高市総理肝いりの外国人政策について、議論が本格化している。
外国人の受け入れ制限も検討
日本に住む外国人の数は年々増えている状況。出入国在留管理庁によると、在留外国人の数は今年6月時点で約396万人、10年で1.8倍ほど増加している。
その一因として、2019年から「特定技能」という、介護など特定の分野で技能を持つ外国人を労働者として受け入れる在留資格ができたことも影響しているという。
日本の総人口に占める外国人の比率は6月末現在3.21%だが、国立社会保障・人口問題研究所の発表では、2070年に10.8%になるという推計もある。
このように増加傾向にある外国人について政府は対策を検討している。
自民と維新の連立合意書に外国人政策として明記されているのが、在留外国人の「量的マネジメント」という仕組み。
「量的マネジメント」とは外国人比率が高くなった場合、受け入れに関する数値目標や基本方針を策定するとしている。
朝日新聞によると、政府内では在留資格の一部で受け入れ上限数を設定するという案も浮上しているという。
厳格化対象「技人国」とは?
ではどういった「在留資格」が制限の対象となるのか?
在留外国人を資格別にわけると最も多いのが「永住者」で、これは外国人が在留活動も在留期間も制限されずに、日本に住み続けられる資格のことで、これを持つ人は約93万人、日本の在留外国人の4分の1ほどを占めている。
次いで多いのが「技人国」と呼ばれる在留資格で、約46万人いる。「技人国」の資格を持つ在留外国人は5年で約1.6倍増えているという。
この「技人国」とは正式には「技術・人文知識・国際業務」という在留資格で、これを一文字ずつ取って「技・人・国」と呼ばれる。
機械工学などの技術者やマーケティング業務従事者、語学教師、デザイナー、通訳などの専門職に従事する外国人が取得できる資格。
資格の取得条件として「学歴・実務経験が条件を満たしている」ことや「必要な技術または知識を習得している」こと、「日本滞在時の素行不良がない」ことなどが求められており、在留期間は最長で5年だが、更新ができることから長期就労につながりやすいという。
「技人国」を巡り逮捕事案も
ほかのビザに比べても長期就労につながりやすいことから、この「技人国」のビザが悪用されるケースもあるという。
朝日新聞によると、埼玉県でカット野菜などの製造・販売を行う日本人の会社代表と人事部門の責任者は、特定の専門職でしか働けない「技人国」の資格で滞在するインド人を専門職でなく「作業員」として雇った、資格外の業務に従事させたとして「入管難民法」違反の疑いで逮捕された。
医療費未払い問題 審査厳格化へ
政府は「外国人が優遇されている」という不公平感を解消するとして、いくつかの制度を見直そうとしている。
まず、外国人による「医療費」の未払い問題。厚労省によると、去年9月に外国人患者を受け入れた全国2890の病院のうち、約16%にあたる470の病院で未収金があったという。
このうち半数以上は1件あたりの未収金額が1万円を超えていたが、約9%が20万円を超えるものだった。
政府は現在、医療費で「20万円以上の未収金」がある外国人は、次回の入国審査をより厳しくしているが、朝日新聞によると入国審査を厳しくする対象について、来年度からは「未収金1万円以上」まで拡大するという。
ただ2890の病院の2023年度の医療費未収金約881億円のうち外国人の患者によるものは約13億円、1.5%ほどで、実態としては未収金のほとんどが日本人によるものだという。
国民健康保険料の未納対策
外国人の国民健康保険料の未納についても問題が指摘されている。
厚労省が約150の自治体を調査したところ、外国人の国民健康保険料の納付率は去年12月末時点で63%ほどだった。
こうした保険料の未納に政府はどういった対策を講じていくのか?
来年4月からは、海外から転入した人について最大1年分の保険料を、自治体の判断で事前に一括納付させる仕組みを導入するとしている。
また、2027年6月からは支払いに応じない場合、在留資格の更新・変更を認めない方針で、納付情報についてマイナンバーとの連携を目指すという。
さらに外国人が児童扶養手当を不正に受給しているケースもあるという。
朝日新聞によると、2027年3月以降、児童手当に関して居住実態を把握するため、自治体による外国人住民の出入国情報の参照が可能になるという。
経団連 選ばれる国に…支援強化
経済界は外国人を戦略的に呼び込んでほしいと提言している。
経団連は16日、外国人政策に関する提言を発表した。世界各国から優秀な人材が集まり、活躍することで産業競争力を強化するとしていて、そのために外国人の単なる「受け入れ」から、求める人材を明確に定めた「秩序ある受け入れ」「戦略的誘致」に発想転換すべきとしている。
そのうえで、優秀な人材から「選ばれる国」になるべきだとして、行政の「多言語対応」や「日本語教育」の支援を推進することなどを求めている。






