1月28日、衆院選(2月8日投開票)の期日前投票が始まった。ここでは小選挙区と比例代表の投票用紙とは別にもう1枚渡される投票用紙で行う「国民審査」について、テレビ朝日社会部 司法クラブキャップの古賀康之記者に聞いた。
━━国民審査とはどのような制度か?
「最高裁判所の裁判官がその立場にふさわしいかどうかを審査するもので、不信任(×の票数)が有効投票数の半数を超えた裁判官は罷免させられる」
━━そもそも最高裁裁判官はどのように決まっているのか?
「最高裁には長官1人と判事(裁判官)14人、合計15人の裁判官がおり、長官は内閣の指名により天皇が任命、裁判官は内閣が任命すると憲法に規定されている。とはいえ、実際にどのように選んでいるかは明らかになっていない点もあり、現職の最高裁長官などの意見を聞いた上で内閣が指名する慣例があると言われている」
━━最高裁の裁判官にはどのような職種の人がなるのか?
「司法試験後に弁護士などを経験せずに裁判官となる職業裁判官(キャリア裁判官)だけでなく、検察官や弁護士、法学部の教授、外交官、行政官からなる人もいる。共通しているのは極めて高い専門性を有していることだ。ちなみに定年は70歳であり、一人が70歳を迎えるとまた新しい人が任命される」
投票用紙の書き方は?

━━最高裁判所はどの程度の影響力を持つのか?
「最高裁は三権分立における『司法』の中の頂点に立ち、国会が作った法律が憲法に違反していないかなどを判断する。また、最高裁が下した決定(判例)が地裁や高裁が判断するときにも大きな材料になる。ビジネスを進める上でも『最高裁にこういう判例があるからこういう行動はやめておこう』などの形で影響力を持つ。そんな権限を持つ最高裁の裁判官がその立場にふさわしいか、国民が確認することが大事なのだ」
━━国民審査の周期は?
「国民審査は衆議院議員総選挙の際に行われる。同じタイミングである理由は事務的な負担軽減に加え、3年に一度しかない参院選よりも頻度が高く、世論を反映させやすいからだとも考えられている」
━━投票用紙の書き方は?
「辞めさせたい人に『×』をつける。信任したい人、特に辞めさせたいわけではない人には何も書かない。もし『○』をつけたり応援メッセージを書くと無効票になる」
━━我々は何を判断材料にするべきか?
「審査を受ける人に関しての『審査広報』が発行されており、最高裁のホームページにも人となりなどが記載されている。また、弁護士や大学教授の団体が作るリーフレットには専門家視点の評価が書かれているし、独自にアンケートを行っている新聞もある」
━━過去に国民審査で辞めさせられた裁判官はいるのか?
「一人もいない。とはいえ、以前最高裁裁判官に話を聞いたところ『すごく緊張するし意識する』などと話していた。やはり国民審査の1票1票が裁判官のプレッシャーになっているようだ」
━━もし「×」が過半数を超えたらどうなるのか?
「裁判官は30日以内に東京高裁に訴えを起こすことが可能だが、異議が退けられたら罷免される。罷免された裁判官はその後5年間は裁判官に任命されない」
高須順一氏はどんな人物?

━━今回、国民審査の対象となる2人はどのような人物か?
「高須順一氏(66歳)は弁護士出身。最近、弁護士から最高裁判官になるのは大手事務所出身者が多かったが、高須氏はいわゆる“町弁”であり、本人含め事務所メンバー4人ほどしかいない。好きな言葉は『真偽は紙一重、嘘の皮を被りて真を貫く』。印象に残った本は『指輪物語』、趣味は万年筆集めだという。裁判においては、2024年衆議院総選挙における『一票の格差(最大2.08倍)』訴訟を担当。こちらは最終的には『合憲』という結論となったが、高須裁判官は『違憲状態ではないか』という意見を出した。また、嘱託殺人が『尊厳死』として正当化されるかというALS患者嘱託殺人事件の裁判では、被告である医師側の上告を退け、懲役18年の判決が決まった」
沖野眞己氏はどんな人物?

「2人目の沖野眞己氏(62歳)は学者出身で専門は民法や消費者法だ。また、女性で初めて東京大学の法学部長に就任された方でもある。好きな言葉は『されど空の蒼さを知る』など。印象に残った本は『ローマ人の物語』など、趣味は『ミステリ』を読むことや歌舞伎やミュージカルに行くことだという。沖野氏の裁判例としては、御嶽山噴火をめぐる訴訟で遺族側が国や長野県の対応に対して賠償を求めたが、上告を退け遺族側の敗訴が確定した。また、五輪汚職事件では渡した金銭が賄賂といえるかが争点となる中、被告側の上告を棄却する決定に関わった」
━━期日前投票でも国民審査には投票できるか?
「(1月31日時点で)期日前投票に行っても衆議院選挙の投票はできたものの、国民審査の投票はできなかった。理由は、今回は非常に急な選挙(超短期決戦)であったため投票用紙の印刷が間に合わなかったためだ。国民審査の投票は2月1日から始まるため、1月中に期日前投票に行った場合、国民審査に投票するためには2月1日以降に改めて期日前投票所に行く必要がある」
(ニュース企画/ABEMA)