政治

日曜スクープ

2026年6月11日 11:00

「飲食料品の消費税0%」レジ設定なぜ難しい?現場取材で見えた「1%」との隔たり

「飲食料品の消費税0%」レジ設定なぜ難しい?現場取材で見えた「1%」との隔たり
広告
3

高市総理は、食料品の消費税率を2年間「0%」にする減税案を掲げ、2026年2月には超党派の「社会保障国民会議」を立ち上げた。消費税減税の早期実現で課題とされてきたのがレジシステムの改修だが、今月に入り「0%」ではなく、「1%」にする案が有力視されてきた。どういうことなのか。『BS朝日 日曜スクープ』は、レジシステムの現場を取材。消費税率「0%」と「1%」で、それぞれ出力したレシートを比較してみたところ、驚きの結果が出た。

1)POSレジに「消費税ゼロ」を入力すると…

調整が続いている飲食料品の消費税0%への引き下げ。6月3日の「社会保障国民会議」で経済産業省はヒアリング結果として、レジなどの改修について「税率を0%にする場合は対応に1年程度。税率を1%にする場合は5カ月から半年程度に短縮できる」と説明した。自民党の小野寺税調会長は、「消費税減税についての考え方は賛同する党が多かったという印象だったと思います」と発言。0%ではなく1%にするという案が有力視され始めている。飲食料品の消費税を0%にするには時間を要するとされるレジシステムだが、なぜなのか?

番組では、全国約3000店の酒屋にレジシステムを提供している企業『ザ・コンピュータ』の執行役員、佐野晃一氏に話を聞いた。扱っているPOS(Point of Sale)レジは、販売や在庫管理などを行うことができる高性能のレジ。POSレジ自体は、様々なメーカーが開発していて全国のスーパーなどで広く使われているが、こちらの企業の場合、消費税の設定はどうなっているのか?

この企業の消費税率設定画面では、1997年4月に消費税が5%となった時から日付とともに設定がされている。2019年10月1日に開始された食料品の8%への軽減税率も同じように設定されていて食料品をレジに通すと、自動的に8%、他の商品では10%と振り分けて計算される仕組みだ。

ところが、2027年4月1日から飲食料品の消費税を0%に変更すると仮定して、この画面に0と入力しても、税率の欄に「0」という数字が入らない。消えてしまうということが起きる。これは2019年10月以前の「軽減税率がない」設定と同じになるということだ。レシートを出力して確認してみると…。

広告

2) 「0%」のほうが支払金額は増えてしまう!!急務のレジシステム改修

この企業のレジ設定では、食品は8%、お酒は10%となるが、0%にすると軽減税率が「なくなった」ことになる。このため、酒類も食品もすべて10%で計算されてしまう。出力したレシートでも、「0%」を入力したほうが支払金額は増えてしまっていた。

『ザ・コンピュータ』執行役員の佐野晃一氏は「飲食料品の消費税を0%にする場合、システムの改修に約半年、その後テストなどを合わせると8〜10カ月かかる」と語る。さらに「システムの改修にはコストもかかるし、2019年の軽減税率の時のようなレジ導入への補助金の話は聞いていない」という。2019年の軽減税率の導入時は、中小企業庁から原則レジ1台あたり20万円を上限とする補助金があった。

それでは、消費税を0%でなく1%にすると、どうなのか。佐野氏は「1%であれば、明日からでも対応可能で、コストもかからない。1%の案が出ていると聞いた時『それなら大丈夫』と思った」という。

メーカーによってはすぐに0%にも対応できる機種もある。しかし、減税は日本全国で同時に開始する必要があるため、足並みをそろえなくてはならない。永濱利廣氏(第一ライフ資産運用経済研究所)は、飲食料品の消費税「1%」案について、組み合わせる政策にも注視する。

世論調査でも出ているが、0か1かで言うと、国民の感覚としては1%でもいいから早く実行してほしいいう人のほうが多いのではないか。仮に1%だったとしても、例えば外食産業への対応など、トータルで“0%に引き下げ”と同じ分が家計に還元されれば、それはある程度公約に沿った形になると考えることもできる。消費税を食料品に限り下げた場合、ダメージが大きいとされているのは外食産業。であれば、例えば、以前コロナ対策として実施したGo To Eatのような対策をやるのも一つの方向性だ。家計には0%と同じ分だけの減税効果が期待できるし、外食産業への悪影響も軽減できる。

広告

3)求められる政治の本気度 公約の実現に向けた舵取りは

自民党と連立を組む日本維新の会の梅村税調会長は「税収1%分=年間約6000億円を何らかの物価高対策に資するようなものに使っていけば、現実的には0%の公約と整合性が取れるのではないか」と発言。確かに飲食料品の消費税を1%とする場合、税収1%分を物価高対策として還元する案が浮上している。

久江雅彦氏(共同通信論説委員兼編集委員)は、今後の見通しとして、2年間とした減税期間の終了後が焦点になると指摘する。

私の取材では、1%で来年4月から、プラス1%分(6000億円強)を補助金などで国民に還元して、実質0%という方向はもうかなり色彩濃厚になっている。高市総理は“悲願”として「食料品の消費税0%」と言い続けてきた。高市氏がそこを狙っているかは分からないが、仮に1%になったとしても、0%を目指したという証を政治的には残すことができる。
着眼しなければいけないのは、来年4月から2年間の食料品の減税をやった場合、減税が終わるのが29年の3月末もしくは4月になるということ。その翌年の2月には衆院議員の任期が満了となるので、次期選挙まで1年を切るタイミングとなる。この2年間で実行するのはいいが、29年4月の段階で、これをそのまま継続するのか、また8%に戻すのかどうなのか、財源はどうするのか、その判断を求められることになる。

番組アンカーの末延吉正氏(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)は、国としての経済対策のあり方に疑問を示した。

実は今、国政選挙が2年間ないことから“黄金の2年”と言われていて、ここで高市政権は実績を上げなければいけない。来年春には統一地方選挙、だから飲食料品消費税1%の法案を秋の臨時国会で通して半年で準備してという、最近そういう話ばかり流れてくるが、海外では、食料品の税率を変えるとか、数字を動かすことは経済対策として当たり前にやっている。本来であれば、大事なマクロ政策の1つのはずだ。なぜそれができないかと言えば、財政当局を中心に“減税をする”という考えがそもそもないからだ。
日本は今、働けばきちんと給料が上がり、資産を持つ人だけではなく、働けば豊かになれるという、かつてあった世界観を若い人たちに残せるかどうかの、大事な戦いをしている。だから、高市氏は選挙で現役世代から選ばれた。ネットやテレビで「夏休みになると給食がなくなるから」という子どもの貧困を目にするたびに、豊かな時代のはずなのにと、本当に悲しい。もっと“人間の安全保障”を考え、普通にこの国で暮らせるようにするための政策が必要だ。食料品の消費税はゼロにしたらいい。

(「BS朝日 日曜スクープ」2026年6月7日放送より)

<出演者プロフィール>

永濱利廣(第一ライフ資産運用経済研究所 首席エコノミスト。経済財政諮問会議の民間議員。著書に『図解 社会人の基本 お金のしくみがわかるおとな事典 金融・経済「超」入門』(講談社の実用BOOK)など多数)

久江雅彦(共同通信社編集員兼論説委員、杏林大学客員教授。永田町の情報源を駆使した取材・分析に定評。『証言 小選挙区制は日本をどう変えたか』(岩波書店)編著など)

末延吉正(元テレビ朝日政治部長。ジャーナリスト。東海大学平和戦略国際研究所客員教授。永田町や霞が関に独自の多彩な情報網を持つ。湾岸戦争などで各国を取材し、国際問題にも精通)

広告