“高市カラー”が強くにじむ船出となりました。自民党内のバランスに配慮しながらも、閣僚ポストは石破内閣の時からガラリと変わりました。高市総理大臣が「決断と前進の内閣」と名付けた新内閣、22日から本格始動です。高市総理も自ら精力的に動きました。
『安保3文書』改定に意欲
22日午後9時過ぎ、副大臣と政務官の人事が決まり、官邸では記念撮影が行われました。これで高市政権の全ての布陣が固まったことになります。このうち、裏金問題に関与した議員は副大臣で4人、政務官で3人登用されました。
高市政権は22日から本格始動。そのスタートは慌ただしい形となりました。
「北朝鮮が弾道ミサイルを発射したと韓国の発表がありましたので、予定を変更して今、状況の報告を受けました」
北朝鮮による弾道ミサイルの発射は5月8日以来。飛距離は約350キロと推定されています。こうした安全保障環境を踏まえ、高市総理が最優先課題の1つとして挙げているのが『安保3文書』の改訂です。
午後、防衛省で着任式に臨んだ小泉防衛大臣。幹部を集め、こう訓示しました。
「あらゆる選択肢を排除せず、抑止力・対処力を向上させる方策を検討していかなければならない。厳しい安全保障環境を踏まえ、緊迫感をもって、高市総理が訴えてきた戦略3文書の見直しを検討する必要がある」
ここで言う3文書とは『国家安全保障戦略』『国家防衛戦略』『防衛力整備計画』のこと。2022年に策定され、防衛費の目標をGDP比2%に増額することなどが盛り込まれました。それを改定するということは、防衛費をさらに増やし、GDP比“2%以上”にすることを意図している可能性があります。また、現在は保有していない原子力潜水艦の議論にも道が開かれます。
「どれかに決め打ちではなく、現時点で潜水艦の次世代の動力の活用について考えていく」
茂木外務大臣は就任会見で、こうした方針を27日に来日するトランプ大統領に伝える考えを明らかにしました。
「わが国の方針・取り組みについて、米側にもしっかりと伝えていきたい」
そのトランプ大統領と、もう1つの大きなテーマとなりそうなのが“関税”です。ワシントンに足しげく通っていた赤沢氏は経済産業大臣に横滑りしました。交渉相手の1人だったラトニック商務長官からは、こんな言葉を掛けられたといいます。
「赤沢が寝る前にどうしてもお祝いを言いたいと連絡がきた。電話がかかってきて『コングラチュレーション』と。商務省の長官と経産省の大臣はある意味、正式のカウンターパート。そういうことを申し上げて、お互いによかったねと」
ただし、今後の交渉は茂木大臣が全体を取りまとめ、赤沢大臣は約80兆円の対米投資の調整を主に担うということです。
外国人政策 コメ価格は
初入閣の小野田大臣は、前任の城内大臣から引継ぎを受けました。
「高市新総理を一緒に」
「支えてまいりましょう」
「すごいんだよ。私の前任が高市さん」
「その前がコバホーク」
「3代4代だからね」
新設された“外国人政策”の担当でもある小野田大臣。会見ではこう力を込めました。
「一部の外国人による犯罪や迷惑行為、各種制度の不適切な利用によって、国民が不安や不満、不公平感を感じているのが現状。それを排外主義に陥ることなく、外国人との秩序ある共生社会に向けた施策を総合的に推進する。そのために必要な推進体制の強化を図るようにと指示をいただいた」
引継ぎは農林水産省でも。小泉大臣の後を継ぐのは、農水官僚出身の鈴木大臣です。
「今後のメディア対応のあり方も、ぜひご指導いただけたら」
「あんなにいっぱいやらない方がいいですよ」
ただ、その後の会見では、小泉大臣が進めた政策の継続に慎重な姿勢を示しました。
(Q.米価高騰対策としての増産や備蓄米放出は行わない)
「基本的にはおっしゃる通り。農水省が価格にコミットすることは、政府という立場もあり、すべきでない」
今後のコメの価格がどうなるかは見通せません。
気がかりなことは他にも。北海道の養鶏場で今シーズン初の鳥インフルエンザが確認されたことを受け、官邸では緊急の関係閣僚会議が開かれました。
「政府一丸となって緊張感を持った万全の対応をお願いします」
状況次第では卵の価格がさらに上昇する可能性があります。
求められる“巨額財源”は
一方、国会では与野党が高市総理の掲げる物価高対策の1つ、ガソリン減税をめぐって議論。自民党はガソリンの暫定税率を廃止する法案を来年2月1日に施行し、それまでは補助金で対応するという案を示しました。
もっとも、こうした物価高対策に必要な巨額の財源をどう確保するのかという問題は解決していません。加えて、防衛費を増額するのであれば、そのための財源探しも求められます。そのかじ取り役として財務省に送り込まれたのが、積極的な財政政策を掲げる片山財務大臣です。
「財政運営につきましては責任ある積極財政、この考え方に基づく経済・財政運営を行って、力強く経済再生・日本再生を進めていくなかで、財政健全化との両立を図っていきたい」
話は財務省が財政健全化に重点を置き過ぎだといった批判の声が広がったことにも及び、職員に対して意識の転換を求めました。
「“ザイム真理教”ということでデモが起きることになる対応になってしまっていることは、それは未来への希望、将来につなげるとか、国に対する本当に見識あるスタンス、そういう設計に政策の方向や打ち出しを持っていくことをできていなかったのかなと」
“物価高対策”いつ実現?
21日の総理就任会見で、高市総理が「最優先で取り組む」としていた経済対策を見ていきます。
【ガソリン暫定税率の速やかな廃止】
現在、1リットルあたり25.1円かかっている暫定税率について、自民党は22日、廃止する法案を来年2月1日に施行する案を示しました。暫定税率が廃止されるまでの間にも同額の補助金を支給して値下げを促す方針です。
【電気・ガス料金】
補助金は先月分で打ち切られましたが、冬場に向けて支援するとしています。
【高校無償化・給食費無償化】
制度設計の議論を進め、来年4月から実施するとしています。
総理が全閣僚に「指示書」
また、高市総理から全ての新閣僚に対し“指示書”という形で、政策をどう進めていくかが提示されました。38ページ、びっしりと指示が書かれています。
(Q.こういう“指示書”が出るのは珍しいですか)
「組閣のたびに総理指示が出るのは普通のことですが、このように具体的なものが我々の目に触れる形で出てくるのは、記憶にないです」
新閣僚への指示を見ていきます。
【片山さつき財務大臣への指示】
「『責任ある積極財政』の考え方に基づく経済・財政運営を行う」など
片山財務大臣は「(予算を)つけるべきところには、財政うんぬんを言わずにがっちりつけて、実際に経済を大きくしていく」としています。
【茂木敏充外務大臣への指示】
「関税措置に関する日米間の合意の実施を含めた米国との調整に関係大臣と協力して取り組む」など
茂木外務大臣は「かつて日米貿易交渉を担った経験も踏まえて、合意の誠実かつ着実な実施に努めていきたい」としています。
【小泉進次郎防衛大臣への指示】
「国民の命や暮らしを断固として守り抜くため、国家安全保障戦略等に基づき、防衛力の抜本的強化に取り組む」など
小泉防衛大臣は「これまで以上に強い危機感と切迫感をもって、我が国の独立と平和、国民の命と平和な暮らしを守り抜いていくための取り組みを進めていくことが必要」としています。
【小野田紀美経済安保・外国人政策担当大臣への指示】
「国土の適切な利用・管理など、外国人との秩序ある共生社会に向けた施策を総合的に推進する」など
小野田大臣は「一部の外国人による犯罪や迷惑行為などで、国民が不安や不公平を感じる状況が生じている。外国人をめぐる情勢に十分対応できていない制度・施策の見直しを含めた様々な課題について、政府一体となって総合的な検討を進めていく」としています。
また、官邸の人事にも“高市カラー”を打ち出していて、安倍政権で総理秘書官などを務めた今井尚哉氏を内閣官房参与に起用。外交・安全保障の司令塔『国家安全保障局』のトップも異例の短期間での交代に踏み切り、安倍政権で官房長官秘書官を務めた市川恵一氏を充てる人事を決定しています。
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