2月の衆院選を受けて、「性的マイノリティーを公表する国会議員がゼロになった」との声が広がり、当事者の声を親身になって国会に届けてくれる人がいなくなったという懸念が上がっている。
【映像】尾辻かな子氏が2007年にカミングアウトしたときの様子(実際の映像)
性的マイノリティーであることを公表した国会議員といえば、尾辻かな子前衆院議員が知られている。大阪府議時代に自身が同性愛者であることを公表。周囲の反応を「1つは親身になってくれた。もう一方は沈黙だった」と明かしていた。
その後、参院議員や衆院議員として、同性婚の法制化など性的マイノリティーの権利向上を目指しながら、超党派の「LGBTに関する課題を考える議員連盟」のメンバーとして活動していたが、今回の衆院選で落選。「(議連に)当事者がいない状態で政策を進めるエンジンが回るかというと難しい」と嘆いた。
SNSでは「魅力的な政策の人がいなかっただけ」「公表していない議員もいるかもしれない」などの反応が。またマイノリティーは性的指向だけでなく、さまざまな分野や属性に存在する。多様化が進む中、少数当事者の意見や権利を、政治にどう反映すればいいのか。『ABEMA Prime』では尾辻氏らとともに考えた。
■当事者議員ゼロへの危機感

ゲイを公表している社会福祉士の福正大輔さんは、「性的マイノリティーの国会議員がいなくなり、とても危機感を覚えた。私たちの声を直接届けてくれる人がいなくなった危機感と、性的マイノリティーの視点で法律や制度をチェックする人がいなくなった危機感が大きい」と語る。
国会内に当事者がいることにより、「新しい法律に、少数者を排除するような差別的な条文が入りそうになった時にストップできる」として、不在になることで「チェック機能が果たせなくなるのでは」と心配している。
尾辻氏は、今回の選挙結果について「議席に届かなかったことは悔しく残念だ。応援いただいた方にも申し訳ないと思う。当事者議員がゼロになってしまった責任を感じている」と話す。
そして、当事者議員の存在意義として、「『この政策が必要だ』と、リアリティーを持った自分ごととして届けられる。人から聞いた話は伝聞調になってしまうが、自分のストーリーには相手を動かす力がある」と説明する。
「初めて法案提出にこぎつけた原動力は、当事者だったから。レズビアンのカップルが子どもを持てなくなるかもしれない特定生殖補助医療法案を止めたのも、仲間たちの悲痛な声が、同じ境遇としてわかったからだ」
■多様性と政治家としてのバランス

「マイノリティー政策だけを実現する政治家は、いかがなものか」という意見もあるが、尾辻氏は「おっしゃる通りだが、マイノリティーであるがゆえに立候補できないことはあってはならない。衆議院の小選挙区は、地域の代表を選ぶ選挙だ。各政党の公認は1人だけで、マイノリティー性を帯びた人は、なかなかたどり着けない。『カミングアウトしなかったら候補者になれたのに』というケースもある」と考える。
また、選挙の仕組みによっても変化する。「参議院の全国比例のように、同じ政党から複数出る中から選ぶ場合には、マイノリティー性が大きな武器になる。私は選挙区選出で、今回は物価高対策などがメインになった。メインのこともやりながら、当事者のこともやっていくバランスが大事だろう」。
カミングアウトによって、「『なぜ政治家になりたいのか』と聞かれた時、大きな理由である『当事者であること』を説明できるようになって、楽になった」と振り返る。「2007年の参院選に全国比例で出た時は、当事者が応援してくれたが、それゆえに『家族や職場に応援の輪を広げられない』という声も多かった。今では非当事者が『世の中のためになる政策だ』と応援してくれる」。
■属性を超えた連帯のあり方

ゲイを公表している南和行弁護士は「政治家はLGBTの問題に限らず、法律に反していない私生活でも、あれこれ言われる。候補者を決めるプロセスにある人は、そこを気にするのではないか。カミングアウトによる影響について、力がある人々ほど、ことさらに言う」との印象を述べる。
格差を是正するために、一定の比率で少数当事者を割り当てる「クオータ制」を求める声もある。これには「レズビアンの女性と、ゲイの男性、トランスジェンダーの女性・男性で、置かれている状況や社会的困難は異なる。そのためクオータ制よりも、それぞれの人が、それぞれの課題を持った時に、自分の政治的ポリシーと合った政党にアクセスできるようにすべき」とアイデアを出す。
そして「今はリベラル政党で当事者候補が目立っているが、日本維新の会にも、日本保守党にもゲイの当事者がいる。あらゆる少数当事者が、どの政党にもアクセスできる形が重要ではないか」と提案した。
(『ABEMA Prime』より)