政治

報道ステーション

2025年10月28日 02:16

来日のトランプ大統領が陛下と会見 あす首脳会談…防衛費増額 高市総理どう臨む?

来日のトランプ大統領が陛下と会見 あす首脳会談…防衛費増額 高市総理どう臨む?
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アメリカのトランプ大統領が27日、6年ぶりに来日しました。

到着直後に天皇陛下と会見

午後2時、東京都内はすでに厳戒態勢。警視庁が、最大約1万8000人態勢で警備にあたります。

木原官房長官

午後5時ごろ、大統領専用機『エアフォースワン』が羽田空港に着陸しました。
タラップを下りるトランプ大統領。その表情には、少し疲れも見えるようです。さっそく、木原官房長官やグラス駐日大使などに出迎えられました。

マリーンワン

その足で向かうのは、大統領専用のヘリコプター『マリーンワン』。羽田空港から約20分をかけ、東京・港区にあるアメリカ軍のヘリポートへと移動しました。そして、大統領専用車『ビースト』に乗り換え、皇居へ向かいます。

天皇陛下

午後6時過ぎ。大統領は、車から降り、笑顔で両手を広げると、感慨深げに天皇陛下の手を力強く握りしめました。

約30分にわたる会見。

天皇陛下

ドジャースの大谷翔平選手の活躍について、天皇陛下が「大統領が、大谷選手を評価する発言をされていることを、大変、うれしく思った」と触れられると、トランプ大統領は「ピッチャーも良かった。日本は、最近、良い選手をメジャーリーグに送り込んでいる」と返したといいます。これに対し、陛下は「日本人の選手がアメリカ社会で温かく受け入れられ、感謝している」などと述べられたということです。最後に、トランプ大統領から「ぜひ、ホワイトハウスに来てください」と招待を受けると、陛下は、感謝の意を示されたということです。

トランプ大統領

会見を終えて、トランプ大統領は、天皇陛下に「ありがとうございました」と伝え、「グレートマン、グレートマン」と繰り返しました。

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6年前の“おもてなし外交”

ゴルフ外交

6年前、令和初の国賓として来日したトランプ大統領。
当時、安倍総理自らがカートを運転するなど、“ゴルフ外交”を徹底。現職のアメリカ大統領として、初めての大相撲観戦では『大統領杯』を手渡す見せ場を作るなど、異例の“おもてなし”を重ねました。夜は、炉端焼きを囲んで。

アメリカ トランプ大統領(2019年)
アメリカ トランプ大統領(2019年)
「(安倍)総理と私は、貿易や軍などに関して多く話をした。非常に生産的な日になったと思う」
安倍晋三総理(当時・2019年)
安倍晋三総理(当時・2019年)
「ゆっくりとリラックスしながら、議論を行いたい、意見交換をしたい」
貿易交渉をめぐる警戒感

日本側には、当時、行われていた貿易交渉をめぐり、トランプ大統領が難題を突き付けてくるかもしれないとの警戒感がありました。しかし、ふたを開ければ、この来日で何かが決まることはなく、アメリカ側の要求を聞き置いた形となりました。

それから6年。安倍外交を継承するとしている高市総理にトランプ大統領は、こう述べました。

アメリカ トランプ大統領
アメリカ トランプ大統領
「素晴らしい話を聞いている。高市総理は、私の友人・安倍元総理の偉大な盟友だった」
日米首脳会談

28日に開かれる日米首脳会談。
関税合意実施を確認する文書や、レアアースなど、重要鉱物に関する覚書に署名する方向で調整されています。

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高市総理の“外交デビュー”

週末、1泊3日の“弾丸日程”で、外交デビューした高市総理。27日早朝、マレーシアから帰国しました。

自由で開かれたインド太平洋

高市総理は、26日、ASEAN=東南アジア諸国連合との首脳会議に出席。冒頭3分ほどを英語でスピーチ。安倍元総理が提唱した『自由で開かれたインド太平洋』の重要性を強調しました。

高市早苗総理(26日)
高市早苗総理(26日)
「来年は、安倍元総理が2016年に『自由で開かれたインド太平洋(FOIP)』を提唱して10年になります。この機会に日本外交の柱として改めて位置づけます」
初の電話会談

実は2日前、来日を前に初めての電話会談に臨んでいた日米首脳。2人の共通項は、やはり安倍元総理だったようです。

アメリカ トランプ大統領(25日)
アメリカ トランプ大統領(25日)
「(Q.電話会談はどうだった)とてもよかった。彼女は偉大で美しい。まもなく会う予定。彼女は安倍元総理の盟友だった。知っての通り、安倍氏は私のお気に入りの一人で偉大な男だった」
高市早苗総理(25日)
高市早苗総理(25日)
「(Q.トランプ大統領の印象)とても快活で、楽しい方だなと。私のこともよく認識をしていて、『安倍総理がとても気にかけていた政治家であることも知っている』と。安倍昭恵夫人に対しても、大変なお心遣いいただいて、その友情に感謝している旨をお伝えしました」
プレゼント

今回の来日では、安倍氏が生前使っていたゴルフクラブなどがプレゼントされる予定です。
また、昭恵さんとも面会する方向で、調整が進められています。

高市早苗総理(27日のXから)
高市早苗総理(27日のXから)
「トランプ大統領、ようこそ日本へ!あすお会いし、偉大な日米同盟を、一緒に一層強化していくための議論ができることを楽しみにしています」
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高市総理はどう対峙

28日に行われる日米首脳会談。トランプ大統領は日本側に何を求めてくるのか。そして、高市総理はトランプ大統領にどう対峙するのか。ワシントン支局の梶川幸司支局長と政治部の千々岩森生官邸キャップに聞きます。

ワシントン支局 梶川幸司支局長

(Q.日米首脳会談で、アメリカ側はどのような要求をしてくると思いますか)

ワシントン支局 梶川幸司支局長
「予測の難しいトランプ大統領のことですから、フタを開けてみないことには何が飛び出すかは分かりませんけれども、3つの可能性があるとみています」

(1)巨額の対米投資
(2)防衛費の増額
(3)ロシア産エネルギーの輸入停止

米側が要求?“対米投資”

巨額の対米投資

『巨額の対米投資』は、今年7月に合意した日米の関税交渉の約束です。日本への相互関税率は当初の25%から15%に引き下げられました。一方、日本はアメリカに対し、自動車・半導体・エネルギーなど9つの分野に5500億ドル(約80兆円)投資すると約束しました。

ワシントン支局 梶川幸司支局長
ワシントン支局 梶川幸司支局長
「トランプ大統領は関税によって世界から巨額の投資が舞い込んだと、演説するたびに必ず言っていて、政権の最大の実績としてアピールする思惑があります。巨額の対米投資について“約束はちゃんと守るよね”という念押しを今回やりたいと思っているでしょう。例えばエネルギーや造船といった分野で、最初の案件を早く決めたいという思いがあると思います。来年にはアメリカの中間選挙が控えているので、巨額の投資が着実に実を結んでいることを国民にアピールしたい。アメリカの専門家は『トランプ大統領は忍耐力がないから、日本が具体的な投資を早く打ち出すことが肝要だ』と話していました」

米側が要求?“防衛費増額”

防衛費の増額

2つ目の『防衛費の増額』。現在、日本の防衛費はGDP比1.8%。高市総理は先週、今年度中にGDP比2%に増額する方針を表明しました。

ワシントン支局 梶川幸司支局長

(Q.高市総理は先週、防衛費をGDP比2%に増額する方針を示したばかりですが、トランプ氏はさらなる増額を求めてきますか)

ワシントン支局 梶川幸司支局長
「トランプ大統領はかねてから、日米安保条約を『アメリカばかりが負担する不平等なものだ』という持論を述べて不満を示してきました。これは日本だけではなく、今年6月にはNATOに加盟するヨーロッパ諸国に対して、防衛費を増額するように圧力をかけました。その結果、NATOは2035年までに防衛費をGDP比5%に引き上げる新たな目標で合意しています。日本には水面下でGDP比3.5%への増額を求めているとされます。国防総省の高官は『今のNATOの水準が世界標準になる』と言っていて、中国の脅威に直面するアジアの同盟国こそ、急いで防衛費の増額を達成すべきだという認識を示しています。ですので、防衛費の増額を求めてくる可能性は十分にあります」
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“防衛費増額”高市総理どう臨む

政治部 千々岩森生官邸キャップ

(Q.トランプ大統領が防衛費の増額を要求してきた場合、高市総理はどう向き合うのでしょうか)

政治部 千々岩森生官邸キャップ
「これは日本が最も身構えているポイントです。政府内では見方が混在していて、“就任したばかりの総理大臣にいきなり言ってこないだろう”、もう1つは、言われた後に公開するかは別としても“トランプ大統領が今回、要求してくる可能性は高い”という見方があります。だからこそ、高市総理は2つ準備しています。1つは、防衛費GDP比2%への引き上げの前倒し。もう1つは、安全保障に関する3つの文章を改定する。つまり、防衛力をより現代化して強化していく。これは裏を返すと、防衛費をGDP比2%からさらに引き上げることを暗に示しています。さらにもう1つ言うと、NATOの話にヒントがあります。NATOのGDP比5%の内訳を見ると、3.5%は防衛費ですが、1.5%インフラ整備などを乗せます。日本も幅広い要素を防衛費に乗せて、より額を多く見せるやり方もあるんじゃないか。色んな策を模索しているのが現状です」

米側が要求?“対ロ制裁強化”

ロシア産エネルギーの輸入停止

3つ目の『ロシア産エネルギーの輸入停止』。日本企業が関わるサハリンでの石油・天然ガス開発事業で、日本は『サハリン2』からLNG(液化天然ガス)を輸入しています。この輸入量は輸入全体の約1割にあたります。トランプ政権はこのサハリン2に関する取引は対ロ制裁の対象外とする特例措置を講じてきましたが、12月19日に期限を迎えます。こうしたなか、ロシアに対する経済制裁の一環として、今月15日、ベッセント財務長官が加藤財務大臣に対し、ロシア産LNGの輸入を停止するよう求めました。

ワシントン支局 梶川幸司支局長

(Q.日本のロシア産エネルギーの輸入停止を、改めてトランプ大統領が要求する可能性はありますか)

ワシントン支局 梶川幸司支局長
「トランプ大統領は先週から、これまでの方針を転換して、ロシアの2大石油会社への制裁に踏み切りました。これは2次政権としては初めての本格的で直接的な制裁でした。これに呼応する形で、EUもロシア産LNGの禁輸を前倒しで実現することを決めています。ウクライナ停戦をめぐる、トランプ大統領のスタンスは二転三転を繰り返していますが、足元ではロシアへの圧力強化にモードが入っています。この局面で、高市総理にプレッシャーをかけるのは十分にあり得ると思います」
政治部 千々岩森生官邸キャップ

(Q.トランプ大統領がロシア産LNGの輸入停止を要求してきた場合、日本側はどう対応しますか)

政治部 千々岩森生官邸キャップ
「ロシアに対するアメリカのテンションが変わっていることは、日本政府も強く認識しています。交渉関係者を取材すると、『ロシア産LNG輸入停止を要求される可能性が高い』と覚悟しています。LNGの約1割がなくなると当然、光熱費の高騰を招きます。サハリンは近いので輸送コストは安いので、他から持ってくることになると高くなる。いずれにしても国民生活に直結します。ですから、日本政府としては、なんとか輸入を続けたいのが本音です。そこで日本側の理屈としては、もし日本が輸入を停止しても、その分を中国がロシアからLNGを安く買うだけで、制裁の意味がないと説得するなど、色んな策が講じられていますが、トランプ大統領に通じるかはやってみなければ分からない状況です」

アジア歴訪 最大の“関心”は

ワシントン支局 梶川幸司支局長

(Q.トランプ大統領は今回、色んな経済閣僚を引き連れての大掛かりなアジア歴訪になっています。トランプ大統領が日本に滞在する狙いはどこにあると思いますか)

ワシントン支局 梶川幸司支局長
「今回のアジア歴訪で、トランプ大統領にとって最大の関心事は中国・習近平国家主席との会談です。その大一番の会談を前に日本に来て、高市総理と会って、日米同盟の結束を確認する狙いがあります。それだけ日本を重要視していることの現れと言えます。ただ、2期目のトランプ政権はいまだに明確な対中国政策と呼べる方針が固まっている訳ではありません。これから中国とどう向き合っていくのか。日米でしっかりすり合わせることができるかどうかも重要なポイントだと思います」
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