11月に入り、コメの平均店頭価格は5キロ4316円と最高値を更新した。そんな中、高市内閣は1人あたり3000円のおこめ券を配布して、家計を助ける経済対策を発表。「コメ価格の高止まりを容認しているのでは」という指摘も出ている。
鈴木憲和農水大臣は需要に応じた生産を打ち出し、石破政権の増産方針を事実上撤回。それを批判されると「政府はコメの価格にコミットすべきではない。コメの価格に介入しないのは、政府が洋服の値段に介入しないのと同じだ」と発言し、炎上した。
ABEMA的ニュースショーではゲストとして石破茂前総理が生出演。「農政復古の大号令」だと批判していることについて問われると、「鈴木大臣がコメと洋服と一緒だと言われると、それは違う。主食なんだから。洋服とは商品としての性質がまったく違うという話」と切り出して、「ずっと生産調整、減反というのをやって『なるべく作らないようにしましょうね。値段を維持しておきましょうね』ということをやってきた。だからコストダウンとか面積あたりの収量を増やすとか、たくさんとれるお米の品種に切り替えるとか、そういうことを押さえてきたわけだ。それによって消費者が高いお米というものを『でも仕方がないよね』というところがあって、そこには莫大な税金が使われてきた」と経緯を説明。
「だけど考えてみたら自給率は38パーセント。昔から言うように『腹が減ってはナントカできない』みたいなことでね。だからウクライナにしても何にしても、最近の戦は長いんですよ。そのときに本当に自給率38パーセントでこの国やれますか?」と、有事の際に食料自給率が懸念事項になると指摘した。
さらに昨今のクマ問題についても言及し「森が針葉樹が多くなっちゃって、広葉樹が少なくなってクマのエサがなくなっちゃった。困ったなとクマが降りてくると、耕作放棄地ばかりで人がいませんと。それでどんどん降りてくる。人里に降りたらいろいろなおいしいものがあるみたいなことでね。いかにして食糧自給率を上げるか、いかにして山村の崩壊を防ぐか。中山間地の田んぼは、単にお米を作っているだけじゃない」「いろいろな政策目標があって、それの解決のためにコメ増産」と説明した。
続けて「いま世界中、ニューヨークでもパリでもそう。おにぎり屋さんが大人気。アジアも所得が上がってきた、そうすると日本のお米を食べたいなという人が出てくる。需要はある。だとしたら増産に踏み切って、国民の食糧に対する不安を払拭する、ということでやってきたわけで。なんでこの政策が変わるのか、私にはまだ理解ができない」と批判的に語った。
おこめ券については「おこめ券を配るよりも、経済的にまだ余裕がない人たちが望むときにリーズナブルな価格で、お米が手に入るようにすることのほうが大事じゃないですか。そこには税金投入しないんだから。おこめ券て税金が原資だからね。『国民の税金をどう使いますか』という話。おこめ券をもらえばうれしいだろう、だけどその原資はなんですか? 国民の税金でしょ。それよりはお米の供給に余裕があって、経済的に苦しい人でも今年の夏みたいに『でもお米ないなあ、お米高いよなあ』という状態を解消するほうがよっぽど、国民の税金の使い方として正しいんじゃないか」と、異論を唱えた。
ジャーナリストの青山和弘氏は「おこめ券3000円分というと、いま5キロ4000円台だから、5キロも買えない。そうすると高い値段のお米が残って、結局お米離れが進むし、いまこのぐらいの高値が続くと、輸入のほうが安いから輸入米がくると。そうするとますますお米の需要が、日本米の需要が減って。じゃあ減反というか、生産調整のほうにいくという悪い循環に入っていく可能性があると思う」と指摘。
石破氏は「13年前、私は麻生内閣で農林水産大臣をやっていて、同じことを言った。生産調整を見直せと。お米はもっと作れ、海外にもっと輸出しましょうということを言った」と明かして「そのときも私は史上最低の農林水産大臣と言われてね。自民党を出入り禁止になった」と回顧。
「それが結局今年の夏みたいな話になる」と続けると「今年の夏で最大のテーマって『コメが高い』じゃないですか。大変だったじゃない。だから国家として、国民が主食に不安を持つような、そういう事態を起こしてはいかんのですよ。お米に限らず穀物ってなんでもそうなんだけど、保存があまりきかないので、そうするとちょっとした供給とか需要の振れで価格がものすごく上がったり下がったりする。そういう商品なわけでしょ。そうするとある程度余裕をもっていくということをやるのは、これも国家の安全保障」と、重要な課題だと位置づけた。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
