政治

ABEMA NEWS

2025年11月25日 07:00

石破前総理「戦後80年所感」の真意とは?「政治家は感情に引きずられてはいけない」「中国・台湾の陸海空軍の能力、アメリカの意図、全部考えた上で日本の安全保障は立案されなきゃいかん」

石破前総理「戦後80年所感」の真意とは?「政治家は感情に引きずられてはいけない」「中国・台湾の陸海空軍の能力、アメリカの意図、全部考えた上で日本の安全保障は立案されなきゃいかん」
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 石破茂前総理が23日のABEMA的ニュースショーに生出演。「戦後80年所感」について語る場面があった。

【映像】石破前総理「感情で動かしてはいかん」戦後80年所感の真意語る

 志半ばで退陣を余儀なくされた石破前総理は10月、最後の大仕事として「戦後80年所感」を発表。日本はなぜ戦争を避けられなかったのか、その教訓を打ち出した。その中で、政治家の情緒的な判断が国を誤った方向に導くリスクを指摘している。

「責任の所在が明確ではなく、状況が行き詰まるような場合には、成功の可能性が低くてリスクが高くても、勇ましい声、大胆な解決策が受け入れられがちだ。合理的な判断よりも、精神的・情緒的な判断が重視されて、国の進むべき進路を誤った歴史を決して繰り返してはなりません」(石破前総理の戦後80年所感より)

 石破前総理の「戦後80年所感」の主なポイントは「文民統制の制度を正しく運用すること」「政治家には自衛隊を使いこなす能力と見識が必要」「 国会は政府をチェックする役割を果たすこと」「ジャーナリズムは偏狭なナショナリズム差別・排外主義を許してはいけない」「 歴史に正面から向き合うことなくして明るい未来は拓けない」などだ。

 ジャーナリストの青山和弘氏は「石破氏はこの戦後80年の時に総理大臣を務めたということに対して、意気に感じているというか使命感みたいなものを持っていて。ただ、その前の各総理の談話を否定するようなものは出したくないという考えの中で、なぜ戦争を止められなかったかについては、それまでの談話ではちゃんと語られていなかったので、1つレガシーを残したいという思いがあったのだろう」と分析。

 さらに、「ただ1つ、この中の『政治家の情緒的な判断が戦争に導く1つの理由になった』というところ、これは今の政治はそっちの方向に向かっているのではないかという声もあるが、石破氏はどのように考えているか」と質問を投げかけた。

 これに石破前総理は「これも一言で言うのは大変難しいが、当時の陸軍、海軍、日本政府だって、アメリカと戦争して勝てるわけがないというのはみんな知っているわけでしょ。だって、国力が10倍違うんだから。総力戦なんだから。勝てないとわかっていてなんでなったのかをきちんと分析しなきゃいけない」と応じた。

「大日本帝国憲法には、元老という存在があって、それがいろいろな調整をすることで国を回していたわけで。元老いなくなっちゃいました、西園寺公望も死んじゃいました。そうすると意思決定というものが、大きな声とか勇ましい声に引きずられちゃうことがあったわけだ。例えば、猪瀬直樹さんが『昭和16年夏の敗戦』で書いておられるように、あらゆる艦長、陸軍、海軍、日本銀行も、30代の人たちが集まって『絶対に勝てません』と言った時に、東條英機陸軍大臣は『君たちの研究は立派だが、昔から言うじゃないか、戦は時の運なのだ、やってみなきゃわからないのだ』みたいな話をした。『負けますからやめましょうね』という研究はボツになっちゃう。『戦は時の運』という一言で。みんな東條さんが悪いというつもりは全くないけれど。

『人間たまには清水の舞台から飛び降りる勇気も必要だ』、清水の舞台から飛び降りると大体死ぬ。その勇気も必要だという時に誰も反論しない。これって怖くないですかということだ。安倍(晋三)さんの70年談話の中に、『太平洋戦争に突っ込んでいった日本の政治システムはそれを止められなかった』とさらっと書いてある。なぜ止められなかったかを検証して、今の日本は大丈夫かを検証するのは、今の時代の政治家、少なくとも内閣総理大臣の責任だと思った」(石破前総理)

 今の状況に照らし合わせて懸念が、ということかと問われ「今の状況に照らし合わせてなどということは言いません。常にそういう気持ちを持っていなきゃいかんということで、今がどうだから80年所感がどうだというようなことを私は言っているわけではない。だから、感情に引きずられちゃいけませんよということと、中国の陸海空軍の能力、台湾の陸海空軍の能力、アメリカのいろいろな意図、それを全部考えた上で日本の安全保障というのは立案されなきゃいかんのでね。さあ一言でどうぞみたいな話ではない」と語った。

 改めて青山氏は「今、例えば中国大阪総領事の『首を斬る』という発言とか、そういうものに対するいろいろな反発が世論の中に出ている。確かにあの発言は私もひどい発言だと思うが、ただ、それを殊更にあげつらうことによって国益を損するのではないかという見方もある。石破氏は今、中国との向き合い方はどうあるべきだと思うか」と尋ねた。

 石破前総理は「それは営々と築いてきた、昭和47年以来の関係があるわけですよ。そして、観光業の方、ホタテ(業者)の方が『困ったね』という話があって、もうレアースだってそう、医薬品だってそうでしょ。いろいろな関係が日中の間にはあって、感情的に腹が立とうが何しようが。例えば医薬品、レアアース、観光業、日本と中国の関係って大事にしなきゃいかんのだと。それは中国の言いなりになるとかそういう話じゃなくて、日本は日本として確固たる考え方を持っていますということはきちんと示した上で。だって、例えばみなさん、中国製のものが何もありませんなんていう家どっかあります?病院にかかって、中国に関係した薬を全く投与されたことありませんなんて人誰かいます?だから、日中というのは感情で動かしてはいかんのですよ。利益で全部動かせとは私は言わないけれど、昭和47年以来、どれだけの人がどれだけの努力をしてきたか。そして戦争中に何があったのかみたいなことを知る努力は常にしないと、日中関係なんてマネジメントできない」と自身の考えを述べた。

(『ABEMA的ニュースショー』より)

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