自衛隊機へのレーダー照射をめぐって「訓練は事前通告した」という主張を繰り返す中国に対し、小泉防衛大臣が改めて反論しました。そもそも本来の焦点は、いわゆる“ロックオン状態”となるレーダー照射を行ったかどうかですが、中国側は論点をずらそうとしているようです。
中国「訓練は事前に通告」と主張
事案から4日。中国は、国際社会に訴える“情報戦”に乗り出しているようです。
「中国メディアはすでに現場の録音と詳細な情報を公開した。真相は明らかだ」
中国側が公開した映像には、中国軍と自衛隊が交信する音声が含まれていて、日本語訳を乗せたものもあります。
「こちらは中国海軍101艦。当編隊は計画通り、艦載機の飛行訓練を実施する」
対する自衛隊。応答したのは艦番号116の護衛艦『てるづき』とされています。
「中国101艦。こちらは日本116艦。メッセージを受け取った」
これをもって訓練を事前に通告していた、というのが中国側の主張。SNSを通じて「日本艦艇は『了解』と返答した」という発信もしています。ただ、公開された交信内容を改めて聞くと、日本側は「I copied your message(メッセージを受け取った)」としています。
「『I copied』は『通信を受領した』程度の意味しかないというのが常識。『了解』や『承諾』を意味する言葉としては使っていない」
それでも中国側は、あくまで通告した訓練を妨害された“被害者”というスタンス。10日も日本への非難を繰り返しました。
「日本は事前に情報を受け取りながら、なぜ執拗(しつよう)に戦闘機を派遣して中国の訓練地域に勝手に侵入し、近くで偵察と妨害を行い、緊張状態を作り出し、悪意あるあおりを続けているのか説明を拒否している」
公開音声に小泉大臣が反論
一方の日本側。小泉防衛大臣は会見を開き、反論の言葉を重ねました。
「まず第一に中国側が行ったとする『通報』の内容について。空母『遼寧』の艦載機が、どのような規模で、どのような空域において訓練を行うのか具体的な情報は自衛隊にもたらされておらず、また訓練を行う時間や場所の緯度経度を示すノータム=航空情報もなく、船舶に示す航行警報も事前に通報されておりません。その結果、危険の回避のために十分な情報がありませんでした。第二に、自衛隊によるスクランブル発進は適切かつ必要な活動であるということです」
空母『遼寧』が航空機を発進させたのは、自衛隊がスクランブル発進をかける基準となる日本の防空識別圏の内側です。また、その後は南西諸島に沿うように北東に進路をとった遼寧。一時、九州まで400キロ程度の場所にまで迫りました。この400キロという距離は、艦載機J15であれば10分程度で到達できる計算です。
問題の本質は“レーダー照射”
「空母から発艦した艦載機に対し、対領空侵犯措置を適切に行うことは『訓練に関する事前通報』の有無にかかわらず当然であります。もっとも重要な点として、問題の本質は我が方が対領空侵犯措置を適切に行う中において、中国側が約30分にわたる“断続的なレーダー照射”を行ったこと」
しかし、中国側は8日に「捜索用レーダーを起動することは正常な行為だ」と述べて以降、小泉大臣が「問題の本質」とする点について新たな発信はしていません。代わりに国際社会に向けて「悪いのは日本だ」という主張を繰り返しています。
「国際社会は真実を見極めて、日本側にだまされないでほしい。日本の同盟国は特に警戒してほしい。日本にあおられないように」
これまで静観していたアメリカ国務省は9日、初めてコメントを出しました。
「中国側の行動は地域の平和と安定に寄与しない。日米は、この問題を含む諸問題について緊密に連絡を取り合っている」
ただ、中国は日本をさらに挑発するかのように、9日にロシアと共同で爆撃機を四国沖まで飛行させています。四国沖までの共同飛行が確認されたのは初めてのこと。日中間の緊張状態はさらに高まる可能性もあります。










