政治

ABEMA TIMES

2025年12月23日 07:00

「核を持つべき」オフレコ発言が波紋…ジャーナリストが“裏側”を解説「高市総理はまだ更迭の決断をしていない」「官邸関係者の立場の人が記者の前ですべき話ではない」

「核を持つべき」オフレコ発言が波紋…ジャーナリストが“裏側”を解説「高市総理はまだ更迭の決断をしていない」「官邸関係者の立場の人が記者の前ですべき話ではない」
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 総理官邸関係者から「私は核を持つべきだと思っている」という発言が飛び出した。発言はあくまで個人的な見解で、「オフレコ」の場で出たものだが、それが大きく報じられて波紋を呼んでいる。

【映像】物議を醸す官邸関係者の発言(詳しい内容)

 木原稔官房長官は「政府としては非核三原則を政策上の方針として堅持している」との見解を示した。しかし、日本政府の国是「非核三原則」を根底から揺るがす発言に、野党は反発。公明党の斉藤鉄夫代表は「許せない思いでいっぱい。罷免に値する重大な発言だ」、共産党の田村智子委員長は「きっぱりと罷免すべき」と発言した。

 台湾有事をめぐる発言で関係が悪化する中国も、「事実であれば事態は極めて深刻だ。一部の日本人が国際法を突破し、核を保有する危険な企てが判明した。深く懸念しなければならない」(中国外務省・郭嘉昆副報道局長)とコメントした。

 立憲民主党の野田佳彦代表は、「高市総理の『非核三原則』見直し論も、こういう人のつぶやきも影響しているかもしれない」といった見方を示す。

 歴代の政権は、核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」の非核三原則を踏襲してきた。この原則を「堅持する」と盛り込んだ安保三文書について、政府は来年中に改訂することを目指している。

 高市氏は総理就任前の2022年(当時は自民党政調会長)、「『持ち込ませず』については、政府が従来から国民の安全が危機的状況になった時に、非核三原則をあくまで守るのか、それとも『持ち込ませず』について例外を作るのか。その時の政権が判断すべきことだ」と発言していた。

 防衛大臣と外務大臣を経験した、自民党の河野太郎氏はXで「『日本は核兵器を保有すべき』という議論があること自体を問題にするのはおかしくて、核兵器を保有した場合のメリットデメリットを議論して、結論を出せばよいこと」として、むしろオフレコ発言を報じたメディアの問題を指摘した。

 ジャーナリストの青山和弘氏は、「オフレコ破りの是非は置いておいて、この官邸関係者は総理に直接、安全保障のことを進言する立場にある人が、どんな場所であっても『核保有すべきだと思っている』と言うのは、これまでの政府の方針と違うことを言っている」と解説する。

 また、「とくに今、日中関係が緊張していて、中国は『日本は高市政権になって軍国主義化を進めている』と、やたらと宣伝戦を打って出ている時に、さらに餌をまくような話だ。『ほれ見たことか』と。中国の報道官も反応した」とも語る。

 今後については、「高市総理の周辺でも『更迭すべきだ』との声は出ているが、高市総理は更迭を決断していないし、しない可能性もあり、判断が分かれる」とする。

 一方で、「この官邸関係者も、ただ『核兵器を保有すべきだ』と声高に言ったのではなく、オフレコの内容を見てみると、『核を持つべきだと思っている』『最終的に頼れるのは自分たちだ』。こういう意見が、政府関係者や自民党議員にあっていいし、内心で思っている人も多数いるだろう」とも推測する。

 とはいえ国際関係を見ると、「アメリカのトランプ大統領が、中国の習近平国家主席と近づこうとしている中で、本当にアメリカが助けてくれるのか。ましてや核兵器のボタンを押してくれるのかはわからない」といった現状だとする。

 その状況下で、この官邸関係者の「コンビニで買ってくるみたいにすぐにできる話ではない」「(非核三原則の見直しについては)国論を二分する課題だ」「高市総理とはこの話をしていない」といった発言は、「慎重なことを言ってはいる。ただ、『検討が必要だ』や『議論してもいい』ではなく、『持つべきだと思っている』という発言は、肯定している発言だ」と指摘する。

「しかもこの記者団との懇談は、官邸の中で行われている。オフレコの前提だったとしても、立場がある人が、記者を前に発言しているという意味では、重く受け止められても仕方がない。『なぜこの時期に言う必要があったのか。必要なかったのではないか』という意見は当然だ」(青山氏)

 加えて、「友達関係で、居酒屋などで言うのとは違う」と指摘する。「一応オフレコの縛りはかけていたが、官邸の会議室で、記者を前に言った。報道機関は10社以上参加していたらしいが、それぞれに受け止め方が違う。『政治家ではない人が言ったから見逃そう』という社もあっただろうし、社内では『核保有の問題は非常に重要だ。あえて約束を破っても報道すべきだ』と考える人がいるかもしれない。その辺りをしゃべる側も考えておかないといけない」。

 そして最後に、「明日、俺はあいつを殺しに行く。絶対オフレコだぞ」と言われた場合を例に出して、「それを聞いたら、黙っている方の責任も生じる。そこは判断が分かれる微妙なところだったのだろう。この発言はそれだけセンシティブなことだった」との見解を示した。

(『ABEMA的ニュースショー』より)

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