁選では林氏を除く、候補が相次いで麻生氏と面会する“麻生詣で”を行ったが、麻生氏は誰を支持するか明らかにしてこなかった。しかし、4日、投票が始まる直前ついに動きを見せた。
麻生氏はおよそ40人が所属する麻生派会長だが所属議員に「(決選投票では)党員票が多い候補に入れるように」と指示し、これによって決選投票で多くの票が高市氏に流れたという。
勝敗を決めた「保守回帰の流れ」
麻生氏も言及した「党員票」、なぜ高市氏が多く獲得できたのか?
高市氏は今回、全国の党員票の4割を獲得したが、背景には統一地方選挙を2年後に控えた地方議員に保守層の自民党離れへの危機感が高まっているのでは?という。
さらに高市氏は、一部の外国人観光客が奈良公園のシカに暴行を加えている、と主張し「日本をかけがえのない国にしてきた古来の伝統を守るために体を張る」と外国人政策の厳格化を強く訴えた。
朝日新聞によると、高市陣営には地方議員から「あの発言は良い」との声が多数寄せられたといい、タカ派的な言動が党員票獲得に功を奏したとみられると朝日新聞は報じている。
人事選びに麻生氏の影?
焦点となっているのが人事。ここでも麻生氏の影響が指摘されている。
高市新総裁は就任会見で人事について「全員活躍、全世代総力結集。みんなで力を合わせて取り組んでいく自民党にしたい」と話し、また総裁の座を争ったほかの総裁選・立候補者の処遇については「総裁選でそれぞれ素晴らしいところが見えた。全員もちろん活躍してもらう」と要職で起用する方針を表明した。
では実際の人事はどうなっているのか。
党役員人事は、幹事長に麻生派の鈴木俊一氏を起用する方向だという。そして副総裁には、麻生氏を起用することを検討しているなど、麻生派を重要ポストに置く意向だという。
また、総理に指名された場合には組閣も行うことになるが、主要閣僚の顔ぶれについても情報が出てきている。外務大臣には、茂木氏を充てる方向で調整しており、ここでも決選投票での支持してくれた陣営を重視しているのが分かる。官房長官には、旧茂木派で“保守派のホープ”ともいわれている木原稔氏を起用する方向で調整している。
派閥の裏金問題議員の起用は?
「全員活躍」を打ち出しているが、派閥の裏金問題に関わった議員の起用はどうなるのか?
これについて、高市新総裁は「それぞれの議員が処分を受け、選挙で審判を受けている。再処分を行うつもりはないので、人事に影響はない。適材適所で仕事をしていただく」と話している。
朝日新聞によると、高市氏の支持を表明した旧安倍派幹部の萩生田光一元政調会長らを党幹部で起用する可能性があるという。
公明・野党との連携 どうする?
衆参ともに少数与党となるなかで、野党との連携は欠かせないが、連立拡大に前向きな高市新総裁に対して、与党の公明党が連立を離脱する可能性にも言及する異例の事態となっている。
4日、自民党の高市新総裁と党首会談を行った公明党の斉藤鉄夫代表は、会談の席で、高市新総裁に政治とカネの問題、歴史認識と靖国参拝、外国人との共生について、党の支持者から大きな不安や懸念があると伝えたということだ。高市新総裁からは「それらの心配がないようにしたい」という答えがあったと斉藤代表は明かしている。
会談後、斉藤代表は記者団を前に、高市新総裁に伝えた懸念について「その解消なくして連立政権はない」と連立離脱の可能性にも言及する異例の発言を行った。
では野党との連携あるいは連立の拡大の可能性はあるのか?
高市新総裁が連立拡大の相手として念頭に置くのは、国民民主党だという。そして国民民主党が政権に協力する条件として挙げている「ガソリン暫定税率の廃止」と「年収の壁の引き上げ」について、高市新総裁はいずれも賛成の立場を表明している。
玉木雄一郎代表は「政策協議の要請があればしっかり向き合いたい」と連携に前向きな姿勢もみせているが、国民民主党を支援する労働組合「連合」の芳野友子会長は、先月、国民民主党の連立入りについて「(自公)政権の枠組みに入ることはあり得ない」と反対しており、すんなり進むかは不透明な状況。
そして連携相手として取りざたされてきたもう1つの党が「日本維新の会」。吉村洋文代表は連立協議について、「正式に打診があれば協議するのは当然だ」として「副首都構想や社会保障改革について議論していきたい」と話している。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年10月6日放送分より)