臨時国会が週明けにも開かれる予定となり、次期総理を決める首班指名選挙をめぐり、与野党が党首会談を相次いで行っている。公明党から連立解消された自民党は、立憲民主党や国民民主党と党首会談を実施し協力を求めた。一方の野党側では、立憲民主党と国民民主党、日本維新の会の3党協議も行われた。
こうした中、日本維新の会は、自民党と急速に距離を縮め、吉村洋文代表は政策協議次第によって、首班指名選挙で高市早苗総裁への投票に協力する姿勢を見せた。今後どうなるのか。『ABEMA Prime』では、自民党の河野太郎衆院議員と政治ジャーナリストに見通しを聞いた。
■自公の連立解消で、自維が急接近?

自民・維新の党首会談は、10月15日18時ごろから行われた。高市氏から連立を含む首班指名協力への打診があった。16日15時からの政策協議で維新側は総理指名選挙での協力に向けて合意すべき12項目の政策を提示した。吉村氏は「政策協議のゴールは首班指名?高市早苗と書く?」と問われ、「その考え方で結構だ。政策協議がまとまれば、副首都構想と社会保障改革が2本の柱であることは申し上げた」と答えた。
河野氏は「ヨーロッパの連立政権では、政策協議に数カ月かけることもある。数合わせだけで、方向性が異なると、すぐバラバラになる。基本的な部分を合意してから始めるのは大事だ」と語る。
自公連立については「野党時代も続いていた。信頼関係にはレベルがあり、連立組み替えだけでなく、今後いかに公明党と組むかも大事だ。できれば3党で衆参安定的にやるのが望ましい」とした。
河野氏は、今回の総裁選で小泉進次郎氏を支持していたが、「総裁が誰であっても、本来なら自公を軸に、国民か維新を加えた3党連立で安定政権を作ることが基本だった」と考えている。「20年以上続けてきた自公連立は、政策的に安定し、根底に信頼関係もある。野党時代も乗り越え、安保法制も一緒にやってきた。こんな形で離脱するのはショックだった。組み直しを模索しなければならない」。
維新との連立については、「自維だけでは安定政権には足りない。もう一度、公明党と話すことが大事だ。維新と公明党は、大阪で一緒に組んでいた時期もある。決して遠いとは思えない」との見方を示した。
政治ジャーナリストの青山和弘氏は、「維新の関係者は『公明党が離れて組みやすくなった』と認めている。しかし選挙のことを考えれば、圧倒的に公明党だ。支持母体があり、選挙区で2万票持っている。維新はそうした確固たる支持グループを持っていない」と解説する。
そして、「高市氏が解散に打って出たいのであれば、地方議会での自公連立をどれだけ維持できるかが重要になる。維新は国会で法案を通すならいいが、選挙は公明党との関係維持がポイントだ」と指摘した。
また、公明党と日本維新の会の違いを「政策面では維新の方が近い。ただ、公明党がブレーキ役になっていたことに、一定の評価はある」としつつ、「高市氏にとって、維新や国民の方がやりやすい側面は否めない。ここまでトントン拍子で、政策協議や連立に向かうのは驚きだ」と話した。
■自民党と維新の会、連立へのハードルは

維新が掲げている政策を、自民党は飲めるのか。河野氏は、副首都構想について「東京一極集中を是正する議論があるなかで、大阪が“西の柱”であるのは、その通りだ。『副首都はダメだ』と頭から否定する必要性は全くない」とする。
また、社会保障改革についても、「“年金制度”は破綻しなくても、このまま行けば、“年金生活”は破綻する。社会保障改革は避けて通れないと、国民は皆考えている。テーマとしては当然だ」と評価した。
元日経新聞記者で作家の鈴木涼美氏は、「自公連立により、保守色の強い政権が発足しても、平和主義を掲げる公明党がタガになるイメージがあった」と明かす。一方で日本維新の会については「同性婚や夫婦別姓などの発言に違和感はないが、安全保障や外交については、自民党以上に核武装の必要性を感じている人がいる」とする。「政権内に公明党がいる方が、国民的な安心感は強い。ただ、これを機に、維新が一部掲げるリベラル政策が、交渉のカードになるなら、与党に入っている意義がある」。
2ちゃんねる創設者のひろゆき氏は、「維新が掲げる『社会保険料を下げる』といった政策は、基本的にはほぼ不可能だ。過半数を得て政権を取ることはまずないと思っていたが、今回自民党に飲ませて、実現する可能性があるのは面白い」と語る。
近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は、「維新が掲げる2本柱は、自民党、とくに麻生太郎副総裁の側から見ると飲みやすい。社会保障改革は、誰もが必要だとわかっているが、『選挙に不利になる』などの理由で言う人は少ない。政策協議はうまく行くのかもしれない」との予想を示した。 (『ABEMA Prime』より)