日本で生活するイスラム教徒が整備を求めている土葬墓地を巡って、自民党内で意見の対立が表面化しています。大分の市議団が全国に土葬墓地を整備するよう求めたのに対し、地方議員の有志は反対する要望書を国などに提出する方針を固めたことが分かりました。
イスラム教徒が必要性訴え
「土葬に対しての不安もあるし、土葬に関しての衛生面の懸念もあるし、これは決して推進というよりも、むしろ反対の立場の自民党の議員もいることが、党本部や国に対しても声をあげることが、極めて今この肝要(大事)なことかなと思い、(要望書を)出させていただこうと思う」
1日に番組の取材に応じたのは、神戸市の上畠市議会議員と、奈良県高取町の新澤良文町議会議員(58)です。
2人は今月中に、100人近くの自民党地方議員と連名で、土葬に反対する要望書を国や党本部に提出することを決めました。
「自民党の地方議員は、土葬について推進をしていくような立場と思われることが、もっともこれは国民の皆さまに対して大きな誤解でもあります」
そう考えるきっかけとなったのが、先月、大分の自民党市議らが見せた動きです。岩屋毅前外務大臣(68)に付き添われ、国などに土葬の整備を求める要望書を提出しました。
「この要望書ですけれども、要望書の中で私が一番問題だと思うのは2番(の項目)。日本全国において国が責任を持ち、複数の地域に土葬対応可能な墓地を確保、整備することとあるんですけど、これ大分県の問題でしょと」
「大臣経験者が政調会長に要望書をアテンドという形であったとしても、岩屋さんが一緒に出したというふうに国民の方々が捉えていますよ。地元の神戸市民の方からもですね、自民党こんなことを進めていくの?って。地域からのボトムアップという形で、土葬はやっぱり必要なんだというような世論形成をしているのではないのか。そういった見方もされている」
日本で40万人以上が生活しているというイスラム教徒。遺体を焼くことは、死者の尊厳を傷付ける行為と考えられていて、遺体を焼却して遺骨を葬る「火葬」ではなく、遺体をそのまま土に埋める「土葬」が必要と訴えていますが、全国で土葬できる墓地は10カ所程度で、九州地方にはありません。
ザファー・サイードさん(44)
「火葬が(禁じられている)理由、宗教的には罪と同じ。どうしてもお願いする。土葬してもらいたいから」
そのため、大分県では土葬墓地の建設計画が持ち上がりましたが、去年に予定地の町で行われた町長選挙で、水質汚染への懸念から「土葬反対」を訴えていた候補者が当選し、計画はストップになりました。
「日出町には土葬墓地は必要ない。大規模な土葬墓地は必要ない。反対の姿勢を貫きたいと思います」
岩屋前大臣「賛成反対の次元ではない」
こうした中、今回、大分の地元議員らが土葬墓地を全国に確保するよう求めていることについて、上畠市議らは地元の産業に影響が出ることを恐れています。
「酒を地元の地場産業としてやっている地域としては、イスラムの方々に対して嫌悪感があるわけではないけれども、イスラムの方々が土葬という形で弔われることについて、その近くで水が流れて、その水がまたお酒を作られる際に利用されているということを考えたら、嫌悪感というふうなものは拭いきれないものがあるのではないか」
「これを理解すれば良いやんかと。イスラムを信仰されている方にとって土葬は必要なんや、だから理解しろというのは、これはあまりにも乱暴な話」
番組は、大分の地元議員らに同行していた岩屋前大臣に話を聞きました。
「(Q.土葬できる墓地を増やそうという考えは?)増やす、増やさないとか、賛成とか反対という次元の話ではない。だって埋葬法は土葬を禁止していないわけですから。その判断を全部市町村に委ねているというところに、問題が発生してきているわけですから。やっぱり国が何かしらの基本方針や、ガイドラインを作るべきだというふうに私は思っているわけです」
今回、地元の声を届けるために、橋渡し役を担ったという岩屋氏。しかしSNS上では、岩屋氏に対して、こんな誹謗(ひぼう)中傷も…。
「岩屋のみ、実家の庭で土葬」
こうした書き込みに、岩屋氏はこのように話します。
土葬問題についても、外国人排斥にならないよう、慎重に議論する必要があると訴えています。
国の法律で土葬は禁止されていませんが、自治体によっては条例で禁止している地域もあり、土葬に反対する地方議員らも国に明確なルールを作ってほしいと考えています。
「大分県の方々は、国にちゃんと整備してほしいということだろうし、僕らは国にきちんと、ダメなものはダメだということを示してほしい」
先週の国会で、土葬の是非を問われた上野賢一郎厚生労働大臣はこのように話しました。
(「グッド!モーニング」2025年12月2日放送分より)











