21日に召集される臨時国会で、早ければ同日にも首班指名選挙が行われる見通しだが、各党が連立に向けて目まぐるしく協議を重ねる大政局となっている。自民党は公明党と26年にわたる連立を解消した後、日本維新の会と急接近。両党で政策協議に入った。また野党第一党の立憲民主党は、野党結集による政権交代を目指し各党との調整を進めている。その中で、国民民主党が難しい位置に立たされている。
【映像】玉木氏、約束を反故にされた怒り「やりますよでは信頼できない」
自民党・公明党・国民民主党、あるいは立憲民主党・日本維新の会・国民民主党という連立も予想された中、現状では自民党・日本維新の会による連立の可能性が高まったと見られ、総理候補の1人と言われていた国民民主党・玉木雄一郎代表は、丁寧に協議を進めようとした中、日本維新の会に先を越されたような見え方にもなっている。「ABEMA Prime」に出演した玉木氏は「いろいろ裏切られた経緯もある」「もし失敗したら私はクビだし、もうやっていられない」などとコメント。与党、野党いずれとも連立に対して慎重な姿勢を崩さない理由を説明した。
■大政局の主役候補から一転、出遅れ気味に

衆議院では4番目の27議席、参議院では3番目の23議席を持ち、今回の首班指名選挙でもキャスティングボードを握るどころか、総理候補にも名が挙がった玉木氏。15日には各党間で党首会談が行われたところ、自民党と日本維新の会が水面下での交渉を進めており、急接近していたことが明らかになったが、この現状をどう受け止めたのか。
玉木氏 「少数与党になって、どこも過半数が取れない中で、様々な駆け引きと組み合わせが、ずっと水面下で行われてきた。自民党と維新が一気に連立に向け動き始めたが、自民党も必死だと思う。公明党が抜けて、どうやってかき集めて過半数に行くのか。我々にも働きかけはあるし、今までいろいろなやり取りをしてここに至っている。ただ我々はとにかく政策実現がしたい。7月20日に参議院選挙が終わって、もう3カ月ぐらい経つが、まだ何もやっていない。ガソリンの値下げも、所得税控除の引き上げで手取りを増やすことも、すぐにやってほしい。高市さんにもお願いしたし、前を向いてやる以上は閣内外は関係なく協力はする」
自民党・高市早苗総裁と玉木氏、さらには麻生太郎副総裁と榛葉賀津也幹事長がそれぞれ接触し、連立あるいは連携に向けて進んでいたと見られていた中、ここに来て鈍化した見方をされている。玉木氏が繰り返し訴えるのは、昨年12月に自公国の3党間で、幹事長レベルで合意した「いわゆる『103万円の壁』を178万円を目指して来年から引き上げる」「ガソリンの暫定税率の廃止」の2点が進まないことだ。
玉木氏 「そもそも連立を組む・組まないにあまり関心がないし、政策が進めば良いと思っている。我々は去年12月に1回、2つの項目で合意したが、それが果たされなかった。わかりやすく言うと、約束を破られた。連立は包括的な合意。それを新たに結ぶなら、まずすでに結んだ2項目だけはちゃんとやってほしい。それができたら信頼関係もできる。まずこれをやろうと、高市さんにも麻生さんにも申し上げている」
立憲民主党・日本維新の会・国民民主党の3党による党首会談では「一番期待していなかったのは私」と語る玉木氏だが、思いのほか感触はよかった。それだけに日本維新の会が、直後に自民党との連立に向けて大きく動いたことに戸惑いもあった。
玉木氏「野党と(連立を)やるならば、安全保障や原発を含むエネルギー政策について、正直政策が分かれていて、ここを一致しないと政権を作ってもすぐバラバラになる。2009年、民主党政権でも、辺野古崎の基地問題で社民党が連立から離脱して、日米関係もギクシャクした。ああいうことを2度と繰り返してはならない反省がある。(3党の党首会談の)感触は良かった。結構踏み込んだ話もできたし(日本維新の会)藤田さんも『いい話だった』とご自身で言っていた通り。それが終わった1時間後に、自民党と日本維新の会の連立の話が出たので、ちょっとがっくり来た」。
■なぜここまで連立に慎重なのか

このままで行けば、国民民主党は自民党とも、他の野党とも連立を組まず、政権を握ることもない。当然“玉木総理”が誕生することもない。なぜここまで慎重になるのか。
玉木氏 「やはりいろいろ裏切られた経緯もあるので、1個1個固めていきたい。過去にも例がある。岸田内閣の時、約束をしてくれたことで本予算に野党にもかかわらず賛成をした。野党が本予算に賛成するということは、ある意味もう政権に入ったも同じような行為でめちゃくちゃに批判されたが、それでも賭けてやった。それなのに(国民民主党が求める政策を)やらなかった。別に連立から逃げているわけではなく、党の代表として同じ失敗はできない。過去の経験も踏まえて確認するしかないし、もし失敗したら私はクビというか、もうやっていられない。こちらにも抱えているものがある」
周囲からは、どの党がどの党と連携を強めるかに関心・注目するのに対し、玉木氏は多党時代に突入している今、新たな政治のルールを構築すべき時期に来ていると訴える。
玉木氏 「連立に入らなくても政策実現する方法はあるし、連立を組んでも(過半数)ぎりぎり。丁寧に野党の意見を聞くのが、この多党制時代の新しい政治のお作法、ルールだと思う。ヨーロッパだと、政権構想や連立交渉を3カ月、4カ月とかけてやるところもある。今は、いろいろなルールをこれから新しく決めていく過渡期。大切なのは、これだけ多党化して政党が増えたということは、国民の考え方も多様になっているということ。2つや3つの政党だけでは受けきれなくなっている民意を、どうやって丁寧に政策に反映させるのか。与野党の努力と工夫が必要だと思う」。
財務省官僚時代、自民党と公明党の2党と話し、それが国会で法案が通るところを見てきた玉木氏にとっても、これからの多党時代はより複雑さが増すからこそ、新たなルールづくりが必須だと訴える。
玉木氏 「民意を反映すること、それを集約すること、この2つのバランスを取るのが政治はすごく大事。(官僚からすれば)今までなら自民党と公明党だけ押さえれば、野党は無視。説明先も(過半数を持つ)2つの党でよかったし、あとは国会で多数決で決まるので、決定権は事実上国会の外にあったようなものだった。だが今はこれだけ党が増え、国会内でも修正されるし、いろいろな新しいことが起こるようにもなった。その多党制時代に、新たな政策決定や政治の進め方のルールと作法を新しく作る段階に来ている。たとえば与野党はあるけれど、100日間は共通のテーマをしっかり進めて、その間は解散しないとか、不信任案を出さないとか。法律に書いてあるわけではないけれど、慣習的に共通な課題を解決するルールを作るべきで、その新しいルール作りに国民民主党はしっかり役割を果たしたい」。 (『ABEMA Prime』より)