高市早苗総理大臣の発言以降、中国の人民解放軍が「戦う準備はできている」という趣旨の動画の発信を続けるなど、日中関係の溝が深まっています。日本の政府関係者からは、関係修復に4〜5年かかるとの見方も出てきています。
高まる中国政府からの圧力
まず、日中関係が悪化した経緯について振り返ります。高市政権が発足してから約1カ月の出来事です。
10月4日、高市氏が自民党の総裁に選出されました。10月17日には、中国などからの反発が予想されたため、靖国神社「秋の例大祭」の参拝は見送られました。
10月21日に高市政権が発足しましたが、習近平国家主席からの祝電はありませんでした。
10月24日の所信表明演説では、「日中で『戦略的互恵関係』を推進する」と発言。10月28日には、日米首脳会談が行われ、10月31日には韓国で日中首脳会談が行われました。
その一方で、翌日の11月1日に高市総理がSNSにAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の台湾代表との写真を投稿。これをきっかけに関係が悪化していきます。
そして決定的となったのが、7日の衆議院予算委員会での国会答弁です。
高市総理は、台湾有事について「存立危機事態になりうる」と発言。これを受け、翌日の8日には薛剣駐大阪総領事がSNSに「汚い首は躊躇(ちゅうちょ)もなく斬ってやる」と書き込み、強い不満を示しました。
13日には、中国側が金杉憲治駐中国大使を呼び出し抗議。18日には、外務省局長級協議では、中国政府が高市総理の発言の撤回を求めましたが、日本は撤回しない考えを伝えました。この際、日本の金井正彰アジア大洋州局長が頭を下げたように見える場面が切り取られ、SNSで拡散しました。
21日には、駐日中国大使館がSNSで「国連安保理の許可を得ず日本に攻撃できる」と主張。さらに、中国国防省もSNSに高市総理を風刺する動画や静止画を多数投稿。そして、22日、23日のG20サミットの記念写真では、高市総理(写真左から2人目)と李強首相(写真一番右)の接触はありませんでした。
中国政府からの圧力も高まっています。
新華社通信によりますと、王毅外相は「日本の現指導者はレッドラインを越えた。日本に対し、誤りを早急に反省し、改めるよう促す」と発言。24日、中国外務省の報道官は、「日中韓首脳会談は開催する条件が整っていない」と述べています。
また中国外務省によりますと、24日には米中の電話会談が行われたといいます。
中国側は「中国への台湾復帰は戦後国際秩序の重要な構成要素」と主張し、アメリカが台湾問題に介入しないようにけん制したと見られています。さらにトランプ大統領は習国家主席から招待され、来年4月の中国訪問を受諾したということです。
過去には一部が暴徒化したデモも
すでに観光など、民間レベルでも大きな影響が出ています。日中関係の悪化を受け、中国国内はどういう状況なのでしょうか。過去には、大規模な反日デモが起きたこともありました。
2005年4月、日本の国連安保理常任理事国入りなどに反発し、北京や上海などでデモが発生。デモの一部が暴徒化しました。2010年9月には、尖閣諸島沖での日本の海上保安庁の巡視船と中国漁船の衝突事件を受け、中国各地で反日活動が起きました。
2012年9月には、日本の尖閣国有化に反発し、1972年の日中国交正常化以降で史上最大規模の反日デモが発生。デモ隊などによって日本車が破壊されることもありました。
ただ、今回はこうした大規模な反日デモの報道は今のところありません。
中国は、訪日の自粛を呼びかけています。
14日、中国外務省がSNSで中国人に対し、しばらくは日本への渡航を避けるよう厳重に注意喚起すると呼びかけました。
一方で、在中国の日本大使館は中国に住む日本人に、周囲の状況に注意を払い、大勢の人が集まる広場などは可能な限り避けるなどの注意喚起を行いました。









