21日、自民党の高市総裁が第104代内閣総理大臣に就任し、高市内閣が正式に発足した。「強い日本をつくる」と強調した高市早苗総理(64)だが、臨時国会をどうかじ取りしていくのだろうか?
「高市カラー」で注目の2閣僚
まずは、高市内閣の顔ぶれを見ていく。
高市総理を含む19人のなかで特徴的なのが、初入閣が多いことだ。平口洋法務大臣(77)や松本洋平文科大臣(52)など10人と半数を超え、石破内閣が発足した当初の13人には及ばないものの一定の刷新感がある人事となっている。
そして、総裁選を争った候補の処遇が注目されたが、林芳正氏(64)が総務大臣、茂木敏充氏(70)は外務大臣、小泉進次郎氏(44)は防衛大臣に起用された。
総裁選を争ったもう1人、小林鷹之氏(50)はすでに党の政調会長に起用されているので、これで全員が党役員か大臣で処遇されたことになる。
なかでも特に「高市カラー」が出ているというのが、2人の女性閣僚だ。
女性で初めて財務大臣に起用されたのが、総裁選で高市総理の推薦人となった片山さつき参院議員(66)。片山氏は旧大蔵省(現在の財務省)出身で、政府予算を査定する主計官を女性で初めて務めるなど、財務省の考えや政策決定プロセスをよく理解している。
ある元財務官僚は「片山さんはどこに予算が余っているか分かる」として、財務省は警戒しているという。
出身の財務省は財政規律を重視することで知られているが、片山氏自身は高市総理の持論である積極財政を重視するとしており、高市内閣の経済・財政政策をどうかじ取りするのかが注目されている。
そして高市内閣の閣僚としては最年少の小野田紀美参院議員(42)は、経済安保担当大臣と今回新設された外国人政策担当大臣に起用された。
小野田氏はアメリカ・イリノイ州生まれで、参院当選2回での抜擢となっている。考え方など高市総理に近く、保守的な言動でも知られていて、今回高市総理が力を入れる政策を兼務することになった。
またアメリカ・トランプ大統領との会談が来週に迫るなか、対米重視の姿勢も見える。
石破内閣でトランプ政権との関税交渉を担当した、旧石破派で石破氏の最側近ともいわれる赤沢亮正氏(64)は、先月10日に番組に出演した際には「大将軍(石破前総理)が城を明け渡すということなので、引き継ぎを終えたら“喪に服す”しばらく次をどうするか考えたい」としていたが、今回、経済産業大臣に横滑りした。
茂木外務大臣も含めてトランプ大統領と面識がある2人を閣内に置くことで、トランプ政権との安定的な関係をつくるという、対アメリカシフトとみられている。
総理官邸で異例の人事も
総理官邸の人事を見ていく。まず総理とバッテリーを組むといわれるのが、官房長官の木原稔氏(56)だ。
木原氏は旧茂木派で衆院当選6回。総裁選の決選投票で高市総理を支持していて、高市総理と近いとされている自民党保守派の中核的な存在とされ、岸田政権で防衛大臣を務めるなど安全保障政策に精通している。
そして、その官房長官を支えるのが官房副長官の3人。政務担当の副長官が尾崎正直衆院議員(58)と佐藤啓参院議員(46)だ。いずれも総裁選で高市総理を支援した2人となる。
また、事務方の副長官には元警察庁長官の露木康浩氏(62)が起用された。この事務方の官房副長官は官僚機構のトップに位置づけられていて、官邸主導といわれた第2次安倍政権以降は警察庁出身者が起用され、石破政権で13年ぶりに旧自治省(現在の総務省)出身者に代わったが、これを安倍政権時代の形に戻したといえる。
そして今回注目されているのが、総理にアドバイスをするブレーンともいわれる総理補佐官の人事だ。
今回任命されたのは5人で、元自衛官の尾上定正氏(66)は、通常与党の国会議員が就くポストで異例の人事となっている。
また、連立を組む「日本維新の会」から遠藤敬国対委員長(57)が連立合意を推進する担当として就任した。遠藤氏は高市政権と維新との連絡にあたるとみられている。
遠藤氏は「秋田犬保存会」の会長として当時、ロシア女子フィギュア・スケートの選手だったザギトワ氏に秋田犬「マサル」を贈ったこともある。
臨時国会は与野党激突へ
臨時国会では、与野党の激しい攻防が予想されている。
自民党と日本維新の会との政策協議のなかで維新は議員定数の削減を打ち出していて、削減の対象は比例代表を想定して衆議院の定数が現在465人だが、その1割にあたる50人ほどを削減すると主張していた。
ただ、自民と維新が結んだ連立の合意書では、国会議員の定数削減については「1割を目標に衆議院定数を削減する」としていて、この臨時国会で議員立法案を提出して成立を目指す、としているが、優先事項としつつも「比例代表」という言葉はなく「目標」「目指す」などの表現が使われている。
ただ、議員定数削減には自民党内から異論も出ている。
超党派の選挙制度協議会で座長を務める、自民党の逢沢一郎選挙制度調査会長(71)はSNSで「身を切る改革、イコール議員定数削減ではない」「自民・維新でいきなり定数削減は論外」だと発言している。
また、衆院議員24人のうち20人が比例選出の公明党からは斉藤鉄夫代表(73)が「小選挙区だけではすくいきれない民意の反映を目的とするのが比例区」だと強調し「特定の政党間だけで決めるのは極めて乱暴だ」と反発を強めている。
高市新政権の「物価高対策」は?
高市政権は物価高対策で何を実現しようとしているのだろうか。
自民党は「現金給付」は行わないとしていて、物価高対策として高市総理は自治体向けの重点支援交付金を拡充し、実情に合った支援をすみやかに実施するなどとしてきた。維新が主張して合意文書に盛り込まれたのが、電気・ガス料金の補助で、年内にまとめられる物価高対策に加えられる見通しだ。臨時国会でこれを含む補正予算を成立させるとしている。
電気・ガス料金の補助は2023年から断続的に実施されてきたもので、今年でいうと7月〜9月の使用分に限って再開されていて、一般家庭で月1000円の負担が軽減された。これまでに投じた予算は4兆6000億円を超えている。
また、維新との合意文書に盛り込まれたガソリン暫定税率を年内に廃止するとしている政策については、1リットルあたりおよそ25円分が減税されることになり、高市総理は総裁に就任した時の会見で、「ガソリンに加えて軽油も対象とする」との考えを示している。
ただ、財源も課題となっている。ガソリン・軽油合わせて年間1兆5000億円規模の税収減が見込まれるが穴埋めの財源は決まっておらず、高市総理は総裁選のなかで税収の上振れ分を充てる考えを示しているが、「必要とあらば国債の発行はやむを得ない」とも発言している。
こうしたなかで連立合意文書では歳出改革も打ち出している。
それが新設するとしている「政府効率化局(仮称)」で、トランプ政権の政府効率化省(DOGE)に名前が似ているが、企業に対する特例的な減税である租税特別措置や高額補助金を見直し、政策効果の低いものは廃止するという。
ここで取り上げられている租税特別措置には、例えば賃上げを促進した企業への減税や研究開発を進めた企業への減税などがあり、2023年度の租税特別措置による減税額は2兆9000億円だという。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年10月22日放送分より)