中国軍機による自衛隊機へのレーダー照射を巡り、日中関係の緊張がさらに高まっています。両国関係は今後どうなるのか、専門家が解説します。
中国「レーダー作動は当たり前」
「極めて危険な行為であって、断じて容認できるものではありません」
航空自衛隊の戦闘機が中国軍の戦闘機からレーダー照射を受けたことを巡って、衝撃が広がっています。
「間違いなくレベルは格段に危険な方向に上がってしまった。これは挑発行為と受け止めるべきだと」
「レーダー照射するという、いわゆる『射撃するぞ』という威嚇(いかく)、脅し、そういう行動するということは国際法上も許されない」
危険な行為が行われたのは6日、沖縄本島沖の公海上で中国海軍の空母「遼寧」から発艦した中国軍のJ-15戦闘機が、領空侵犯の恐れがあるとして緊急発進した自衛隊のF-15戦闘機に、2回にわたって断続的にレーダーを照射しました。
1回目は6日の午後4時32分頃からおよそ3分間。2回目はおよそ2時間後の午後6時37分頃からのおよそ30分間。それぞれ断続的に、自衛隊機がレーダー照射を受けたということです。
戦闘機のレーダーには、広い範囲にレーダーを放って相手の位置を探す「捜索用モード」と、ミサイルや機関砲の照準を合わせるために用いられる「火器管制用モード」の主に2つありますが、防衛省では今回は区別がつかないとしながらも「捜索用なら断続的に行われる必要はない」としています。
火器管制レーダーの照射だとすれば、いわゆる「ロックオン」、攻撃準備完了を意味する危険な行為です。
これに対し、中国は…。
8日午後に行われた会見で、中国外務省は火器管制レーダーの照射について言及を避けました。
「艦載機が飛行する時に捜索レーダーを作動させるのは各国共通の通常の措置であり、安全を確保するための当たり前の行動です」
中国軍機のレーダー照射、その意図は?
明海大学の小谷哲男教授は、こう推測します。
「レーダー照射は危険な行為でもあり、一歩間違えればミサイル発射につながるようなもの。それを断続的に、二度にわたって行ったということは、今、日中関係が高市総理の発言を巡って悪化しているという大きな背景のもとで、現場の判断として『より挑発的な行為をとっても許される』というふうに考えた可能性はあると思う」
中国軍の自衛隊に対するレーダー照射は、尖閣諸島の国有化を巡って悪化していた2013年に発生。また2018年には、韓国軍の駆逐艦から自衛隊機がレーダー照射を受けたことも。
これは防衛省が当時公開した実際の映像です。
「FC(火器管制レーダー)系出している。FCコンタクト(火器管制レーダー探知)」
FC=火器管制レーダーが照射された場合、パイロットには即座に知らせる仕組みになっています。
「めちゃくちゃすごい音だ」
「オグジュアリー確認中」
「この音覚えておいて下さい」
2018年当時、日韓関係は徴用工問題などで“国交正常化以来最悪”と言われるほど悪化していました。
今回の中国軍機によるレーダー照射について、日本政府側は冷静に受け止めています。
「過去にもあったと思うが、現場の忖度(そんたく)、暴走だろう。トップの方針に忖度して、各現場でできる対日行動をとっているという見方が多い。それぞれの忠誠心というか、成果のアピールのように現場が動いているように感じる」
「日中関係がこうなっている状況だからこそ、軍事的な緊張を高めることはお互いに避けたい。中国も軍事的緊張を高めたいとは思っていない」
今後について、小谷教授は次のように話します。
「日本が一番嫌がることを今後やってくる可能性があると思う。それはレアアースですね。輸出規制を強化してくることはあるかもしれません。やはり国際社会を味方につけることを(日本は)まずしないといけないと思う。自らの立場を国際社会にしっかりと説明していき、中国側がいかに不合理なことを行っているか知らせることが必要ではないかと思う」
日中関係の改善には、時間がかかりそうです。













