自民党の高市総裁と日本維新の会の藤田共同代表は16日、それぞれの幹事長と政調会長を同席させて、連立政権の構築に向けた第一回目の政策協議を行いました。
「12項目の要求」折り合えないのは…
距離はさらに縮まったようです。
「現状に対する価値観、認識や国家観については、高市総裁と私の中でも、相当、近しいものがある。信頼関係が一段上に進んだ」
そのうえで、維新側が求めたのは、副首都構想の実現や社会保険料の引き下げ、企業・団体献金の廃止などを含んだ12の項目。概ね一致点があったようですが、折り合えなかったものもありました。
「企業・団体献金の廃止。先方としては、これまでの議論の経緯もある。わが党としては、非常に強く主張しているところ」
それは“自民党のアキレス腱”。公明党が連立離脱を告げたのも、企業・団体献金のあり方をめぐる考え方の違いからです。しかも、公明党は、規制を強化すれば存続を認めているのに対し、維新が求めているのは“禁止”と、より厳しい条件。企業・団体献金のあり方を含めた政治とカネの問題を正すのは維新の原点です。
党の創設者の言葉。
「身を切る改革をまずやって、その後に国民に負担をお願いする。これが政治の通りであり道筋。自民党、民主党、公明党、ほっといたら、国民の皆さんに負担を押し付けるだけ押し付けて、国会議員が甘い汁を吸っているのを一言も言わない」
ところが、自民党との協議に先立ち、吉村代表は「副首都と社会保障、これは絶対条件」と述べました。
「(Q.維新として企業・団体献金に関して絶対条件ではない。つまり譲歩する余地があるととらえていのか)いま、にわかに先方との協議中で、そのスタンスをこの場で表明するのは、適切じゃないと思う。企業・団体献金だけで、政策が成り立っているわけではない」
国民・玉木代表は“恨み節”
維新との連立を模索していた国民民主党の玉木代表は、不快感をあらわにしています。
「自民党にも企業・団体献金の禁止・廃止を迫ってほしい。できないなら、連立には参加しないくらいの強い思いで、協議に臨んでほしい」
15日夜には、こんな恨み節も述べていました。
「藤田さんも真剣に議論していただいてたなと思っていたけど、自民党と連立で握ることが決まっていたのかみたいな感じ。ちょっと二枚舌みたいな感じで扱われ、我々としては、残念だなと、正直、思った。聞くところによると、前から決まっていたらしいので。自民党とやるなら最初から言ってよという感じ」
「(Q.玉木代表から『二枚舌みたいで残念』といった発言があったが)ちょっと、よく分からないですけれども、他党を批判するよりは、自党の政策をどうやって実現するのか。そこに注力された方がいいんのではと」
立憲・維新・国民 3党協議の行方は
一方、立憲・維新・国民の野党3党の協議は、もはや消化試合の様相。16日は、維新が自民と何をしようとしているのか確認しただけで終わりました。
「『連立を視野に入れた協議ですか』と申し上げたら、(維新)中司幹事長から『その通りです』という話があった。閣外というより閣内に入って、協力する可能性がある。したがって、当然、首班指名も『高市早苗』と書くと」
「(Q.『高市早苗』と維新が書くなら、野党が一枚岩でも政権交代は困難。立憲としての戦略、シナリオは)シナリオも戦略もないんですけど、必死のパッチじゃないですか」
この直後、安住幹事長は、公明党と向き合っていました。特に何かで合意したわけではないのですが、仮に公明を取り込むことができたとしても、政権交代を実現できるかは極めて不透明です。
自民党は16日夕方、臨時役員会を開催し、今後の連立協議は高市総裁に一任することを決めました。協議は、さらに加速する可能性があります。
“急きょ”党首会談 なぜ
日本維新の会代表・吉村洋文大阪府知事に聞きます。
(Q.15日になって事態が急転直下動いたように見えました。15日午後、吉村さんが東京に来て、高市さんと会って、16日の政策協議に至ったわけですよね。その間に何があったのか。事前に高市さんからのアプローチがありましたか)
「高市さんから電話がありまして、かなり本気の話と熱量のある話、国に対してこうしていきたいという話がありました。そして党首会談をしたいと仰いました。これは非常に重要な会議になると私も判断をいたしましたので、私自身が上京して直接話を聞きますと。それが15日ですね」
(Q.それまでは、どちらかというと高市執行部は国民民主党との距離が近いのではないかとも言われていましたが、そこはあまり意に介さなかったですか)
「僕はそれまでも国民民主党の政策と高市さんの政策が近い。ならば国民民主党と高市総裁でどうぞやってくださいという考え方ですから。僕は他党を邪魔するつもりは全くないし、178万円の壁もどんどんやったらいいと思うんです。だからお先にどうぞというスタンスでいました。ただその中で、我々のところに高市さんが真剣な話が来たので。であるならば、私たちも話に応じますということで協議をしました」
(Q.吉村代表は事前に『熱量を確かめに行く』と仰っていました。どういう局面で熱量を感じましたか)
「元々の電話もそうなんですけど、お会いした時から、高市さんがやりたい国家政策というか、そういったものについて本気でやっていきたいと。これは会って話をしないと分からないところがありますが、その熱は感じました。ただ、私自身も公約で約束したこと、そして30年間成長してない日本においてどうやって成長させなければならないか、国家として本質的な改革に僕自身、熱量を持って思っているところがありますし、そういった公約を掲げています。これは副首都もそうだし、人口減少の中の社会保障改革もそうだし、非常に難しい改革だけど、僕は絶対必要だと思っています。社会保険料も高すぎるし。そして日本の国家構造を考えても、2極のツインエンジンで成長させる。東京ばっかりにお願いする、そこにばかり頼るんじゃなくて、もう1つの軸を作って、バックアップを作って、成長するエリアを作って、それを日本に何個か作っていって、成長する日本を次世代に残したい。という思いで、僕らにも熱量と正義があると。そこのぶつかり合いを15日にやったということです」
自民に求める“政策12項目”
16日に始まった政策協議の中身について見ていきます。
維新からは3枚の紙で自民党への要望が伝えられました。それぞれの項目について非常に細く政策が書かれていて、項目だけ抜き出しても12項目に及びます。非常に広い範囲で政策テーマが示されました。
(1)経済財政政策
(2)社会保障政策
(3)皇室・憲法改正・家族制度
(4)外交安全保障政策
(5)インテリジェンス政策
(6)エネルギー政策
(7)食料安保・国土政策
(8)経済安保政策
(9)人口政策・外国人政策
(10)教育政策
(11)統治機構改革“副首都構想”
(12)政治改革 企業団体献金の廃止など
中でも吉村代表が譲れない絶対条件とするのが“副首都構想”。それから社会保険料の引き下げなど“社会保障改革”の2つです。また、維新がこれまで掲げてきた“身を切る改革”についても、企業団体献金の廃止などが盛り込まれていますが、16日は持ち帰りとなったということです。
『副首都』『社会保障』
(Q.絶対条件と仰った社会保障の改革、そして副首都構想をはじめとする統治機構の改革。これについては、かなり歩み寄りがみられる、ほぼ共有していると言っていいですか)
「まだ最終の確定まで行ってないですけれども、高市総裁と話した時に、この2つは僕は絶対条件ですよと。これが違うというのは、なかなか話すらできませんという話を最初にさせてもらった時に、高市総裁は賛意を示していただいたので、15日の会談につながったところもあります。この2つについては、高市総裁とは一定の方向性の確認はできていると思っています。副首都構想の法案も来年の通常国会くらいにはきっちりやり切るぐらいのスピード感で、しっかりやらなきゃいけないと思っていますし、その辺りの共有もできています。ただ、最終合意には至っていません」
(Q.副首都というのは、関東に住んでいるとややなじみが薄いのですが、大阪維新の会としてはこれまで、大阪都構想に取り組んだ経緯がありますが、これと表裏一体のものと考えていいですか)
「よく誤解されがちなのが、大阪のためにやってるんじゃないんですかって言われることがあるんですけど、それは違います。国家構造として僕は必要だと思ってるんです。世界の主要都市ってどんどん成長しています。日本だけがやはり成長しなくて、相対的に日本が今貧乏になっています。海外から来るお客さんにしても購買力にしても、全然日本がどんどん下がって海外が上がっている。日本を強くしていかなきゃいけない。そのために必要なのは経済なんですけど、都市戦略っていうのがないんです。成長する国家って大体、都市戦略があるんですけど、日本にはないんですね。これが東京一本足打法というか、首都圏に全て集中させて頼っているという状況があります。ただ、僕はこういう国家構造を目指すべきだと思ってます。つまり、もちろん東京が頑張ってもらわなきゃ困るんですけど、そこだけじゃなくて、もう1つ軸となるような、成長する圏域をまずは1つ。それが2つ3つっていうのを作っていく都市戦略をやるべきだと思うんですよ。それがまさに副首都なんです。もし万一、何かリスクが首都圏に生じた時は首都機能をバックアップする。そういったものを副首都として機能として持たせる。これ今ないんですよ、BCPというかバックアップ機能。企業ですら本拠地東京、そしてサブを大阪。NHKでは大阪に第二拠点を置いたりして、いざという時のバックアップをしている。でも国がそれがない。じゃあそれをちゃんと副首都でやろうよと。それを目指していくうえでは副首都、そして今、第2の経済圏域は、万博もやりましたが、関西圏ですから、まずはそこで1つ目の極を作って、ツインエンジンで日本を引っ張っていこう。それを2つ3つ増やしていこう。これは国家構造、成長戦略であり、国家の危機管理でもあります」
企業団体献金の廃止
(Q.もう1つの注目点が企業団体献金の廃止。維新がこれをずっと主張してきましたが、16日は折り合わなかった。そして吉村さんのこれまでの言い方を見ていると、自民党にはすぐ求めずに時間的猶予を与えようということですか)
「ここは溝がかなりあるのは、正直申し上げてあります。だって公明党が離脱したのはここが原因ですから。企業団体献金、僕らは廃止。実際に口だけじゃなくて、僕たちは実際にやってます。他の政党なかなかやらないです。口では言うけど実際はやらない。我々は実際に廃止をしています。受け取らないとやってる。自民党は透明化を掲げている。少しここに溝があると思っていますが、それをできるだけ何らかの形で1歩でも2歩でも前に進めたいなと思っています。ただ、僕は政治改革でいくと、本質は議員定数の大幅削減だと思っているんです。国会議員の議員定数の大幅削減。本気の社会保障改革とか副首都もそうだし、それ以外で12項目でたくさん国家の課題があります。もちろん、まず目の前の物価高対策、これは絶対やらなきゃいけません。ガソリン税の減税であったりとか、物価対策の支援策。生活しんどいですから国民の皆さん。これやるのはもう当たり前です。そのうえで、連立を含めた協議になってますから、国家のあるべき姿というものを含めた協議をしています。そうすると、皆にいい顔ばっかりできるわけではないんです。そうなってくると、改革はまずやんなきゃいけない。政治改革の1丁目1番地で一番難しいのは議員定数の削減なんです。これは自民党も民主党も今まで約束したけど、やれませんでした。我々、維新の会というのは地方の政治だけど、これを約束して109あった議員定数を88まで、20%削減というのをまず一番最初の原点としてやって、その後に色んなことをやっていったわけですね。なので今回、肝になるのは、もちろん企業団体献金の禁止、できるだけ埋めていきたいと思いますが、本当に嫌がってなかなか難しいかもしれないけれど、国会議員の大幅定数削減。衆議院で500人近くいるわけですから。これを本気でやれるかどうかがポイントだと思います」
(Q.肝は定数削減ということですが、この政治とカネについて他党からつっこみが来ていました。例えば立憲の野田代表は『政治とカネの問題にけじめがついたと言う人たちと手を組むようなことは絶対いけない』と釘を刺しています。この発言・批判についてはどう受け止めますか)
「もちろん政治とカネの問題は当然、正していかなければなりません。そのうえで、政党対政党になるので、例えば企業団体献金の禁止について完全一致するんだったら、その政党になったらいいわけです。考え方が違うところがあります。でもそれでいいとは思ってませんから、できるだけ埋めたいと思ってますし、政治とカネを正していくのは当然のことだと思います」
自民“協議”はどう進める
(Q.色んな政策が出ましたけど、絶対譲れない点を除いて他のものが結局ずるずる決まらないこともあり得ると思いますが、どうやって自民党に迫っていきますか)
「だからまさにそこなんですよ。僕ら文書通信交通滞在費をオープンにしていこうというので自民党と合意しましたけど、それを反故されたという経験があります。文書で交わしたとて、そして期限を決めたとて、やっぱりやめようと言われたら、そこで終わっちゃうわけです。そう考えた時に、これだけある改革を本気でやろうとすると、議員定数の大幅削減をこの臨時国会にやるべきだと思います。それを実際に」
(Q.そこも譲らないということですか)
「そこは、僕、譲りません」
(Q.かなり高いハードルですね)
「めちゃくちゃ高いハードル。でもそれぐらいやらないと日本の改革なんかできないです」
入閣?閣外協力?
(Q.藤田共同代表は16日、高市さんから維新から閣僚を出してほしいという協力を依頼されたということでした。もし高市さんの名前を首班指名で書くことになった時に、閣僚を送り込む考えはありますか)
「政策合意がまだできてませんので、政策合意ができるかどうかがポイント。そしてもう1つは、入閣の要請、連立で一緒に責任を持ってくださいという要請は受けています。これは事実です。もし合意がまとまれば、最後は代表として判断すべき、非常に難しいけどもきっちり判断すべきところだと思います。先ほど申し上げたとおり、紙に書いたはいいけど、実際実行しないというのは、これまでもあった話です。やっぱり改革のセンターピン、メルクマールになるのは、本気でこれから日本を変えていくんだというのが、高市さんに本当に思いはあるんであれば、議員定数削減をやるべきです。臨時国会で。それをどうなるかというのを、きちんと見たい思いはあるし、僕らはやりましたから。そこが僕は1つポイントになると思ってます」
(Q.17日は東京で時間がありますよね。高市さんとお会いになる予定はありますか)
「現時点ではないですけど、本当にこの数日間は自分でも自分の予定がころころ変わるというか、そういう状況になっているので、ちょっとどうなるか分かりませんけど、今はないです」
(Q.17日に高市さんと連立合意でハンコを押すというような展開もゼロではない)
「いや、それはないと思います。政策協議の合意がまとまってないですから。17日にまた政策協議をするというのは藤田共同代表から報告を受けてますので、17日に何かポンとなるようなものではないと思います」
もし自維“連立”したら
(Q.今まで自公の連立政権が続いてきました。安全保障などで積極的な自民党に対して、公明はブレーキ役というか、あるいは市民目線の感覚を一生懸命、訴えてきた。そういうバランス感覚で自公政権26年やって来たと思う。自民と維新の連立となった場合、そのイメージ、姿はどういうことを想定すればいいのでしょうか)
「まず、外交や安全保障・防衛、あるいは外国人政策、外国人の土地規制であったり、スパイ防止法であったり、国際環境が随分、変わってきてますので、そこの価値観は、維新と自民は、近いのだろうと思っています。高市さんとの考え方も近いんだろうと思っています。防衛を1つ考えても、まず、この月末にトランプ大統領が来られる。そのときには、不安定な状態で、日本として大丈夫かという話に当然なりますね。内政だけでなく、外交とか防衛という、国家・国民を守るという最も大きな使命が国にありますから、まず、そこで一致できるかどうか。そこの価値観は非常に近いところはあるんだろうと思ってます」
連立で“党消滅リスク”も
(Q.最後の質問ですが、維新の代表はなかなかユニークで、維新、自分の政党がなくなったって、日本がよくなればいいんだよというようなことを、大体、皆さん仰います。実際に、連立を組むと、維新は解消に向かうのではないかというような声も、議員の間からは聞こえてきたりして、なかなか悩ましい声が聞こえてきます。その思いというのはあるのでしょうか)
「非常に難しい判断になると思います。過去の政党で、自民党と連立組んできて、残っているのは公明党だけなんです。公明党は、創価学会という非常に強い支持母体があるので、しっかり選挙も強いですししっかりされていますが、他の政党というのは、基本的に消滅してきている。維新も、仮に連立に入ったら、消滅するリスクってあるんじゃないのって。過去の例を言うと、確かにそうです。ここは本当に判断難しいですが、ただ、今、本当に国がしんどくなって、経済も成長しない。そのなかで、変えていかなきゃいけないところが多くある。そのなかで、日本の本質的な改革をしていくためには、やはり、誰かがリスクをテイクして、道を開けていくというのをやらないと、いつまでたっても日本は前に進んでいかないと、僕は思っていますので、そういった意味では、ある程度、リスクを取ったとしても、それで日本がよくなるのであれば、いいじゃないかという思いで、僕は政治をやってます。そのぐらいの覚悟でやってます」