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報道ステーション

2026年3月21日 02:18

総理周辺「一言でいうと成功」日本政府の戦略 日米首脳会談“穏便”に終了

総理周辺「一言でいうと成功」日本政府の戦略 日米首脳会談“穏便”に終了
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日米首脳会談が日本時間20日未明に行われました。会談前には、トランプ大統領が高市総理に対して無理な要求を突き付けてくるのではないかといった懸念もありましたが、ふたを開けてみれば穏やかとも言える雰囲気で終了しました。ただ、日本にとってはこれで一安心という訳にはいかないようです。

「平和に貢献ドナルドだけ」

アメリカ トランプ大統領
「国民から愛され、パワフルで素晴らしい女性で、我々と良好な関係にある。今日はこれから貿易など様々な議題について話し合う。お越しいただき光栄だ」

イランの戦火をめぐって同盟国に支援を求めてから、アメリカと主要国との間で首脳会談が開かれたのは初めてのことです。ホルムズ海峡への自衛隊の派遣などに関心が集まる中、中東情勢について切り出したのは高市総理からでした。

高市早苗総理大臣
高市早苗総理大臣
「今、中東情勢も含めて、世界中の安全保障環境が非常に厳しい状況にあります。世界経済もかなり厳しい影響を受けつつあります」

そして“伝えたいメッセージ”として、トランプ大統領をこう持ち上げました。

高市早苗総理大臣
高市早苗総理大臣
「私は世界の繁栄とそして平和に貢献できる、世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけだと思う。そのために、私は諸外国に働き掛けて、しっかりと応援したい。今日、私はそれを伝えにきました」

この部分、英語ではさらに強い言葉です。

通訳 高尾直氏
通訳 高尾直氏
「世界中に平和と繁栄をもたらせるのは、ドナルドだけだと固く信じています」

そして、こうたたみかけました。

高市早苗総理大臣
高市早苗総理大臣
「イランに関しては核兵器の開発、これは許されてはならないことですから、日本も働き掛けをしてきました。我が国は、周辺国に対しての攻撃、ホルムズ海峡の実質的な閉鎖についても非難をし、世界のエネルギーマーケットを落ち着かせるための提案も持ってまいりました。エネルギーに関する協力、そしてお互いに強い経済を作るための成長のための話し合い、経済成長のための話し合いをしたいと思ってます」
アメリカ トランプ大統領
アメリカ トランプ大統領
「ありがとう。君はよくやっている」
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具体的な軍事協力要請なし

関心はやはりイラン情勢、記者からは質問が続きます。

アメリカ トランプ大統領
アメリカ トランプ大統領
(Q.掃海艇派遣を含めて、日本からの支援に納得いっていますか)
「それについてはこれから話す。日本とは素晴らしい関係にあり、大きな支援を受けている。数日前に出た声明を踏まえると、日本は期待に応えようとしていると思う。NATOとは大違いだ」
総理官邸のXから

NATOと何が違うのか説明はありませんでしたが、日米は首脳会談に合わせて、関税交渉で合意したアメリカへの投資について、小型原子炉の建設など第2弾となる11兆5000億円規模のプロジェクトを発表しています。

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“イラン奇襲”真珠湾引き合いに

アメリカファーストを掲げるトランプ大統領。経済的な手土産に満足したのか、日本に対して具体的な軍事支援を迫ることはありませんでした。なごやかに終わると思いきや「イランへの攻撃前に、なぜ日本など同盟国に知らせなかったのか」と問われると…。

アメリカ トランプ大統領
アメリカ トランプ大統領
「不意打ちなら日本が一番詳しいだろう。真珠湾攻撃の時は事前に教えてくれたかい?日本なら我々より不意打ちの効果を知っているはずだ」

この発言に対して、アメリカメディアからは…。

ジェレミー・チャン氏(CNN)
ジェレミー・チャン氏(CNN)
「アジアでのウケは悪いでしょうが、軽く流される程度です」
高市総理

発言を聞いた高市総理は顔がこわばった様にも見えます。

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「習氏に日本褒めておく」

高市総理

さらに記者の質問が続くと…。腕時計に何度も目をやり、時間を気にする素振りを見せました。報道陣を退出させる前、トランプ大統領が最後に強調したのは“中国”と“貿易”でした。

アメリカ トランプ大統領
アメリカ トランプ大統領
(Q.日本の最大の懸念は中国です。訪中の際に日中関係を持ち出しますか)
「じきに中国を訪問する予定だが、日中関係がピリついているので、総理から現状を聞きたい」
高市早苗総理大臣
高市早苗総理大臣
「日本はいつも中国に対してオープンです。会話はオープンにしています。それから冷静に対応しています」
アメリカ トランプ大統領
アメリカ トランプ大統領
「きっと素晴らしい訪問になるだろう。1カ月半ほど延期になったが、楽しみにしている。習主席との会談の際には、日本のことを褒めちぎっておこう」
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総理周辺「一言でいうと成功」

首脳会談はランチを取りやめ、約1時間半に及びました。会談後、高市総理は…。

高市早苗総理大臣
「私からは事態の早期沈静化の必要性をはじめ、我が国の考え方をしっかり伝えました」

掃海艇の派遣については…。

高市早苗総理大臣
高市早苗総理大臣
「機微のやり取りではございますけど、やはりホルムズ海峡の安全確保は非常に重要だということでした。ただ、日本の法律の範囲内でできること、できないことがございますので、これについては詳細にきっちりと説明をいたしました」

ただ、具体的なやり取りは明らかになっていません。同席した尾崎官房副長官は会談の雰囲気をこう説明しました。

尾崎正直官房副長官
尾崎正直官房副長官
「一言で言うと成功裏に終了した。会談が終わった後、楽しい雑談が進んだ。大変いい雰囲気だった」
ジェレミー・チャン氏(CNN)
ジェレミー・チャン氏(CNN)
「今回の訪米に日本側は大満足です。イラン問題でさらなる協力を強く迫られず、高市総理が狙っていた成果のほとんどが得られました」
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同盟アピール「最強のバディ」

会談後の夕食会場には高市総理お気に入りの曲がかけられていました。

アメリカ トランプ大統領
アメリカ トランプ大統領
「総理が国防の強化を進めて、アメリカの防衛装備品を大量購入してくれることをうれしく思う。日米の連携は世界の自由・安全・進歩を導く不屈の力となる」
高市早苗総理大臣
高市早苗総理大臣
「強い日本、強いアメリカ。豊かな日本、豊かなアメリカ。私たちはこれらを実現するための最強のバディだと確信しています。ドナルドと親交が深かった安倍晋三元総理がワシントンの地で高らかにうたった言葉を、誇りと自信を持って、皆さんに再びお伝えします。ジャパン・イズ・バック」
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“大統領をベタ褒め”日本政府の戦略

千々岩森生記者

現地で高市総理に同行取材した政治部官邸キャップの千々岩森生記者に聞きます。

ホワイトハウス

(Q.会場の雰囲気はどうでしたか)

千々岩森生記者
「大統領執務室に入って、まず驚きました。トランプ政権の幹部がほぼ全員集合。トランプ大統領、バンス副大統領、ルビオ国務長官、ヘグセス国防長官、ベッセント財務長官、後ろにはラトニック商務長官もいる。まだまだいる。メインプレーヤーたちが集結し、圧迫感を強烈に感じました。日本政府側も同じ思いだったと思います。裏返せば、あらゆる側面、外交に限らず経済、今回は投資がメインでしたが、日本の存在感はアメリカにとっても大きいことの現れだったと感じました」
トランプ大統領

(Q.高市総理は冒頭で「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけだ」と、トランプ大統領をかなり持ち上げる発言をしました。これは狙ってのことですか)

千々岩森生記者
「明らかに狙いです。私は直接聞きながら周りを見渡したのですが、側に控える政府関係者たちもうなずいていました。これは政府全体で練った戦略なんだと伺わせました。ある政府関係者は『トランプ大統領は孤立している。特に今は孤立を深めている。それをチャンスに変える』と話していました。今回、日本が練ったのは、トランプ大統領に寄り添う作戦。『大統領、1人じゃありませんよ』と。高市総理の言葉もそうだったと思います。注目された原油のアメリカ国内での増産。トランプ大統領はイラン情勢をめぐってカッカしていますが、大きなポイントは、原油の価格が上がることじゃないんですか。マーケットの鎮静化なんじゃないですか。そこにも日本は寄り添いますよと。二重三重に寄り添う姿勢を示しながら、トランプ大統領を引き寄せる戦略を日本は練ったことになります」
ホワイトハウス

(Q.日本政府は、今回の会談の手応えをどう感じていますか)

千々岩森生記者
「終わった後、交渉に携わった関係者とホワイトハウス前ですれ違いましたが、抱きつかんばかりに『お疲れさまでした』という感じ。一様に緊張から解放された安堵感は印象的でした。ただ、日本がなぜこのタイミングでの日米首脳会談を行ったのか。本来の目的は、米中首脳会談の前にトランプ大統領に釘を刺す、日本の頭越しでディールをさせないことです。レアアース含めた重鉱物の問題では一定の成果はありましたが、より重要な東アジアの安全保障にアメリカをコミットさせ続ける。ここに関しては不透明さが残った。そこもしっかり抑えておくべきだと思います」
高市総理

(Q.高市総理は「日本の法律の範囲内で『できること』と『できないこと』があるので詳細にきっちり説明した」と言っていました。これで艦艇派遣を要求されることはないと日本政府は考えていますか)

千々岩森生記者
「あくまで今回はです。例えば1カ月2カ月、戦闘が続く。ホルムズ海峡の事実上の封鎖が続くことになれば、原油も足りなくなるかもしれない、高騰も続くかもしれない。トランプ大統領のイライラが続くことになれば、日本への圧力も強まる可能性が十分にあります。ある政府関係者は今回の交渉を振り返って『トランプ大統領のイライラがつのる。それに応じて日々、日本も対処の修正を迫られてきた』と話しました。今後もトランプ大統領への対応策は、戦火が続く限り、修正を迫られながら続けざるを得ないと思います」
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米政権「日本の掃海艇」に関心か

梶川幸司支局長

トランプ政権を取材したワシントン支局・梶川幸司支局長に聞きます。

高市総理とトランプ大統領

(Q.アメリカのメディアは、今回の首脳会談をどう受け止めていますか)

梶川幸司支局長
「何と言っても一番注目を集めたのは、トランプ大統領がイランへの攻撃を『真珠湾攻撃』になぞらえて言及した場面でした。面白がっているアメリカ人も多くいると思いますが、多くの犠牲者が出た真珠湾攻撃をジョークの種にすることは、アメリカの大統領としては不適切ですし、気まずい場面を生み出して外交上も非礼。さらには『自らイラン攻撃は不当な先制攻撃だと自ら認めたようなものだ』との指摘が出ています。今回の首脳会談は、トランプ大統領が同盟国へのいら立ちを強める中、厳しい要求を突きつけてくるとの懸念がありましたが、終始円満で衝突もありませんでした。ニューヨーク・タイムズは、高市総理が真珠湾攻撃のジョークをだまって聞き流し、初のホワイトハウス訪問をほぼ無傷で乗り切ったと伝えています」
ベッセント財務長官

(Q.今後、トランプ政権が何か要求してくる可能性はありますか)

梶川幸司支局長
「注目されるのが、ベッセント財務長官の発言です。19日朝のテレビ番組で『日本には世界最高水準の掃海艇や機雷探知能力がある』と述べ、『首脳会談では有意義な議論になるだろう』と予告していました。というのも、アメリカ海軍の機雷掃海能力には限界があるからです。バーレーンに司令部を置く第5艦隊に残っていた最後の専用掃海艇4隻が退役し、1月にアメリカ本土へ運ばれ、解体されることになっています。その代わりとなる艦艇はありますが、ペルシャ湾に3隻しかないとされ、イランによる機雷の脅威に対して『そもそも数が足りない』といった指摘が出ています。トランプ大統領は昨日、日本はホルムズ海峡で『役割を果たそうとしている』と強調し、『役割を果たす』という意味の“step up”という言葉を7回も繰り返しました。日本の掃海艇にアメリカが期待している可能性は十分あると思います」
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トランプ政権側の“本音”

明海大学・小谷哲男教授

アメリカの外交・安全保障政策に詳しい、明海大学・小谷哲男教授に聞きます。

トランプ大統領と高市総理

(Q.ホワイトハウス側は、今回の会談をどう受け止めていますか)

小谷哲男教授
「まず、トランプ大統領というのは、会うと基本的にはいい人なんです。ですから、あまり険悪な雰囲気を作る人物ではないです。相手が敵対的な行動を取らない限りは。もちろん日本の場合は対米投資、相当な額をする訳ですし、それによって経済安全保障やレアアース、それから技術、このあたりで関係強化が進むと、アメリカにとってもプラスになる。もう1つは、これはホワイトハウス関係者も言っていましたが、高市総理が最初からトランプ大統領の懐に入るような言動をしたことで、トランプ大統領も気分を良くしたんだろう。そのあたりが相まって、全体的な雰囲気が良くなったと思います」

(Q.トランプ大統領は事前にSNSで、日本にホルムズ海峡への艦艇派遣を要請していました。しかし、少なくとも今回はオープンな場での要請はなかったですね)

小谷哲男教授
「トランプ政権側としては、最初から具体的にこうしてほしい、ああしてほしいと伝えないスタンスだと聞いています。それはアメリカとしては同盟国の出方を見ている、あるいはテストをしているということです。アメリカが困った時に、真っ先に支援を申し出てくれる国はどこなのかを見極めている段階なので、日本が何ができると言ってくれるのかを見極めたところです。ただ、もう1つは、この会談の数時間前、日本が欧州の5カ国と一緒にホルムズ海峡の安全に関わっていくという共同声明を出しています。これはトランプ大統領の耳にも入っていて、これが今回、ホルムズ海峡の問題で強く圧力を掛けられることがなかった大きな要因だと思います」
小谷哲男教授

(Q.日本からの歩み寄り姿勢がうまく作用したのでしょうか)

小谷哲男教授
「それは大きかったと思います。トランプ大統領としては、ホルムズ海峡はアメリカもほとんど依存していない、多くの国が依存しているのに、なぜアメリカだけがホルムズ海峡の安全を守っているんだと何度も言っています。その中に日本から、ホルムズ海峡の問題も含めて、中東の安定、それからエネルギー輸送の安定について一緒に考えましょうと言ってもらえたことは大きかったと思います」

(Q.艦艇派遣の話はここで終わりと思っていいのか、もしくは今後も続いていくのでしょうか)

小谷哲男教授
「今回は共同声明が出て、関係各国が今後何らかの関与をしていくという方針が示されたことで良しとした訳です。トランプ大統領としては当然、この先にそれがより具体的な形で見えてくるのだろうと。有志連合ができて、アメリカを助けてくれる動きが見られるのだろうと考えているはずです。このまま共同声明だけで終わってしまうと、どこかの段階でまた不満を表明するSNSへの投稿があることは十分考えられます。今回は共同声明を出したことで、1次試験については合格したと言うことでしょう。有志連合の具体化がまさに第2次試験ですから、これに合格しないと、トランプ大統領のいらだち・不満はまた大きくなるかもしれません。何より『あなたたちの経済が、ここに依存しているんでしょう』というのが、トランプ大統領の伝えたいことだったのだと思います」
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