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2026年1月8日 02:39

【報ステ解説】中国“輸出規制強化”レアアースも対象か…経済界ため息 政府の反応は

【報ステ解説】中国“輸出規制強化”レアアースも対象か…経済界ため息 政府の反応は
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中国商務省

日本への強硬姿勢を強めてきた中国が、新たなカードを切って圧力をかけてきました。中国政府は日本に対し、軍事用・民間用の両方に使われる品目について輸出規制を強化すると発表。中国国営メディアはその中に『レアアース』が含まれることを示唆しました。様々なハイテク製品の生産に不可欠なレアアースの輸入が滞るかもしれない事態に、日本の製造業に動揺が走っています。

圧力強める中国の“新たなカード”

中国商務省は、日本への軍民両用品の輸出規制を強化すると発表しました。最新の軍用戦闘機から医療機器、スマートフォンなどに使用される、希少な鉱物資源『レアアース』も対象となる可能性があります。

木原稔官房長官
木原稔官房長官
「わが国のみをターゲットにした今般の措置というものは、国際的な慣行と大きく異なり、決して許容できず、極めて遺憾です。外務省、経済産業省および在中国(日本)大使館から中国側に対して、その旨の申し入れを行い、強く抗議するとともに措置の撤回を求めたところです」

発端とされるのは、高市総理大臣が去年11月の国会答弁で行った、いわゆる“台湾有事”は日本の存立危機事態になり得るとの発言。これに反発した中国は、日本への渡航自粛を呼び掛け、日中間の航空便は相当数が減便となり、水産物の輸入も再停止。さらに、追い打ちをかけるように輸出規制強化に乗り出しました。中国政府が公表している資料によると、記載されているレアアースは7種類。さらに、4つのレアアースを使用した製品も含まれます。

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経済界からため息「先が見えない」

関係者

東京都内のホテルで7日に開かれた、新年の賀詞交歓会。例年、駐日中国大使が出席してあいさつしますが、今年は欠席。関係者は「数十年続いているが、大使の欠席は記憶にない」と話しています。今回の措置に対し、日本の経済界は。

日中友好会館 宮本雄二会長
日中友好会館 宮本雄二会長
「非常に重苦しいというのが現状。どういうふうに打開されるか分からない重苦しさ。一刻も早く改善してほしいが、先が見えないので憂うつな気持ち」
ニトリ 似鳥昭雄会長
ニトリ 似鳥昭雄会長
「ベトナムとかタイの工場では、中国から原料・材料・素材をほとんど輸入している。そういう関係がこれからどうなるかなっていう。中国にもうちの社員が何百人も常駐していますし、問題なければいいなと思っているんですけどね」

今月、経団連会長ら経済界の代表団が中国訪問を予定していましたが、延期しています。

日中友好会館 宮本雄二会長
日中友好会館 宮本雄二会長
「日中関係をやってきた中国側の人も関係改善したい。しかし自分たちではできない。日本政府、中国政府で話し合ってもらわないといけない。引き続き、日本との交流を続けたいという気持ちはくみ取った」
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進まない“分散化”と“脱中国依存”

レアアース

レアアースに関して、中国は世界一を誇ります。埋蔵量は48.4%、採掘量は69.2%、精錬の割合に至っては91.4%と圧倒的です。日本も当初は、輸入の約90%を中国に依存してきました。日本は輸入先の分散化を進めてきましたが、うまくいかず、2024年時点でも71.9%を中国が占めています。

兵庫県姫路市にある姫路電子は、磁石製造で60年以上の実績があり、生産の7割を中国の工場で行っています。

姫路電子 網嶋重昭社長
姫路電子 網嶋重昭社長
「主に使っているのはセンサー。物が磁石の前を通ると反応を起こして電気が入る」
サマリウムとネオジム磁石

この会社では、サマリウムとネオジム磁石が対象となっています。一般的にサマリウムを使った磁石は、350度といった高温でも安定した性能を発揮できるため、戦闘機のエンジン、人工衛星の小型モーター、原子炉の関連装置などの構成部品に使われています。ネオジム磁石は、小型で非常に強力な磁力を持つため、ミサイルやドローン、スマートフォン、電気自動車などに使われ、小型化・高性能化には欠かせません。どちらも民間・軍用の両方において需要があります。

姫路電子 網嶋重昭社長
姫路電子 網嶋重昭社長
(Q.あと何カ月分くらい)
「2カ月ぐらいは何とかもつでしょうね」
(Q.2カ月以上というのは見通しは)
「全然分からない」
(Q.一番の痛手は)
「我々商売できなくなるよ。一番の問題はね」

どのように規制が強化されるのか、詳しくは分かっていないといいます。

姫路電子 網嶋重昭社長
姫路電子 網嶋重昭社長
「今度はどれだけ長くなるか分からん」
(Q.長期化…)
「するんじゃないかな」
(Q.長期化で怖いことは)
「怖いですよ。品物がない、売れない、商売できないですから…」
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強硬に求める“高市発言撤回”

7日の中国外務省会見。レアアースに関する質問に、こう答えました。

中国外務省 毛寧副報道局長
中国外務省 毛寧副報道局長
「高市総理の台湾問題に関する発言が中国の主権と領土保全を侵害し、公然と中国の内政に干渉し、武力による脅威を発している。日本側に問題の原因を直視し、反省して過ちを正し、高市総理の誤った発言を撤回するよう促す」

強硬に発言撤回を求める中国。今回、新たなカードを切ってきた背景には、どんな思惑があるのでしょうか。

ANN中国総局 井上桂太朗
ANN中国総局 井上桂太朗
「中国は、アメリカとの関税をめぐる交渉でも、防衛産業やハイテク産業に欠かせないレアアースを外交カードとして使ってきました。中国政府は一貫して、台湾をめぐる高市総理の発言の撤回を求め続けていますが、高市総理は年始の記者会見で安全保障三文書の改定に意欲を見せるなど、中国からすると年が明けても日本側の態度に変化がみられないことから、さらに1段階、日本への圧力を強めた形。日中間で打開策が見つけられない限り、日本へのさらなる措置や事態が長期化する恐れもありそうです」
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欠かせない“産業のビタミン”

レアアース

レアアースとは17種類の元素の総称です。ごく少量加えるだけで製品の性能が大きく向上することから“産業のビタミン”とも呼ばれ、このような製品に使われています。

レアアースの用途

【強力な磁石になる特性を活用したもの】
・電気自動車、航空機のモーター
・スマホの振動機能の極小モーター
・強い磁場が必要な医療用MRI

【蛍光・発光する特性を活用したもの】
・LED照明、液晶ディスプレイなど

日本は“中国頼り”なぜ?

レアアース おもな輸入国

日本のレアアースの輸入先の割合を見ると、2009年は中国が約85%を占めました。2010年に尖閣諸島をめぐる対立で日中関係が悪化し、中国が日本への輸出を一時停止したことを受けて、他国からの輸入を拡大。2020年には中国の割合が約59%に減少しましたが、2024年は約72%となっています。

なぜ中国に頼らざるを得ないのでしょうか。レアアースなど鉱物資源の研究をしている、東京大学大学院・中村謙太郎教授に聞きました。

中村謙太郎教授
中村謙太郎教授
「まず1つは“コスト”です。レアアース鉱石には放射性物質が含まれるため、鉱石からレアアースを取り出す製錬の際、放射性廃棄物が発生する。そのため、環境問題を重視する国で製錬すると大きなコストがかかる。一方、中国は環境規制が緩く、人件費も安いため、コストを抑えられ、安く生産できる」
中村謙太郎教授
中村謙太郎教授
「もう1つは“独占状態”です。レアアースにも複数の種類があり、大きく分類すると質量が重いレアアースと、軽いレアアースがある。重いレアアースは自動車や半導体製造装置など日本が得意とする産業に欠かせないもので、非常に重要。重いレアアースの鉱山は中国南部にしかなく、現時点では中国がほぼ100%生産しているため、他国から調達は難しい」
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続く高市答弁の影響…政府は?

政治部官邸キャップの千々岩森生記者に聞きます。

千々岩森生記者

(Q.中国による輸出規制強化の発表で、政府内の空気感はどうなっていますか)

千々岩森生記者
「外務省幹部は『圧力のレベルが上がったのは間違いない』と話しています。危機感が強まるのに伴って、政府高官らの口数は少なくなっています。政府の対応ですが、ポイントは2つです。まずは、止めるぞと脅すことと、実際に止まることは違います。本当にレアアースの蛇口を閉めるのか。もしやれば中国経済にもマイナスですから、あくまで脅しに過ぎないのか見極める必要があります」
千々岩森生記者
「もう1つはアメリカです。官邸関係者によると、中国の輸出規制にはアメリカも強く反対しています。中国のレアアースは日本で製品化されて、さらにアメリカにも輸出される。つまり、もし中国から日本の流れが止まると、アメリカも被害を受ける構図になっています。そもそもアメリカは、レアアースを武器にする手法自体にも反感を募らせています。高市総理は、反対するアメリカとも方向性は一緒ですから、連携しながら対応にあたることになりそうです」

(Q.そもそも高市総理の発言が発端ですが、発言を撤回はないですか)

千々岩森生記者
「撤回はないと思います。最新の取材でも政権幹部に撤回の空気はありません。というのも、総理周辺には、むしろ中国との対決姿勢をあえて見せる方が、支持率につながるとの見方もあります。一方で、マイナスの影響。例えば、高市総理は“強い経済”を掲げていますが、水を差す可能性もあります。国益という重要な要素に、政治的打算や看板政策の行方など色んなものが絡み合いながら、まだ明確な対中戦略が見えてこないのが実情です」
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