同盟国にも厳しい要求を突きつけるトランプ政権。中国との関係改善を図る西側諸国も…。混迷する国際情勢に日本はどう向き合っていくのか。2月8日投開票の衆議院選挙では「外交・安全保障」も有権者の関心を集めている。
1)英国首相“来日”前に8年ぶり中国訪問 “トランプ時代”西側諸国の模索
1月24日、25日にANNが行った世論調査では「選挙であなたが最も重視する政策は何ですか?」との質問に対し、景気・物価高対策、年金・社会保障制度に続いて、外交・安全保障との回答が3位に入っている。
1月31日、日本の安全保障にとっても重要な人物、イギリスのスターマー首相が来日し、高市総理と首脳会談を行った。このスターマー首相は、訪日直前にはイギリスの首相としておよそ8年ぶりに中国を訪問し習近平国家主席と会談を行っているが、小谷哲男氏(明海大学教授)は、その意図を以下のように分析する。
アメリカの今後の動きが読めない中、少しでも予測可能な関係を色々な国や地域と作っておきたいというのが、欧州諸国の本音だろう。一方で、中国に対し懸念がないわけではない。アジア、インド太平洋地域で最も信頼できるパートナーである日本も今回訪問し、バランスを取ったということだろう。
番組アンカーの末延吉正氏(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)は、「日本は対中戦略を練り直す必要がある。いまの米中関係は非常に不確定要素が高いが、米中関係を見つつ、日米同盟を深化させて対中戦略をどうするのか、問われている」と問題提起。
小谷哲男(明海大学教授)氏は、対米・対中関係ともに、首脳レベルでの外交の重要性が増していると指摘する。
トランプ氏も最近の発言で繰り返しているが、習近平氏こそが“ボス”なのだと。中国は今、独裁体制に近いものになっていて、習近平氏だけが物事を決められる状況だ。首脳レベルでのコミュニケーションを重ねて、日本の意図をきちんと伝える必要がある。首脳レベルの外交をいかに確立するか、考えていかなくてはならない。
(3月にも予定されている)高市総理の訪米は極めて重要だが、1回会談しただけでトランプ氏に日本の立場をインプットすることは難しい。トランプ氏は今年4回習近平氏に会う予定だ。フットワークの軽い日米首脳外交が必要になる。
2 )「外交・安全保障政策」関心を集めるも…衆院選での議論どこまで
今回の衆院選で、各党は外交安全保障に関してどのような政策を掲げているのか。主なものは以下の通り。
日米同盟を基軸に、自由で開かれたインド太平洋を力強く推進し、基本的価値を共有する同志国、地域等との連携強化に取り組む。
日米同盟を基軸としつつ、オーストラリア、フィリピン、イギリス等との防衛協力を深化させ、価値観を共有する海洋国家との連携を同盟水準に引き上げる。
毅然とした戦略的外交と現実的な安全保障政策を進める。専守防衛に徹しつつ、日米同盟を深化させる。
中国に頼らない強靭なサプライチェーン構築のため、経済安保推進法の見直し強化。
アメリカトランプ政権に追随する大軍拡戦争国家づくりを許さない。憲法九条を生かした外交の力で平和な日本とアジアを。
戦争ビジネスには加担しない。アメリカの命令で動くのではなく、経済成長と平和外交で国民経済を豊かに。
グローバリズム金融による経済の支配、また、アメリカからの旧式兵器の押し付け購入をやめさせるなど、独立国にふさわしい施策を展開。
防衛は、1)日本の防衛力、2)日米同盟、3)国際連携の三本柱で進める。
価値観、外交、自由、民主、法の支配、人権等の価値観を共有する国との連携強化。
日米地位協定を抜本改正。オスプレイの飛行停止と配備撤回。在日米軍基地の整理、縮小、撤去を進める。
新領域を含め、安全保障を多面的に捉えた外交防衛政策を通じ、日本の安全と繁栄を守る。
林尚行氏(朝日新聞コンテンツ政策担当補佐役/前政治部長)は、「外交・安全保障は国内だけの問題ではない。選挙で主要な争点にするべきなのか、私の中は逡巡しているところがある。本来は落ち着いた議論の中、国会と政府とのキャッチボールで外交のラインを固めていき、コンセンサスを得ていくことが重要」としつつ、選挙戦での論点を以下のように指摘する。
トランプ大統領の出方を見ながら、それぞれの立場に応じて、中国との間合いを考え直していくというのが、アメリカ以外の西側諸国の共通の立ち位置だが、日本の場合は悩ましい。日中関係が最悪の状況になっている。日本は、改善の道筋をどう作るか、端緒から考えなくてはならない。
今回の選挙で、政権与党及び政権を担うであろうとされる政党は、日米同盟を基軸にすることでは足並みは揃っている。日米同盟、トランプ氏との関係性をまずどうするのか、日本の場合は問われており、他国に比べ、入り口が外側にあるように感じる。
久江雅彦氏(共同通信編集委員兼論説委員)は、「個別、具体的な課題」として「防衛装備移転」の運用指針見直しを挙げた。
3 )基軸となる日米同盟 米国の防衛費増額の要請に日本はどう動く?
日本の安全保障の基軸とされる日米関係だが、専門家は、トランプ政権が日本に、さらなる防衛費の増額を求めてくると指摘する。
トランプ政権が日本を含む同盟国にGDP比5%の防衛費を望むのは間違いない。それに応えるかどうかは別にして、防衛費の大幅な増額が必要となる以上、財源の問題は避けられない。そこを避けていては今後の日米同盟についても考えることもできない。
いま日本を取り巻く安全保障環境は本当に厳しいと言われているが、それは単に中国やロシア、北朝鮮との関係ではなく、アメリカがどうなるかわからないところにある。表立っては難しくとも、首脳レベルでは意見交換できる関係が必要だ。
日本の防衛費および関連費について、アメリカは昨年12月、防衛戦略文書の中で「5%」と言っている。日本の関係者は「聞いていない」と言っているが、これは事実上、要求があったに等しい。今後の政権を誰が担うにせよ、どのような枠組みでこの大きな負担を担うのか考えなければならない。防衛3文書の改訂イコール増税が待ち受けている。そこも含め、国論を二分する課題に果敢に挑戦していくのか。国論を二分する課題だからこそ話し合っていくのか。そのいずれを有権者が選択をするのかが判断ポイントだと思う。
林尚行氏(朝日新聞コンテンツ政策担当補佐役)は「選挙後の議席構成が今後の政策決定プロセスの軸足や性格を決める」と、今回の衆院選の重要性を強調。
番組アンカーの末延吉正氏(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)も「日本がどちらの進路に向かうのか、非常に大切な選挙。期日前を含めて選挙に行って意思表示してほしい」と訴えた。
(「BS朝日 日曜スクープ」2026年2月1日放送より)
<出演者プロフィール>
小谷哲男(明海大学教授。米国の外交関係・安全保障政策の情勢に精通。「日本国際問題研究所」研究主幹)
林尚行(朝日新聞コンテンツ政策担当補佐役。前政治部長。共著に「総理メシ〜政治が動くとき、リーダーは何を食べてきたか 」(講談社)「「ポスト橋本の時代」(朝日新聞出版))
久江雅彦(共同通信編集員兼論説委員、杏林大学客員教授。永田町の情報源を駆使した取材・分析に定評。新著に『証言 小選挙区制は日本をどう変えたか』(岩波新書))
末延吉正(元テレビ朝日政治部長。ジャーナリスト。東海大学平和戦略国際研究所客員教授。永田町や霞が関に独自の多彩な情報網を持つ。湾岸戦争などで各国を取材し、国際問題にも精通)






