自民党と連立政権を組むには議員定数の削減が譲れない条件だと言い切った、日本維新の会・吉村代表。与野党全ての議員生命に直結する問題だけに政界を大きく揺るがしていますが、自民党は吉村代表の要求を受け入れる方針を固めました。自民・維新の政策協議の当事者は共に「協議が大きく前進した」と述べています。
連立に向け協議“大きく前進”
総理に「絶対になってやる」と意気込む高市総裁と、党勢の低迷から抜け出したい維新の会。異なる思惑を抱えながら、両者は17日、再び顔を合わせました。連立政権の樹立を見据えた2回目の政策協議です。カメラが部屋を出てから、約1時間続いた協議。お互いに手応えを十分感じたようです。
「この協議全体として見た時には大きく前進したと捉えている」
(Q.合意に至ったか)
「まだ至ってはいないが、残されたところ、あとは限られた日数なのでしっかりと詰め切っていきたい」
野党3党の枠組みと天秤にかけていた維新は、自民との協議に一本化することを決めました。
「これ以上、野党側の枠組みを模索するのは非常に難しい。野党側の玉木代表や野田代表の名前を(首班指名で)書く形での連携は恐らく難しいということで、これ以上、協議を続けるのは非常に失礼にあたると結論に至って、私たちの方から幹事長から一区切りとさせていただきたいという旨をお願いしました」
もっとも、どのような形で“大きな前進”があったのかは明らかにされていません。にわかに「絶対条件」として浮上した国会議員の定数の1割削減については調整を続けることとなりました。吉村代表は17日新たに、比例代表の議席を削減すればいいという考えを示しています。
(Q.吉村代表は議員定数削減は『譲らない』『臨時国会でやるべき』と藤田代表も同じ?)
「同じです」
その後、夜になって自民党が定数削減に応じる方針であることが分かりました。高市総裁の周辺は「姿勢を見せる必要がある」などと述べているということです。
“検討”の歴史 実現可能性は
一方、協議打ち切りを通告された立憲民主党。野田代表は、こんなことを口にしました。
「党首討論という国民が見てる前で、相当数の議員定数削減を翌年の通常国会で実現しようと言っていたけれども、一票の格差の是正の範囲でそれを慌てて少しやったことはあったが、約束したことは履行されていません。国対同士で文書も交わしていました。文書交わしても守らなかった政党と約束しても信用しちゃいけない」
それは2012年のこと。
「ここで国民の皆さんの前に約束してほしい。定数削減は来年の通常国会で必ずやりとげる。決断をいただくならば、今週末の16日に解散してもいい」
しかし、野田代表が要求した大幅な定数削減は今も実現しないままです。
そもそも定数削減は、おいそれと進む話ではありません。溯ること27年。当時、自由党を率いてた小沢氏は、連立を求める自民党に対して、衆参ともに50議席を削減するよう突きつけ合意します。ところが、事態はその後、混乱を極め、最終的に国会で決まったのは衆議院のみ、比例区の定数を20削減するというものでした。この時、野党は採決を欠席しています。
「まことに残念なことでありました。国会は議論する場であります」
維新が功績として誇る、大阪府議会の大幅な定数削減には莫大な政治のエネルギーが費やされました。
「数の力だけで。ひどいよ」
「どこがひどいんですか。議場を開けて、会期を延長して。バリケードを張る方がひどいじゃないですか。昭和の時代じゃないんですから」
それでも削減案が通ったのは、維新が議会で単独過半数という強い力を持っていたからでした。
自民党内からも“異論”噴出
翻って今の政治状況。仮に自民と維新が連立を組んだとしても、衆参ともに過半数には届きません。そのうえ、臨時国会では物価高対策を始め、すぐに手を付けなければならない課題が山積しています。
(Q.吉村代表は『議員定数削減は譲らない』『臨時国会内でやるべき』と)
「臨時国会で決めるべきというのはあまりにも乱暴。比例区は少数意見の民意の反映で導入されました。比例部分だけを削減することは、私はそして公明党は反対」
疑問の声は自民党内からも。
「突然、維新さんが議員定数削減を言っているようですけれども、彼らの改革の一丁目一番地は“企業団体献金の禁止”では。ちょっと違和感を感じているのは事実」
超党派の選挙制度協議会で座長を務める逢沢氏は、SNSにこうつづりました。
「今、与野党で議員定数を含めて、あるべき制度を議論中。この状況のなか、自民・維新でいきなり定数削減は論外です」
懸念は定数削減以外にも。自民党本部を訪れたのは大阪の自民党議員です。
「大阪は維新の本拠地でもありますし、公明党との協力が大変深くあったところでもあります。我々の考えている思いなり何なりについても、ご理解をこの段階でいただくのがいいと思ってお伺いをした次第です」
去年の衆議院選挙。大阪では小選挙区に立候補した全員が維新に敗れました。その因縁の相手と選挙協力の可能性を含んだ連立を組むというのは、簡単には受け入れられない話です。
「ありようによっては、我々が心配すべき状況もちろんあると思う。自民党がちゃんと府民の声を代弁できる状況を、何らかの形で作っていく必要はある」
それでも進む維新との連立協議。自民党内には「2党だけで進められる話ではない」といった慎重な声もありますが、両党は週末、最終的な詰めの協議を行うことにしています。
維新の要求“のんだ”背景は
山本志門政治部長に話を聞きます。
(Q.吉村代表は「政治改革の1丁目1番地は議員定数の削減だ」と明言していました。自民党はこの要求に応じる方針、つまり維新の要求をのんだということですか)
「高市さんが仮に総理ということになれば、政権を安定させるために、維新との連立を優先する必要がありました。自民党内からは『2党だけでは決められない』と慎重な声もありましたが、定数削減の要望をのまざるを得ないという状況に、まさに自民党が追い込まれていたんだと思います。高市さんの周辺からは『姿勢を見せる必要がある』として、受け入れる方針に至った背景を説明しています。ただ、どういった形で自民党が受け入れるのかは、まだはっきりしていません。玉虫色だったり、協議体を作ることで先送りするという、ある意味、伝統的な自民党のやり方であれば、維新にとってストンと落ちるのは難しいと思います。ですから、どういった形で自民党側が対応を説明するのか、ここはもう少しみていく必要があると思います」
(Q.総理大臣指名選挙で、維新が『高市早苗』と書く可能性は高まりましたか)
「一気に高まったと思います。まだ詰まっていない部分、細かい部分の調整は残っているとは思いますが、ハードルの高かった議員定数の削減が前向きに進んだことに加え、維新側は『全体を見る』と言っていますので、総理指名選挙で『高市早苗』と書く可能性は高まったと言えます。17日の協議では大筋合意までには至らなかったと言っていましたが、裏を返せば、大筋合意に近付いたということでもあります。連立に向けた弾みはついたんだと思います。ただ、社会保険料の引き下げなど難しい問題もありますから、もう少し協議の状況を見る必要があります。仮に連立合意に至らなくても、閣僚を出さずに政策に協力していく、閣外協力という選択肢もあります。年内は様子見するという選択肢もあります。ただ、今の自民と維新の前向きなベクトルを考えますと、完全に破談する方向には向かっていないと思います」





















