公明党の連立離脱を受けて、政局が目まぐるしく動いています。自民党の高市総裁は「総理大臣に絶対になってやる」と決意を示し、執行部は日本維新の会・国民民主党との連携を探っています。一方、今を政権交代のまたとないチャンスと捕らえる野党第1党・立憲民主党もまた維新・国民との接近を図っていて、15日にも3党の党首会談が行われる見通しです。
「最後まで諦めない」高市氏
14日は公明党が連立離脱を告げてから初めての閣議。閣僚からは落胆の声が相次ぎました。
「国民が納得をするような政策をつくり出し、共に努力を続けてきたパートナーだったが、この度、連立解消になり、大変残念に思っている」
「今までの感謝と残念な気持ちが混じり合っている状況。我々が政権維持をしたとしても、困難な状況が待ち受ける」
村上総務大臣は、裏金事件に関係した萩生田氏が党の要職に起用されたことに言及しました。
「お金の問題のあった方を、皆さん方の表現を借りると『採用する』ということは(公明党に対する)平手打ちに当たるのではないかと。友党というか他党に対して慎重に対応すべきだった。『覆水盆に返らず』ですけど」
公明離脱で野党候補に投票も
こぼれた水の流れる先。離脱を告げた10日、斉藤代表は、総理大臣指名選挙で野党に投票することがあるのかと問われ、明確に否定していました。
「私個人の考えでは、いきなり野党である方に同意するのはちょっと考えにくい。これまでずっと自民党の方と一緒に色々な法律や予算の準備をし、積み上げてきた関係」
しかし14日、党幹部から聞こえてきたのは野党の候補に投票する選択肢も排除しないという考えです。
「あらゆる可能性があろうかと思うけれども、今週様々な分析を行って、我が党として方針を決めたい」
ただ、どの野党が念頭にあるのかは分かりません。
立憲・維新・国民 一本化は?
そもそも“野党候補”として一括りにでき人物がいないのが、今の永田町。野党第一党の立憲民主党は野田代表への投票にこだわらず、国民民主党の玉木代表に一本化する可能性を探っています。
「理屈上では自民党を上回るには48人の賛同者が必要なので、色々言われるが、執念で政権を代えるなら死に物狂いでどんな考えであっても48人の票を集めるしかない。それが選挙ですから。もちろん理念は大事。でも皆さん現実の政治を動かしていくってそれだけじゃない。そういう点で言えば私たちの方がはるかに本気だから『場合によっては野田を降ろしてでもやらせてください』と言っている。それだけの話」
その後、安住幹事長は国会内で、日本維新の会の中司幹事長、国民民主党の榛葉幹事長と、総理大臣指名選挙の対応をめぐって会談しました。そこで出た話。
「安住幹事長から『野党が一本になればできるのにね』と。ただ、維新からも『数合わせはダメです』と。うちからも『理念・政策が大事です』と」
3党は15日にもの党首が会談し、さらに突っ込んだ議論を行うことにしています。ただ、一本化を呼び掛けられている玉木代表はこんなことも言っています。
「仮に政権の枠組み交渉が滞ったり、なかなか着地点が見いだせなければ、いわゆる“総総分離”。とにかく国民のための速やかな物価高騰対策の実施。これをどうやったら速くできるのかというなかで、選択肢を考えていくことが重要だと思います」
“総総分離”も選択肢?
自民党の総裁と総理大臣を別の人物が務める総総分離。まさに今の状態のことです。総総分離を求める考えは自民党内でも。臨時の両院議員懇談会が開催された自民党本部を訪ねました。
(Q.総総分離の状態が続いている)
「今日もそれ言ったんです。石破内閣が総辞職しない限り、石破内閣は続くんですよ。ここは時間をかけてでも安定勢力・安定政治の基礎をつくった方がいい」
「首班指名選挙を必ずやらなければいけないわけではない。場合によっては、石破総理のままで目先の懸案を処理して、少し落ち着いた段階で首班指名選挙を改めて行って、その時に高市総理ということになると。時間差を置いて対応することも一案ではという意見があった」
もっとも、党内の多数は来週にも“高市総理”を誕生させるのが筋だという考えのようです。
「来たるべき何日か存じませんけれども、首班指名の日程に向けて、必ず多数を取らせていただくように最善・最大努力をするということ」
「絶対に総理になる」高市氏
加速する与野党の駆け引き。鈴木幹事長は14日午後、国民民主党の榛葉幹事長と国会内で会談しました。また、東京都内のホテルでは、梶山国対委員長が、日本維新の会の遠藤国対委員長に接触。自民と国民民主を合わせただけでは衆議院で過半数を取れないため、維新の会にも連携を呼び掛けました。
高市総裁は14日夕方、都内の新興企業を集めたイベントに出席。こう力を込めました。
「総裁にはなったけど、総理にはなれないかもしれない女。かわいそうな高市早苗ですが、こういう時も諦めません。首班指名の瞬間ギリギリまであらゆる手を尽くす。今しがたの両院議員総会で私の決意を伝えてきたところ。もしも…もしもじゃないや、絶対になってやると思っている内閣総理大臣になれましたら、また皆様と意見交換をして日本経済を強くしていきましょう。皆様の力で強くしてください。共に歩みたいと思っています」
高市総裁は15日、立憲民主党の野田代表、日本維新の会の藤田共同代表、国民民主党の玉木代表と個別に会談することにしています。
“野党一本化”実現性は?
政治部官邸キャップの千々岩森生記者に聞きます。
(Q.立憲・維新・国民の野党3党の議員数を合わせれば自民を上回り、政権交代も狙える状況ですが、総理指名に向けてまとまる可能性はありますか)
「野党3党は、14日は幹事長、15日はレベルを上げて党首会談となります。連携に向けて前進しているように見えますが、結論から言うと、現時点では非常に距離があります。野党の中で最も熱量が高いのは立憲です。野田代表の名前にはこだわらない、玉木さんでもいい、維新の藤田共同代表でもいい。とにかく、まとまって政権交代を目指そうという立場です。一方で、他の2党はニュアンスが違います。例えば国民民主の玉木代表に“立憲とやれますか”と聞くと『いや、エネルギー政策と安全保障、この2点で隔たりがあります』と、立憲の話を振ると否定から入るんです。かつては民主党で政権を共にし、そこから分かれて行った複雑な経緯があります。一方で、玉木さんに自民について聞くと『むしろエネルギーや安保政策は近いんだ』と肯定的なスタンスです。軸足は、自民側にあるような印象を受けています」
(Q.自民党は公明党の離脱で厳しい状況にありますが、総理指名選挙に向けてどう動きそうですか)
「15日に野党3党が党首会談を行いますが、自民党も15日に立憲・維新・国民とそれぞれ個別に党首会談を予定しています。自民党も連携阻止に動いています。総理指名選挙での協力を求めるわけですが、自民党からすれば『高市早苗』と書いてもらわなくても、各野党がそれぞれの党首の名前を書いてくれれば、自民党は比較第一党なので高市さんが勝つわけです。一方で立憲は、誰かの名前で一本化する、場合によっては『他党の党首の名前を書いて下さい』と説得しなければならないわけで、自民党よりハードルが高いと思います。ただ、まだ1週間ありますので、これからが本当の戦いとなるんだと思います」