広がる石油由来製品の供給不安。“食品パッケージ”への影響が広がりつつあります。
ポテトチップス「白黒化」の衝撃
主力商品のパッケージを2色にすると発表したカルビーが、モノクロのパッケージを公開しました。キャラクターやポテトチップスの写真がなくなり、デザインもシンプル。左上には『石油原料節約パッケージ』と書かれています。
カルビーから報告を受けた農林水産省の担当者は、こう話しました。
「インクを袋に吸着する際に必要なナフサ由来の溶剤が、今後、不足する可能性があると調達先から言われ、いずれ商品が滞ることがないように白黒にするとのこと」
高市総理は、先月、調達先の多角化などによって、ナフサの当面の必要量は確保できていると強調していました。
「ナフサ由来の化学製品の供給は、これまで半年以上とお伝えしてきたところですが、さらに延びて、年を越えて継続できる見込みとなりました」
各地で“苦肉の策”
東京・神田にある洋菓子店。
ケーキ箱に印刷されたオリジナルデザインは、50年以上前から変わっていません。月に約1万箱を注文していますが、先月、業者から「すぐに用意できないかもしれない」と連絡を受けました。これを受け、店は無地の箱に切り替えました。デザインが書かれていないものは、必要な分、手に入っているそうです。
「紙は手に入っているということなので、塗料の問題なのかなと。(箱を)楽しんでもらえることもケーキの1つだと思う。その点は、残念に思っているお客さんは多い」
青森県に本社がある食品加工会社。ナフサの調達不安などで、カラフルだったパッケージのロゴを単色にする“苦肉の策”に出ました。
「例えばマーク、3色を1色にする」
来月からは、もやしのパッケージも色塗りが少ない、シンプルなデザインに変更します。これにより、インクに使う材料を6〜7割ほど削減できるそうです。
「食品は『命をつかさどるもの』と常々、言われていた。いまは、溶剤が足りないという状況。フィルム・インクなど溶剤を極力少なくして作り、お客さまに届けるのを最優先に考えて動いた」
溶剤“供給不安”で新規受注停止も
印刷会社でも、溶剤不足に悩まされています。
トイレットペーパーやポケットティッシュのパッケージの印刷を請け負う高知県の会社。
作業に欠かせないのが、ナフサ由来の有機溶剤です。インクを薄め、濃さを調整するために使われる溶剤。納品は、月に1度ですが、来月の納品分は確約されていません。
原料の供給不安を受け、この会社では、現在、新規受注を停止。いま生産しているものも、今月から30%、値上げしています。
「(Q.不安は)拭えないです。どうしようもないので、耐えていくしかない。豊富なデザインを印刷することで、私どもも生きる道がある。白黒とか、場合によっては印刷がなくなっていくと、業界そのものの存続にもなっていくかと」
トランプ大統領“戦闘再開”検討か
ホルムズ海峡の封鎖解除は、ますます見通せない状況になっています。
間近とも報じられていたアメリカとイランの合意は、風前の灯火です。
「(Q.停戦は、当面、維持される)極めて脆弱な停戦だ。いままでで最も危うい。イランの回答は、ゴミのような代物で、読むのは時間の無駄だ。停戦は、生命維持装置につながれた状態で、医者が『生存確率は1%です』と言っているようなものだ」
CNNによりますと、トランプ大統領は、イランの交渉姿勢にいら立ちを見せていて、大規模な戦闘の再開を真剣に検討中だといいます。
中東の石油会社のトップは、こう警告しました。
「ホルムズ海峡の封鎖解除が、あと数週間遅れると、石油市場の正常化は、2027年までずれ込む」
“代替調達”進むも先行き不透明
こうしたなか、12日、横浜に中央アジア・アゼルバイジャン産の原油を積んだタンカーが到着しました。政府が進める“調達多角化”の一環です。
12日夕方に開かれた関係閣僚会議で、高市総理は、ホルムズ海峡を通らない原油の代替調達が進んでいることを明らかにしました。
「(原油の)代替調達の進展を踏まえると、これまでの備蓄放出決定分の活用により、6月に必要な原油を確保できる見通しが立つことから、今月は第3弾の国家備蓄放出を行わないことといたします」
食品包装資材のインクの原料については「前年実績での供給が可能であることを確認できている」と話し、業界に理解を求めています。
「私どもの最大の使命である安定供給を最優先として動いている。原料調達に関しては、中東以外の原油、製品の調達を積極的に進めているところ」
ただ、12日に決算会見を行った外食産業や食品メーカーからは、懸念の声も出ています。
「持ち帰り用のプラスチックバッグ、ナイフ・フォークであったり、そういうものが値上がりするということで、対応は考えないといけない」
「(Q.パッケージの印刷に関しての協議は)現状では、当面、そのままいけるのではないかと思っているが、不測の事態が起きたときには、いろいろな工夫もとっていくことになる」
“ナフサ不足”の実態と影響
ナフサからは、プラスチックなど、さまざまな製品が生まれるため、
“魔法の液体”とも呼ばれています。ナフサから生まれる“トルエン”という化合物が、塗料・溶剤として使われていて、この溶剤が不足しているということです。
それでは、なぜ白黒のパッケージだと生産が続けられるのでしょうか。その理由について、ナフサの流通に詳しい帝国データバンクの飯島(いいじま)大介(だいすけ)さんに聞きました。
飯島さんは「パッケージのカラー印刷は、全体を白く塗った後に、1色ずつ足していく。白黒印刷にすることで、プリントの工程が少なくなり、溶剤の使用量を削減できる」といいます。つまり、「カラーに比べ白黒のパッケージは、使用する溶剤の量が少なくて済む」ということです。
ナフサ不足の影響は、すでに、さまざまな企業に及んでいます。
伊藤ハム米久ホールディングスの浦田寛之社長は、今月1日の決算発表で「カラフルな包装デザインの見直しや、“シンプルな包装形態”にすることを検討する」としました。
日清製粉ウェルナは、パスタを束ねるテープを無地に変更するということです。
高市総理は「インクの原料は前年実績での供給が可能」と述べていますが、現場では、なぜ影響が出ているのでしょうか。
飯島さんは「国内では、ナフサの供給を継続できるとはいえ、日本より備蓄の少ない海外では、ナフサ不足がより深刻化している。ナフサ由来の製品を海外からの輸入に頼っている日本企業は、供給の見通しが立たなくなっている状況」 と指摘。そのうえで、「トルエンは、そもそもナフサから生成できる量が限られている。そこに中東情勢の不安が広がり、塗料・溶剤の関連産業で、必要以上に在庫を確保しようとする動きが起きている可能性がある。正常な供給態勢に戻るには、長くて、3年程度かかる懸念もある」といいます。















