イランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖がガソリン価格を直撃しています。この状況に高市総理はどう対応するのでしょうか。石油の備蓄放出に加えて、去年廃止されたガソリン補助金を復活させる方針を表明しました。「直近の対応はこれで大丈夫だ」としましたが、果たして。
ガソリン補助金「基金残高で」
12日の国会では、ガソリン価格の高騰にどう対応するかが大きな議論となりました。
「きのう、高市総理は原油価格高騰への激変緩和措置を講じる、ガソリン小売価格を全国平均で1リットル170円に抑えることを表明した。その財源としては、すでに積んである燃料補助向けの基金の残高2800億円を使うということだが、これで十分と言えるのでしょうか」
「軽油・重油・灯油まで入れても、今年度は十分に対応できる」
政府は石油元売り各社に対し、19日の出荷分から補助金を出す方針です。店頭価格に反映されるには1週間程度かかるため、実際に1リットルあたり170円程度で販売されるのは、今月末ごろになる見通しです。問題は、それをいつまで続けられるか。高市総理が「十分に対応できる」述べたのは、あくまで“今年度”の話です。
「今月はあと20日ぐらいじゃないですか。少なくとも新年度4月は絶対に必要になるはずですよね。そうすると2800億円より多い金額が必要になるはず」
「まず、その約2800億円、これは使わせていただきます。基金残高が例えば年度またいで足りなくなったらどうするのかは、中東情勢の先行きは予断を許さない状況ですから、現時点で今後の補助金の支給額などの執行見込みを申し上げるのは困難」
自衛隊派遣「想定できず」
高市総理は、使い道を決めずに予算に計上している“予備費”の活用にも言及しましたが、それも打ち出の小槌ではありません。根本的な解決には、ペルシャ湾からホルムズ海峡を抜けて、船を安全に運航できる状態に戻すことが求められます。自衛隊が世界屈指の機雷除去能力を持つことを念頭に、国会ではこんな質問も。
「イランがホルムズ海峡で機雷の敷設を開始という報道。米軍から機雷の掃海をお願いされることがあれば、そういったことについてあり得るかどうか」
「事実上の停戦状態になったとしても、正式な停戦合意がなされる前であれば、他国に対する武力攻撃の一環として、敷設された機雷を除去する行為は、武力の行使に当たる可能性があります。そうした中で、機雷などの除去のために事前準備として、自衛隊のアセットを近傍に展開することは想定できない」
来週トランプ大統領と会談
ただ、トランプ大統領が今後、日本に対して軍事的な協力を含めた何らかの要求をしてくる可能性は十分あります。日米首脳会談を19日に控える高市総理。トランプ大統領とどのように向き合うのかも問われました。
「アメリカ大統領との関係ももちろん当然あるし、大切にしなければいけないと思うわけですが、米軍の行動に関して“支持表明”は相当、様々なリスクを伴うと」
懸念されるのは、期せずして日本側が意図しない状況に巻き込まれること。トランプ大統領が何を言い出すか予測が難しい中、これまでは会談後に当たり前のように行われていた共同会見などもリスクとなりかねません。
「必ずしも共同記者会見や共同声明はマストではないと認識」
「今、日本にとって大いに国益になることについてお約束ができればいいなと。これをこちらの方で考えて交渉中ではございます。文書を交わす・交わさないも含めて、今調整中です」
『備蓄放出』で石油製品価格は?
石油備蓄の放出について、政府によると、16日にも民間備蓄を15日分放出。さらに、国家備蓄の30日分も放出する計画で、国家備蓄については、あらかじめ価格を決めておく“随意契約”で売り渡す予定だということです。
中東のエネルギー情勢に詳しい、中東調査会・高橋雅英主任研究員にお聞きします。
(Q.今回の石油備蓄放出の決定をどう評価しますか)
「タイミングとしては評価できるのではと思っています。そもそも中東から日本へのタンカーの航行期間は、片道3週間かかります。イランへの攻撃が始まったのが先月28日で、それ以前に出発したタンカーは日本に向かっています。そうなると、石油が本格的に不足するのは3月下旬になる見通しです。昨日の備蓄放出決定のタイミングは、今後不足が予想される3月下旬に何とか間に合わせるためではないかとみています」
(Q.随意契約で、価格高騰は抑えられますか)
「本来、入札で行われますが、そうなると競合して価格が高騰する可能性がある。一方、随意契約で固定価格で安く売り出せば、価格をより抑えられる可能性があります。また、スピード面でも随意契約は重要です。今、国家備蓄は原油の状態で備蓄されているので、精製するのに1〜2週間かかります。市場に早く届かせるには、随意契約でスピード感を持って対応した方がいいと思います」
影響はガソリン価格だけにとどまりません。原油からは灯油・軽油・重油など、様々な種類の石油製品が産み出され『ナフサ』という“魔法の液体”も生まれます。その“魔法”と言われるゆえんですが、このナフサは、医療用品や食品トレーシャンプー、自動車のタイヤ、衣料品などのあらゆるプラスチック製品をはじめ、生活に関わる多種多様の原料となっているため、幅広く値上げされる可能性があります。
(Q.ナフサの値上がりによって、どういった製品がいつから、どれくらい上がるとみられますか)
「ナフサの価格が上がると、プラスチックなどの石油製品全ての値段が上がるとみています。こうした石油製品については、まずは石油不足が顕在化する3月下旬あたりに値上げの恐れがあります。その値上げ幅を予想するのは難しいんですが、1割程度、値上げとなる可能性が高いです。また、石油価格と連動してあらゆる値段が上がる中で、例えば天然ガスの価格も石油価格と連動する料金体系が盛り込まれているため、そうなると電気代も上がる。また、物流コストの上昇で、幅広い値上げが予想されます」
(Q.ほぼ私たちの身の回りの物が石油によって支えられているので、本当に広い範囲で生活のインフラを含めて値上がりがあると覚悟しておいた方がいいですね)
「そうですね。おっしゃる通りです」
見えぬ道筋 長期化のリスクは
(Q.我々はこの中東の事態のどこに注目していけばいいでしょうか)
「一番の対策はホルムズ海峡の封鎖が解かれることですが、それは現状なかなか見通せない状況です。最低限、備蓄には残さなきゃいけない量も決まっておりますので、そうすると4〜5カ月を超えて原油が入らない状況になります」
(Q.8カ月分の備蓄はあると言われていますが、もし5カ月の段階でもう見通しが立たなくなると相当厳しいということですか)
「そうですね。社会不安が広がりますので、そうなるのが一番最悪のシナリオになります」
(Q.長期的に言いますと、どういうところが)
「長期化の場合は、新たな仕入れ先を見つけなければいけないと。こういった場合、産油国も緊急時に自国で囲い込む傾向がありますので、そうなった場合、日本にとっての同盟国・同志国であるカナダやアメリカから原油を輸入するといった方法であったり、またナフサやガソリンなどの石油製品の状態で仕入れることも検討するべきだと考えております」
(Q.調達先を多様化するというのは、容易にできるものですか)
「日本の製油所自体が、これまで中東産ブレンドに設計されてきたので、アメリカ産だと質が違ってくるので、すぐ対応するのはちょっと難しい状況です」
(Q.原油の質が違うんですか)
「そうですね。軽質油であったり、重質油といったところで。日本はどちらかというと中東ブレンドの方で、幅広い部分がありますが、重質油に似た原油を使ってきたんですが、アメリカのシェールオイルですと軽質油ですので、ガソリンは作りやすいんですが、重油といった他の部分で精製コストがかかってしまうような状況になります」
(Q.調達先の分散もなかなか容易ではないということで、今後、中東が一刻も早く落ち着くことをまずは願うしかないと)
「おっしゃる通りです」















