発足したばかりの高市政権ですが、波静かな船出とはいかないようです。ガソリン減税などをめぐっては、野党側から矢の催促、また、週明けに迫ったトランプ大統領の日本訪問に向け、態勢固めに追われています。
ガソリン減税 年内実施は困難?
高市政権、始動3日目。早くも難しい状況に直面しています。ガソリン税に上乗せされる暫定税率廃止に向けた協議で、立憲・国民・共産・参政・社民・保守の野党6党が会談。野党側は、あくまでも年内のできるだけ早い時期に施行すべきとの立場です。
「自民党の長きにわたる政局、内向きの政局に明け暮れた、いわゆる政治空白を作ってきた自民党の責任であります。高市さんのリーダーシップに期待しているが、早速、期待外れにならないように高市総理には頑張ってもらいたい」
一方、自民党は来年2月1日の施行を主張しています。それまでの間、自民・維新・公明の3党は、来月から段階的にガソリンの補助金を引き上げ、年内には暫定税率を廃止した場合と同じ支払額になるよう、1リットルあたり25.1円の補助金を投入する案で合意しました。
「下がったら同じなんじゃないか。暫定税率の廃止の法案を採決する日が目的になってる。国民はそうじゃないと思う。『早く下げてくれよ』というのが国民の声だと思う」
自民と国民民主の幹事長会談では、国民民主側が暫定税率の年内廃止などについて訴えました。
(Q.2月1日まで引き延ばす理由について)
「2月1日?」
(Q.2月1日施行にする理由について)
「2月1日ってどなたが言ったんですか」
(Q.施行日を引き延ばす自民党案が出ている)
「鈴木幹事長からはそんな話は聞いてません」
(Q.補助金ではだめだと言ったが、消費者から見ればガソリン減税でも補助金でも変わらないという意見も)
「哲学が全然違うね。これ約束だからね。25円10銭、暫定税率やめるのは。国民との約束です」
「財源の話もあり、ガソリンスタンドなど現場での混乱を回避することは、しっかりクリアしておかなければならない」
拉致問題 日朝首脳会談に意欲
高市総理は午後、拉致被害者家族と向き合いました。
「2002年に5名の拉致被害者が帰国されて23年になります。その間、拉致被害者の帰国、お一人も実現していません。ご家族が悲痛な訴えを続けながら、肉親との再会を祈るしかなかった。この状況、大変申し訳ないことだと存じます。なんとしても突破口を開くべく、取り組んでまいります。金正恩委員長との首脳会談に臨む覚悟もできています」
「1人の子どもをお腹において、一生懸命に育てて、赤ちゃんが生まれて、一生懸命に大きくして、ようやく明るい元気な子どもになったというところで、煙のように消えてしまった娘ですが、なんとか祖国に、日本の土を元気な間に踏んで、家族と再会できるように、どうぞよろしくお願いします」
高市総理は家族会ができてから14人目の総理大臣。2002年、初の日朝首脳会談を経て、5人の帰国が実現しましたが、総理が変わるたびに「1日も早い解決を」というものの、目立った進展もなく、時だけが過ぎていきました。そして、有本恵子さんの父・明弘さんが今年2月に亡くなり、帰国できていない拉致被害者の親世代は横田早紀江さん1人になりました。
「非常にしっかりとした方なので、色んなところも通って勉強もしてらしゃる方なので、きっとご自分なりに、今までこれではダメだったんだなということも分かっていらっしゃる。きっと何か考えて動いてくださるのではないかと期待しています」
経産&警察出身の官僚を重用
そして、人事面でも安倍カラーが色濃くにじみます。今回、国家安全保障局長に市川恵一氏を起用。市川氏は安倍元総理が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」など、外交戦略の立案に関わった経験があります。さらに、官房副長官に露木康浩前警察庁長官を、総理秘書官に飯田祐二前経産次官をあてるなど、警察庁と経産省の官僚を登用する人事は、安倍元総理時代の“官邸主導”を彷彿(ほうふつ)とさせます。
防衛費増額 今年度中に前倒し
安倍流を踏襲する高市総理が臨む24日の所信表明。その原案が見えてきました。物価高対策として、ガソリン暫定税率廃止など。防衛費については、安全保障環境の変化があるとして、2027年度に対GDP比2%に増額する目標を今年度中に前倒しする方針です。
日米会談 さらなる増額要求も?
この所信表明を乗り切った高市総理に待ち受けるのが、週明けの28日に予定されるトランプ大統領との会談です。
「まずは世界の中、真ん中で咲き誇る日本外交。これを取り戻すために、日本が何をやりたい国なのかしっかりと発信をしてまいりたい」
高市総理にとって“防衛費増額”の前倒しは手土産となる可能性もありますが、日米首脳会談では、さらに高いボールが投げ込まれるかもしれません。アメリカ国防総省は、日本を含むアジアの同盟国に対し、防衛費をGDPの5%に引き上げる必要があるとの認識を示しています。
「アジアの同盟国は欧州を新たな手本にすべきです。NATOはドイツでさえGDPの5%を防衛費に充てると約束したのに、アジアの防衛費が少ないのはおかしい。より深刻な脅威に直面しているはずだ」
高市総理の外交デビューは26日、マレーシアで行われるASEAN首脳会議。これを皮切りに、重要な外交日程が続きます。
“強い官邸”へ 安倍政権を参考
高市総理を支える官僚、官僚OBによる官邸スタッフの顔ぶれに、かつてないほどの関心が集まっています。安倍政権時代に、官邸で外交と安全保障政策を担当し、安保法制を練り上げた、兼原信克さんに聞きました。
「安倍政権のような官邸主導=“強い官邸”を作ろうとしている」
まずは官邸のアドバイザー的な人事では、内閣官房参与に今井尚哉氏を器用。政務秘書官として安倍総理を支えた“最側近”です。また、内閣特別顧問には秋葉剛男氏。外務省幹部として安倍政権を支えた“外交・安全保障のスペシャリスト”です。
千々岩官邸キャップによると、高市総理は、官邸主導と言われた安倍政権をよく知る2人からアドバイスを受けているということです。
また、実務を担う役目では、外交・安全保障の司令塔である国家安全保障局長に市川恵一氏を起用。安倍氏が提唱した“自由で開かれたインド太平洋”構想の立案に携わっています。インドネシア大使として赴任する人事が今月決まっていましたが、高市総理がそれを覆し、抜てきしました。高市総理は就任会見で「自由で開かれたインド太平洋を外交の柱として引き続き力強く推進する」と話していましたが、まさに安倍外交を参考に政策を実行していくために市川氏を起用したとみられます。
「総理大臣自身が外交・安全保障の司令塔になる必要がある。外交・安全保障は官邸が強くないと総理のビジョン通りに進まない。安倍官邸というのは“史上最強の官邸”。その時の官僚をそろえたということで、高市さんとしては、いきなりスタートダッシュをかけたいということではないか」
トランプ氏と関係作るには?
(Q.来週にはトランプ大統領も来日します。安倍元総理はトランプ大統領と親密でしたが、高市総理とトランプ氏の関係性はどうなりそうですか)
「安倍元総理は、日本がどれだけ重要かトランプ大統領に刷り込んできた。味方が誰もいない時にニューヨークに会いに行き『シンゾーは友達だ』とトランプ氏に思わせた。高市氏は自分が『安倍氏の後継者』『保守の代表』とアピールしていけば、うまくいくと思う」
























