政治

ABEMA NEWS

2025年10月28日 17:00

アメリカは台湾を中国に差し出す? 今後の日米関係に専門家「署名したら終わり、ではない」「アメリカ一本足打法は厳しい」

アメリカは台湾を中国に差し出す? 今後の日米関係に専門家「署名したら終わり、ではない」「アメリカ一本足打法は厳しい」
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 27日、アメリカのトランプ大統領が6年ぶりに来日。28日、高市早苗総理との日米首脳会談が行われた。会談内容や今後のポイントなどについて早稲田大学教授の中林美恵子氏に聞いた。

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 中林氏は会談について「双方様々な合意文書にも署名したが、トランプ政権1期目の主席補佐官によると『署名してからが交渉の始まり』であり、それが“トランプスタイル”だという。つまり、『署名をしたら終わり』ではないのだ」と説明した。

 レアアースなど重要鉱物に関する文書への署名については「特に重要鉱物はトランプ大統領が中国との関係も含めて非常に強い興味を持っているところだ。ここで日米協力するということは、交渉ではなく国家のあり方として合意したということだ」と説明。

 今回、署名の後に共同会見が行われなかった背景については「交渉の場は非常に難しく、簡単に『80兆円の(投資の)中身はこれです』と発表できるという状況ではないのだと思う。赤沢大臣が窓口になった合意交渉においても『文章がない』などという話になったが、80兆円の投資の中身はまだまだ議論の余地があるので難しいようだ」と解説した。

 高市総理とトランプ大統領の対面での初会談については「最初、高市総理はかなり緊張していたようだったが、トランプ大統領が安倍元総理の話をしてくれ、高市総理も安倍元総理との関係を冒頭から強調して非常に良い会話ができたのではないか。今回、初めて対面で会ったため、共通の大事な人物を話題にすることには意義があったと思う。ただし、今後そればかり言っているわけにはいかないので、これからが勝負ではないか」とした。

 高市総理は海外でも“保守的”と評されるが、そういった面でトランプ大統領との相性も良いのだろうか?

 中林氏は「2人ともパフォーマンスを得意とするタイプなので波長は合うだろう。ただし、“波長が合えば済む段階”の日米関係ではなくなってきている。アメリカが変わろうとする中で、日本の国益をどこまで追求・主張できるかが重要であって、かつて安倍元総理はトランプ大統領の個人的な関係を良くしつつ、“ゴリ押し”してくるトランプ大統領をかわしていた。とはいえ今はもう2期目。かわすだけでは難しく、いかに日本の国益に対してトランプ大統領を引きずり込むかという力が重要になってくる」と述べた。

 防衛費に関するやり取りについては「防衛費はトランプ大統領が抱えている最も重要なポイントの1つだ。防衛費については特に同盟国に対して厳しく対峙しており、日本も例外ではないはずだ。ヨーロッパには既に(GDP比)5%の要求を突きつけており、日本もそれを免れることはおそらくできないと考えた方がいい。しかし、急に日本が(GDP比)3.5%に引き上げるということは、日本の財政や国民意識の中で大きな負担が生じる。そのため、総理の手腕としてはアメリカが求めていることは分かっているので、それをどう時間的に猶予をもたせ、なおかつトランプ大統領を怒らせることなく説得できるかだ」と解説した。

「アメリカにだけついていけばいいは過去のもの」

早稲田大学教授の中林美恵子氏

 さらに、中林氏によると、トランプ大統領は「自分の言葉で即答できる人」を好む傾向にあるという。

「トランプ大統領がいろいろな言葉で“吹っかけて”きたり、思いもよらない要求をしてくることがこれからある可能性が高い。それに上手に即答できるかだ。トランプ大統領は自分の言葉で喋れる人を非常に好む。したがって、いつまでも原稿を読む感じでは太刀打ちできない可能性もあるため、今から“爪を研いで”準備しておく必要がある」

 トランプ大統領から「タフ・ネゴシエーター」と評された茂木外務大臣もキーマンになるのか?

「茂木大臣は英語も非常に上手く、かなり頼りにすることはできると思う。茂木大臣は戦術的なこと、細かい問題について非常に詳しく計算できる人なので頼りになるだろう。また、赤沢経済産業大臣が石破政権の下でずっと交渉してきて、やはり本人にしかわからないこともたくさんあると思う。これをきちんと継承することも大事だろう」

 さらに中林氏は「トランプ大統領のアジア歴訪の最後のゴールは30日の米中会談だ」と強調した。

「今回のトランプ大統領のアジア歴訪は過去最長と言ってもいい。なぜ長い期間アジアにいるのかというと、30日に米中会談で貿易関係の話をするからだ。中国といえば、貿易だけではなく安全保障も非常に重要だが、今トランプ氏の頭の中は貿易・経済が中心だろう。トランプ大統領はASEANの会合でも『100%ASEANの皆さんと共にある』と“ぶち上げて”いた。これは習近平首席と対峙する時に『アジアも味方につけなければ』と気づいたのだろう。そして、日本と安全保障・経済、全てにおいてがっちり手を結んでいることをアピールすることによって、中国に対する無言のメッセージにもなる」

 アメリカにとってはレアアースも大きな鍵になるという。

 中林氏は「トランプ大統領はレアアースが中国から届かないと困る。アメリカの防衛産業・AI産業・製造業その他諸々、全部に影響を受けてしまう。それを受けて、ベッセント財務長官がなんとか中国に(レアアース規制を)『1年延期』させるよう働きかけたという。中国に対峙する時にそういう大きな問題を抱えているので、例えば『台湾を差し出す』『アメリカはもう台湾を守らないから中国からレアアースをもらう』などとなったら日本は困る。国連では『中国本土を中国の代表と認めて台湾は中国の一部』となっているがバイデン前大統領は『台湾は守る義務をアメリカは負っている』などと発言しているため、そこをどうするかだ。30日にトランプ大統領と習近平氏が一体どういうディールがなされるのか、日本にとっても不安要素となりうる」と述べた。

 さらに中林氏は「アメリカ一本足打法は厳しい」と主張した。

「日本はアメリカにだけついていけばいいというのはもう過去のものだ。どれだけアメリカにうまく打ち込めるか、こちらの欲しいものをどれだけ言えるか。そして、それをうまい具合に、トランプ大統領に誘導できるかというくらいの賢さと瞬発力があればいい。英語で自分の言葉でしっかりとトランプ大統領の心に響くことを打ち込めるようにしていくことが重要になってくる」

(ニュース企画/ABEMA)

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