政治

報道ステーション

2025年11月15日 01:07

“上”からの指示で大使呼び出し…高市氏発言に中国が強硬姿勢加速 今後の対応は?

“上”からの指示で大使呼び出し…高市氏発言に中国が強硬姿勢加速 今後の対応は?
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台湾有事をめぐる高市総理の発言に対し、中国は、連日、猛抗議しています。

今月、新型空母『福建』を就役させた中国。
リニアモーターを使って艦載機を加速する“電磁式カタパルト”が搭載されているのが特徴です。同様の仕組みをほかに持っているのは、アメリカ軍の最新空母1隻だけ。海上での作戦能力は、大幅に向上するとみられています。

福建

福建は、9月には試験の一環として、台湾海峡を通過していて、海上自衛隊は、監視の目を光らせていました。台湾有事の際には、福建も投入される可能性があり、自衛隊は、あらゆる事態に対応できるよう、備えを進めています。

だからこその発言だったのでしょうか。

高市総理(7日)
高市総理(7日)
「台湾を完全に中国・北京政府の支配下に置くようなことのために、どういう手段を使うか。いろんなケースが考えられると思います。だけれども、それが戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これは、どう考えても“存立危機事態”になりうるケースであると。実際に発生した事態の個別具体的な状況に応じて、政府がすべての情報を総合し判断する」
存立危機事態になりうる

「存立危機事態になりうる」ということは、日本も自衛隊を出動させて、武力行使に踏み切る可能性があるということ。台湾側は、発言を歓迎しています。

台湾 林佳竜外交部長(12日)
台湾 林佳竜外交部長(12日)
「考えてみてください。もし、中国の軍艦が包囲したら、宮古海峡の支配も試みるのではないでしょうか。まさに日本の領土です」
存立危機事態と台湾有事

しかし、歴代の政権が、存立危機事態と台湾有事を結びつけて発言したことはありません。
どういう場合に自衛隊が武力行使に踏み切るか、具体的に述べることは、手の内を明かすことにつながるからです。加えて、台湾に言及すれば、「台湾は自国の一部」と主張する中国からの反発は、避けられません。

中国外務省 林剣副報道局長
中国外務省 林剣副報道局長
「いかなる勢力も、中国統一の大業に干渉するのは、愚かな妄想で身の程知らずであり、必ず失敗に終わる。14億人の人民が血肉で築いた鋼鉄の長城に頭を割られ、血まみれになる」
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孫外務次官

13日夜遅くには、孫外務次官が、金杉大使を中国外務省に呼び出し、高市総理の発言を撤回するよう要求しました。日本政府を代表する特命全権大使が呼び出されるのは、そうあることではありません。

上からの指示

中国外務省は、金杉大使を呼び出したのは「上からの指示」だと述べています。“上”が誰を指すのかは明らかにされていませんが、相当、高いレベルで怒っているようです。

中国軍や中国外務省のSNS

さらに、中国軍や中国外務省のSNSには、日本語での警告が相次いで投稿されました。いずれも、日本側への発信を強く意識したものとみられます。

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日本は、今後、どう対応するのか。

高市総理(10日)
高市総理(10日)
「政府の従来の見解に沿ったもの、撤回、取り消しをするつもりはない。そのうえで、今後、反省点としては、特定のケースを想定したことについて、この場で明言することは、慎しもうと思っている」

こう述べて以降、発言のスタンスは変えていません。

茂木外務大臣
茂木外務大臣
「中国の主張は違っている。撤回する必要はない。それは当然のこと」
薛剣駐大阪総領事

事態をより複雑にしているのが、中国の薛剣駐大阪総領事が、高市総理の発言に反発し、SNSに「汚い首を斬る」などと投稿した問題。自民党外交部会と外交調査会は14日、合同会議を開きました。

自民党 高木啓外交部会長
自民党 高木啓外交部会長
「好ましからざる人物として、国外退去を求めていただきたい」
国光文乃外務副大臣
国光文乃外務副大臣
「中国に対して、引き続き、しっかりと適切な対応を強く求めてまいりたい」
部会

部会では、大阪総領事館が主催する行事への出席は、当面控えるべきだという意見も出され、今後、日中双方が態度を硬化させていく事態も予想されます。

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◆中国総局の冨坂範明総局長に聞きます。

冨坂範明総局長

(Q.中国側は、なぜ、ここまで強く反発しているのでしょうか)

冨坂範明総局長
「一言で言うと、習政権が極めてナーバスになっている台湾の問題に、現職の日本の総理大臣が、中国から見れば、軽々しく見えるような形で触れてしまったからだといえます。この台湾統一は、習近平国家主席が『核心利益中の核心』と述べるほどの“悲願”です。中国の統一という“物語”に少しの雑音もあってはならない。そういった気持ちが、非常に大きいと思われます。しかも、先月のAPECで、習主席と高市総理の面会が実現した矢先に、今回の台湾情勢への介入ともいえるような発言が飛び出しました。これは、習主席からすれば、メンツがつぶされた形になっているので、中国政府が、強硬な姿勢をとる原因につながっているとみられます」
冨坂範明総局長

(Q.中国側は、高市総理の発言の撤回を求めていますが、これは、本気と考えていいのでしょうか)

冨坂範明総局長
「振り上げた拳をおろすために、中国は、いま以上の『反省』『撤回表明』『謝罪』。そういったものを求めているとみられます。今年7月、日本と中国は、日本産牛肉の輸入再開に向けた合意にこぎつけましたが、このまま日本が『反省』『撤回表明』『謝罪』をしなかった場合、この日本産牛肉の輸入再開を見送る。もしくは、日本人のビザ免除制度の延長をやめるなど、さまざまなカードを対抗措置として持ち出してくる可能性も考えられます。こうした中国側の強硬な姿勢の背景には、高市政権がどこまで譲歩できるかを見極めるとともに、日本のほかの政治家にも『台湾に触れるとやけどをする』。そういったことを知らしめる狙いもあるとみられます」  

◆日本政府の反応について、政治部官邸キャップの千々岩森生記者に聞きます。

千々岩森生記者

(Q.日本政府として、これ以上、こじらせたくないという気持ちもあるのではないでしょうか)

千々岩森生記者
「おっしゃる通りです。14日夜、官邸サイド取材しますと、そろそろ沈静化したいという本音が見え隠れしています。高市総理の対中外交ですが、複数の側近は『高市総理はタカ派と言われるが、実際は、とても現実的だ』と指摘します。まさに、それが表れたのが、就任前後の動きです。秋の例大祭で靖国参拝を見送りました。所信表明では『中国は重要な隣国』だと。つまり、私は、これまでの政権と変わらないというメッセージを送った訳です。で、中国もこのメッセージを受け取りました。 先月31日、日中首脳会談が実現しますが、実は、1週間前の24日の所信表明の直後には、会談は、すでに決まっていました。日本側も『スムーズだった』と驚くほどでした。ここまでは、極めて戦略的な外交に見えました。ただ、その直後の発言だったわけです。高市総理は、予算委員会などで、自分の言葉で答弁する。 非常にわかりやすい。今回の発言も、総理としては、 当たり前のことを自分の言葉で伝えたという意識だったと思います。一方で、官邸や霞が関を取材して聞こえてくるのは、総理と役所側のコミュニケーションが少ないという声です。この台湾問題が機微に触れる案件だということが、どこまで全体で共有されていたか。これまでやってきた戦略的な外交の延長の発言だったのか。これが気になるところです」
千々岩森生記者

(Q.中国政府は発言の『撤回』を求めてきていますが、今後、高市政権はどう対応するのでしょうか)

千々岩森生記者
「台湾有事が存立危機事態になる可能性があるということ自体は、事実なので、政府としても撤回のしようがないです。高市総理は『政府の立場は変わっていない』と説明しますが、これは、すでに日本政府が中国側に何度も伝えていることで、複数の政府関係者が『今後もこの説明を続ける』と話しています。対中外交に携わる幹部は『中国との外交は、波風がつきもの。向こうの温度感を見極めて対応していく』と話しています。一つポイントは、来週末のG20だと思います。通常でしたら、中国の李強首相が参加しますので、首脳会談となるわけですが、これが実現するかどうか、一つ、直近の試金石だと思います」
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