物価高対策として政府が推奨している「おこめ券」だが、これを配布しないと決めた自治体が増えている。
「おこめ券」に否定的な自治体が増加
まず、「おこめ券」について、反発する自治体が増えているのはなぜなのか。
政府は物価高への対応として、補正予算案に各自治体が自由に使える「重点支援地方交付金」を2兆円計上したが、このうち食品価格の高騰に対応するとした「特別加算」に4000億円を充てるとした。
ただ、大阪の交野市や静岡市などの市長はおこめ券には否定的で、「配らない」という旨を明言している。
なぜか?背景として指摘されているのが「費用がかかる」という点だ。現在流通しているおこめ券は1枚500円で販売されているが、引き換えられるコメは440円分までとなっている。差額の60円は印刷代や流通などの経費で、利用する人にとってはその差額12%分が目減りする形となる。
政府は「使用期限を来年9月末」「転売禁止」などの文言を明記した新たなおこめ券を発行する方向で調整していて、こうした経費も批判の対象になっている。
そんな中、5日にコメの平均販売価格が最高値を更新した。一方で卸売業者からは「このままいけばコメの価格が暴落する」との声も出ている。
実際、コメの生産者や小売り業者などで構成する米穀機構の11月の調査では、向こう3カ月の価格見通しを示す指数が「32」で前の月と比べて7ポイント低下した。横ばいを示す「50」を下回っていて、価格の先安感が強まっている。
高市政権による方針転換の影響は?
コメ政策が“逆戻り”したと現場で指摘されている。高市政権による方針転換で現場に混乱が広がっているという。3カ月足らずでコメ政策が行ったり来たりしている状況だ。
石破茂前総理は8月、コメの価格高騰を受けて「『コメを作るな』ではなく、農業者が増産に前向きに取り組める支援に転換する」と表明するなど、それまで行ってきた「生産調整」という事実上の減反政策に区切りをつけ、2027年度以降に増産へかじを切るとして農政の大きな転換だと言われた。
しかし、高市政権の鈴木憲和農水大臣は就任会見で「需要に応じた生産」が基本だと表明した。この「需要に応じた生産」という表現は、1970年代以降続いた減反政策の決まり文句だといい、石破前政権の増産という方針を撤回するものだった。
こうした方針を反映し、農水省は来年の主食用米の生産量見通しについて、需要量に合わせ711万トンと、今年より37万トン減らすとした。ただそれとは別に備蓄米として21万トンを買い入れる予定としている。
また、コメの価格について石破前総理が「コメは(5キロ)3000円台」と店頭価格に言及し、備蓄米を放出するなどコメの価格の引き下げに積極的だったのに対し、鈴木農水大臣は「価格はマーケットの中で決まるべき」としていて、備蓄米放出など価格抑制には否定的だとみられている。
さらに、こうした方針を法律に明記する動きも出ている。農水省は食糧法改正案に「需要に応じた生産」という文言を明記する方向で調整しているといい、来年の通常国会に提出する方針とみられている。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年12月8日放送分より)







