高市総理が求めるのは、自民党内だけでなく、国民に信任された内閣総理大臣の座ということのようです。高市総理は19日の会見で、今月23日に衆議院を解散することを正式に表明。与党で過半数を勝敗ラインに、進退をかけて戦うことを明らかにしました。来月8日に投開票という異例の超短期決戦。真冬の総選挙へと一気に歯車が回りました。
「高市早苗が総理でいいか問う」
会見に臨んだ高市総理は、こう切り出しました。
「国民の皆様、私は本日、内閣総理大臣として1月23日に衆議院を解散する決断をいたしました。なぜ今なのか。“高市早苗”が内閣総理大臣で良いのかどうか。今、主権者たる国民の皆様に決めていただく。それしかない。そのように考えたからでございます。逃げないため、先送りしないため、そして国民の皆様とご一緒に日本の進路を決めるための決断です。私自身も内閣総理大臣としての進退をかけます。“高市早苗”に国家経営を託していただけるのか。国民の皆様に直接ご判断をいただきたい。自民党と日本維新の会で過半数の議席を賜りましたら“高市総理”。そうでなければ野田総理か斉藤総理か別の方か。間接的ですが、国民の皆様に内閣総理大臣を選んでいただく」
つまり「自分が総理でいいのかどうか」を問うというのが解散の大義のようです。
「内閣総理大臣に就任するための道は険しいものでした。新たに連立パートナーとなった日本維新の会の皆様をはじめ、衆参両院で他の会派の皆様のお力添えもいただいて、薄氷を踏む思いで何とか総理指名選挙では勝利し、昨年10月21日に内閣総理大臣に就任しました。この日から高市内閣が政権選択選挙の洗礼を受けていないということを、ずっと気にかけてきました」
(Q.予算の審議を遅らせてまでこのタイミングで解散する大義は)
「先ほど申し上げたように、高市早苗が内閣総理大臣で良いのか。これを国民の皆様に決めていただくしかない」
(Q.政策最優先ではなく、選挙最優先に変わったと危惧する面も。政策実現の姿勢は変わらないのか)
「政策を実現したいからこそ、この長い国会が始まる前に皆様の信を問います」
政策を巡っては、こうも述べました。
「信なくば立たずであります。重要な政策転換について国民の皆様に正面から示し、その是非について堂々と審判を仰ぐことが、民主主義国家のリーダーの責務だと考えました」
時限的“食料品消費税ゼロ”検討加速
では、どのような政策を問うのか。従来と異なる考えが示されたのは“消費税の減税”についてです。総理就任後は持論を封印し、減税に慎重な考えを示していましたが。
「物価高に苦しんでいる中所得・低所得の皆様の負担を減らす上でも、現在、軽減税率が適用されている飲食料品については2年間に限り、消費税の対象としないこと。これは昨年10月20日に私が署名した、自民党と日本維新の会の連立政権合意書に書いた政策でもあり、私自身の悲願でもありました。今後、設置される国民会議において、財源やスケジュールのあり方など実現に向けた検討を加速します」
もっとも、消費税減税は野党が軒並み訴えている政策。選挙の争点となり得るかは不透明です。
反応したのはマーケット。東京債券市場では、長期金利の指標となる10年もの国債の利回りが急騰し、約27年ぶりの高水準となりました。与野党の主張が消費税減税一色となり、財政がさらに悪化するのではないかという警戒感から、売りが急速に膨らんだためです。
「マーケットで決まることについては、私の方から特にコメントすることはありません」
「信任得れば政策実現を加速」
選挙戦のスケジュールも示されました。
「解散・総選挙によって令和8年度予算の年度内成立は極めて困難になるのではないかとも言われています。その影響を最小限にとどめるため、1月23日に衆議院を解散した後、1月27日に公示、2月8日の投開票。速やかに総選挙を実施する考えです」
その場合、おととしの選挙で当選した今の衆議院議員が仕事をした日数は454日。1953年の“バカヤロー解散”(第4次吉田内閣/165日)、1980年の“ハプニング解散”(第2次大平内閣/226日)に次ぐ、現行憲法下では3番目の短さです。ただし、過去2回は内閣不信任決議案が可決されたことによる解散。“総理大臣の専権事項”とも解釈される憲法7条に基づいた解散では過去最短です。
そもそも、通常国会が1月に召集されることになった1992年以降、1月に解散が打たれたことはありません。歴代の総理は新年度予算を3月末までに成立させることを極めて重視していました。その点については。
「私は内閣総理大臣に就任して以来、国会の会期中であっても、閉会中であっても、日本にいても、海外にいても働いて働いて働いて働いて働いてまいりました。選挙期間中も高市内閣は各府省庁の職員と共に働き続けます。むしろ選挙で国民の皆様の信任を賜ることができたら、その後の政策実現のスピードを加速することができる」
“大義”や“超短期決戦”に批判も
各党はどう受け止めたのでしょうか。連立のパートナーからは。
「非常に強い決意と覚悟、すっきりと戦いに臨む姿勢が伝わる、連立パートナーとして非常に心強い解散表明だったと思う」
一方、前回までのパートナーは。
「政治とカネの問題について、今回、一切言及がなかったのは、私はおかしいのではないかと思いました」
新年度予算案に賛成することを約束していたこの人からは。
「我々は高市総理が総理だと思って、これまでの交渉も合意もしてきたので。疑ってはいないんですけど」
解散の大義や、超短期決戦となることへの疑問も相次ぎました。
「言いっぱなしで大上段に構えて、強さをアピールして、信任してくれと。そういう判断ができる論戦はどこにいったのか。全くできるゆとりもない」
「自分を信任するのかどうか、これを一番最初に言いましたので。そんな個人的な理由で選挙かよとは思いました」
消費税減税をめぐってはこんな指摘も。
「食料品について2年間消費税をゼロにするかどうか国民会議にかけるといいました。そこまで言うんだったら、なぜ去年、臨時国会でやらなかったんですか。解散・総選挙なんてやらずに、この通常国会でやるべきではないですか」
「消費税減税より、現役世代の大きな負担となっている社会保険料負担を下げることを優先すべきと考えています」
「総理の掲げる政策の方向性は賛同できるものが多いが、これまでの自民党政権の実績をみると、企業団体やグローバリズムの圧力を跳ね除けて実現できるかは甚だ怪しい」
有権者にも話を聞きました。
(Q.「高市総理の信任を問う」と話したが)
「そんなためだけにやるんですかね。もうちょっと国民のことを本当に考えてほしいかなと思います」
「後々やるよりは最初に(選挙を)して、そこから色々、改革を進めていった方がいいんじゃないかと。今回を機にいい流れというか、いい風、日本にプラスになるいい機会になればと思います」
退路を断った?総理の狙い
政治部官邸キャップの千々岩森生記者に聞きます。
(Q.高市総理が解散について初めて国民に表明しました。会見を間近で見て、どこが印象に残りましたか)
「まず背景のカーテンが赤でした。総理会見は青がほとんどで、赤は久しぶりです。総理周辺は『気合いを込めて赤にした』と説明しています。言葉も強かったと思います。分かりやすかった。高市総理の支持者には響くパフォーマンスに感じます。ただ、中身をよく聞くと、ん?と感じる部分もあります。まず『目標は自民と維新で過半数。進退をかける』と退路を断ちました。でも、今すでに自民と維新で230議席あります。会派ごとで言うと、233議席の過半数に達しています。つまり、単に現状維持しますと言っているに過ぎません。しかもこの議席は、石破総理のもとで惨敗を喫した時の数字です。退路を断つという言葉の強さと裏腹な現状維持という目標のギャップ。強く華やかなラッピングでアピールする狙いに聞こえました」
(Q.高市総理からは消費税減税への言及もありましたが、本気度をどう見ますか)
「消費税は『悲願だった』と、高市総理は仰いました。ただ、よく聞くと『今後設置される国民会議で実現に向けた検討を加速する』と、いつ下げるかなど具体的な話はなくて、慎重な雰囲気にも見えました。総理周辺は会見の後、『財源は詰められていないし、正直マーケットを気にして、こういう表現になった』と、あえてふわっとした言い方に留めた事情を説明しています。さらに、消費税減税を『検討する』と言えば選挙の争点になりづらいという本音も垣間見せています」
(Q.準備期間の少ない急な解散については、支持率が高いうちに選挙をやってしまう狙いも透けて見えます。それを超える解散の理由、大義を会見で示せたと思いますか)
「支持率が高いうちに選挙をやってしまう。本音はその通りです。解散の大義はおおよそ事前の予想通り、連立が変わった、とかですね。実は、解散に動き始めて以降、複数の政権幹部から、これまで高市総理の支持が多かったネットの世論ですら“突然の解散”に疑問が出ていると、不安の声が聞こえていました。総理は冒頭で『高市早苗が内閣総理大臣でいいか、国民に決めていただく』とあえて踏み込みました。立憲の野田代表や公明の斎藤代表の名前をあえて出しながら、私を選んでくださいと訴えた訳です。高市総理自身の高い支持率で、解散への疑念などを吹き飛ばしながら、選挙戦を進めたい思惑も垣間見えました」








