政治

日曜スクープ

2026年1月23日 12:00

「食料品の消費税ゼロ」与野党攻防の舞台裏 財源は?実施期間は?2026衆院選

「食料品の消費税ゼロ」与野党攻防の舞台裏 財源は?実施期間は?2026衆院選
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高市総理が衆議院の電撃解散に踏み切り、1月27日公示・2月8日投開票と、36年ぶりの真冬の総選挙となる。立憲民主党と公明党が新党『中道改革連合』を設立し、選挙戦の構図が大きく変わる中、争点になっているのが「食料品の消費税ゼロ」だ。どのような財源でどのように実施するのか。与野党それぞれ消費税減税を打ち出す舞台裏を専門家がひも解く。

1)「食料品の消費税ゼロ」が争点に 立憲&公明の狙いと与党側の舞台裏

立憲民主党の野田佳彦代表と公明党・斉藤鉄夫代表(ともに当時)は1月16日、新党「中道改革連合」の設立を発表。中道勢力の結集を掲げ、「衆院議員は両党を離党して新党に参加」「参院議員や地方議員は当面、存続する両党に所属」「公明党は小選挙区から撤退し比例代表に回り、新党の候補を応援する」としている。

佐藤千矢子氏(毎日新聞専門編集委員/元政治部長)は、両党の協議が「昨年10月、公明党の連立離脱後から具体的に始まっていた。高市総理の解散への動きで新党設立を急いだ」としつつも、公明党の議員が「中道」をどう若者層に浸透させられるか、懸念を抱いていたことを指摘する。

中高年世代は、右とか左、保守・革新・中道というものがストンと落ちる。そういう政権、政治の構図を身近に見てきたから。20代、30代の世代は、おそらく全然違うところにいる。左右よりも、上か下か、格差が問題になっている。例えば去年の参院選の時に、れいわ新選組の支持層と参政党の支持層が“積極財政”という意味で一部重なるという調査結果が出た。右か左のイデオロギーではなく、“とにかく自分たちの生活をなんとかしてほしい”という発想で若い人は見ている部分が大きい。そうすると「“中道”って何をするの?」と。そこに答えていかないと、響くものにならない。政治家たち自身もそれはわかっていて、いかに表現し、いかに政策に落とし込んでいくかの勝負だ。選挙までの時間が足りない中で、それをやりきれるか、まだ見えない。
野田代表

林尚行氏(朝日新聞コンテンツ政策担当補佐役/前政治部長)も、公明党の連立離脱直後から、立憲民主党の野田代表(当時)や側近が水面下で公明党との新たな関係構築を図ってきたと指摘した上で、新党が打ち出した「食料品の消費税ゼロ」を格差対策の政策と位置づける。

左右か上下かという文脈で言えば、これは上下対策の政策。消費税で非常に苦しんでいる中間層を下支えしていく“生活者ファースト”であり、「一人一人の個人を大切にする」という公明党の斉藤代表の発言にも沿う。立憲・野田、公明・斉藤両代表の元々の考え方に近い。ただ、自民党も消費税減税を主張し始めた。国民民主党の玉木代表は「みんなの足並みがそろうのだったら、解散せずに国会でやればいい」という趣旨の発言をしている。

新党「中道改革連合」の設立発表後、高市政権側も自民党と日本維新の会の共通公約として「食料品の消費税率を時限的にゼロにする」という案を検討していると報じられた。佐藤千矢子氏(毎日新聞専門編集委員)は、その舞台裏を読み解く。

連立合意
自民と維新の連立合意には、飲食料品の消費税率を2年間に限ってゼロにすることも「視野に法制化を検討する」という、まどろっこしい文言が入っている。このような表現になった時に「これはもう消えた」との受け止めが多かったが、取材をしてみると皆、口をそろえて「消えていない」と。高市氏はもともと減税派。高市氏の周囲は、高市氏が乾坤一擲(けんこんいってき)の解散総選挙に打って出る時は、自民党の反対を押し切ってでも“消費税減税”選挙で戦うと考えており、最後のカードとして持っていたところがある。一方の維新の側は連立合意書に入れたぐらいで、2年間の食料品消費税ゼロは非常にやりたいところ。一時期は消費税に言及していない時もあったが、直近では、吉村氏が重要政策として「定数削減」「副首都」「社会保険料の引き下げ」「消費税」の4つを挙げおり、今年に入ってからまた消費税に言及するようになっている。新党も掲げてきたことで、もう一歩踏み込んだ提案ができるか自民党と総理官邸の間で協議しているはずだ。
高市総理は1月19日の記者会見で、23日召集の通常国会冒頭で衆議院を解散すると表明し、「飲食料品の消費税率2年間ゼロを実現するため検討を加速する」と発言した。自民党の選挙公約に盛り込むとしている。
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2)「食料品の消費税ゼロ」実現のための財源は?

食料品の消費税ゼロに向け、問題となるのはその財源だ。公明党の西田幹事長は1月18日、「きちんとした財源をつくり出し、食料品の消費税を恒久的にゼロにしていく」と述べている。佐藤千矢子氏(毎日新聞専門編集委員)は、高市総理と立憲・公明それぞれ、ギリギリの調整を重ねているとみる。

食料品の消費税をゼロにするためには年間5兆円の財源が必要になる。2年間であればまだしも、恒久的にとなると、毎年5兆円をどこから持ってくるのか。高市総理は、マーケットにも敏感で、総理として慎重に見ているとの情報が様々な筋から入ってきている。そう簡単に「恒久減税」とは言えない。
一方、立憲は昨年の参院選のとき、もう本当に侃々諤々(かんかんがくがく)の議論を党内でした末に、1年間限定で食品消費税ゼロと打ち出した。最大2年まではいけると思うが、公明党は恒久的にやるべきと言っている。両党の間でどう調整していくかが課題だ。
新党「中道改革連合」は1月19日、基本政策を発表し、食料品の消費税率ゼロを財源の確保と合わせて盛り込んだ。国の資産を運用する政府系ファンドを立ち上げるなどして、財源を確保するとしている。
西田幹事長

林尚行氏(朝日新聞コンテンツ政策担当補佐役)も、減税の財源をめぐる議論の重要性を指摘する。

財源の作り方には2通りあって、ひとつは政府系ファンドのように財源を増やすというもの。もう一つは歳出を減らす、歳出改革。財源の作り方を含め国民が納得できるような現実的な形を出せないと、『恒久的に食品消費税ゼロに』と言われても…となる可能性がある。現状では今回の選挙が与野党の“減税競争”になりかねず、財政規律への懸念も出る可能性がある。市場は敏感に反応するので、為替がさらに円安に振れたり、長期金利の上昇が続くと、結局、国民生活に跳ね返るということになりかねない。
減税というのは非常に耳障りのいい政策だが、円安が進み、半年後ぐらいに大きく物価が上がり、消費税が下がっても結局、生活の状況は変わらないという事態にならないかどうか、考えてなくてはならない。有権者の眼力が問われる選挙になる。

3)消費税めぐる各党の主張は?今回の衆院選が問う“国の方向性”

各党の消費税に対する主張は以下の通りだ。国民民主党「一律5%への引き下げ」。れいわ新選組「消費税廃止」。共産党「一律5%減税そして廃止」。参政党「消費税廃止」。日本保守党「食料品の消費税を恒久的にゼロ」。社民党「消費税はゼロ」。チームみらいは去年6月の参院選で「消費税減税に慎重」として社会保険料の減額を主張している。

各党の主張

佐藤千矢子氏(毎日新聞専門編集委員)は、「2024年の衆院選と昨年の参院選。2027年春には統一地方選が待つ。選挙があまりにも多い」と問題視しつつ、「本来であれば政権は安定させなくてはならないが、解散総選挙に伴う新しい動きも出ている。いま大きな岐路にある」と、今回の衆院選を位置づけた。

さらに林尚行氏(朝日新聞コンテンツ政策担当補佐役)は「多党時代をどう捉えるのか。新党『中道』ができて選挙の構図が変わった。自民党なのか、中道路線なのか、それとも第3極的な政党が引き続きインパクトを持つのか。政治のあり方、政治の安定というキーワードを掘り下げた形で、有権者に判断していただくことになる」と分析する。

番組アンカーの末延吉正氏(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)も、今回の衆院選の重要性を強調した。

今度の選挙の持つ意味は非常に大きい。私たちの生活や日本という国を、誰がどう守るのかということを「自分事」として捉えて、しっかり投票に行ってほしい。テレビも含めて、メディアはきっちりと客観的な材料を提示していかなくてはいけない。国の方向性が決まる非常に重要な選挙となる。

(「BS朝日 日曜スクープ」2026年1月18日放送より)

<出演者プロフィール>

佐藤千矢子(毎日新聞専門編集委員。第一次安倍政権時に官邸キャップ。元政治部長。2001年ワシントン特派員。著書に「オッサンの壁」(講談社現代新書))

林尚行(朝日新聞コンテンツ政策担当補佐役。前政治部長。共著に「総理メシ〜政治が動くとき、リーダーは何を食べてきたか 」(講談社)「「ポスト橋本の時代」(朝日新聞出版))

末延吉正(元テレビ朝日政治部長。ジャーナリスト。東海大学平和戦略国際研究所客員教授。永田町や霞が関に独自の多彩な情報網を持つ。湾岸戦争などで各国を取材し、国際問題にも精通)

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