『国旗損壊罪』が衆議院で可決し、7月9日、参議院で質疑が行われます。
なぜいま『国旗損壊罪』を作ろうとしているのでしょうか。
処罰対象になるのはどんなケースか、見てきます。
■高市総理“執念の政策”『国旗損壊罪』法案成立へ 目的は?
『国旗損壊罪』法案は、6月30日、衆議院ですべての野党が欠席する中、与党の賛成多数で可決され、7月7日、参議院で審議入りしました。
7月9日、参議院で質疑が行われ、7月17日の会期末までに成立する見通しです。
具体的にどのような法案なのでしょうか。
『国旗損壊罪』とは、人に著しく不快、嫌悪の情を催させるような方法により、公然と国旗を損壊し、除去し、または汚損した者を罰するもので、2年以下の拘禁刑、または20万円以下の罰金です。
国旗を大切に思う国民感情を保護することを目的としています。
『国旗損壊罪』についての世論調査です。
ANNが6月に行った調査では、『国旗損壊罪』を新設する法案が「必要だと思う」は54%。
「必要ではない」が37%でした。
街の声です。
「日本人として日本の国旗を大切に思っている」
「外国の国旗を守る法律があるなら、日本の国旗に対しても同様の法律があって良い」と話しています。
「国旗が傷つけられているところを見たことがない。法律を作るほどのことではないと思う」
「もう少し議論を深めてから進めるべきだ」としています。
これまでの経緯です。
2012年、自民党が野党時代に同様の法案を提出しましたが、日弁連が「刑罰での強制は国家主義を助長しかねない」と反発。
その後、衆議院が解散したため廃案になりました。
2021年、高市総理が顧問をつとめる『保守団結の会』が法案提出を目指しましたが、実現しませんでした。
いわば高市総理“執念の政策”です。
なぜこのタイミングで復活したのでしょうか。
2025年、自民党と日本維新の会で交わされた連立政権合意書には、
令和8年、通常国会において『日本国国章損壊罪』を制定し、『外国国章損壊罪』のみ存在する矛盾を是正する、とあります。
「外国の国旗を汚したり、破ったら、2年、拘禁刑を受けるかもしれない。でも、日本の国旗はどう扱ってもいい。それはやっぱりおかしい」
「2025年の参院選くらいから国旗にバツを付けて持ってくるような人がいて、党員が苦労していた。多くの政党で法案を出すということに意義があると考え、国益を考えて協力した」
「成立を契機に、国旗の定義がますます向上し、今後、一層国旗を大切にする気持ちが醸成され、愛国心も醸成されていく」
「今、我々の周りに国旗が燃やされたり破られたりという事実が多くはない中で、こういう法律を作るというのは慎重であるべき」として、衆議院の本会議では、採決前に退席し、棄権しました。
「国旗を損壊するということは日本人としていかがなものか、という話だからモラル法でいいのではないか」としています。
罰則の必要性を疑問視する声が出ています。
■どんな行為が『国旗損壊罪』対象に?法案の実現性は?
どんな行為が『国旗損壊罪』にあたるのでしょうか。
『国旗の定義』です。
国旗として用いられていると社会通念上認められる有体物です。
処罰の対象になるものは、こうしたケースが想定されます。
1、自治体の庁舎に掲げられている国旗を引きずり下ろして投げ捨てる。
2、人通りの多い場所で国旗を裂く、燃やす、切る。
3、公園・公道で踏みつけ、泥をつける、尿をかける。
4、自室で切る・燃やす様子を撮影し、ライブ配信する。
一方“対象外”となるケースです。
自民党が例示しています。
アニメです。
アニメ、マンガ、ゲーム、生成AIなどによる創作物。
実写映画。
実写映画の中で国旗を損壊する場面の上映。
報道。
国旗を損壊する様子の報道やリポストなどを第三者がする行為。
スポーツ。
サッカーの試合などでのフェイスペイント。
自分の部屋。
自室などで、すでに損壊等された国旗を公然と陳列する行為。
お子様ランチ。
お子様ランチの旗や絵画の一部として描かれた旗の損壊。
ただし、人通りの多い場所で国旗を燃やすなど処罰対象に想定される行為でも、事実認定が困難なケースがあります。
対象者が「ドキュメンタリー映画の撮影です」などと説明した場合などです。
「適用するかしないかは、最終的には、起訴する検察官、裁判所の判断となり、広く有罪にすることはないと思う。しかし一般の人は、無罪になるとしても、捜査対象になったり、通報されたりするだけで負担」
「刑法は『条文を読めばこれは確実に大丈夫だとわかる』というところまで明確性を持たせることを目指すべき」
■海外のケースは?『表現の自由』と矛盾も
海外のケースです。
各国の『国旗損壊』の、罰則の有無です。
自分の国の国旗を損壊した場合にのみ罰則があるのが、G7ではアメリカ、フランス。
他には、中国などです。
自国の国旗と、他の国の国旗、両方に罰則があるのが、ドイツ、イタリア、そして韓国などです。
イギリスとカナダには国旗損壊についての罰則はありません。
フランスの『国旗損壊』の法律です。
2010年から、公共の場所、公衆に開かれた場所で国旗を破壊・侮辱などをした場合には、最大約28万円の罰金です。
法律が制定された背景には、民間の写真コンテストに、国旗でお尻をふく男性の写真が入賞。
全国紙に掲載され論争になったことがありました。
「国旗に対する目に余る行為を罰する手段が現行法になければ法律を改正すべきだ」と話していました。
取り締まりの事例にはこういったものがあります。
2010年、県庁の雰囲気に不満を持った男がロビーで国旗のポールを折り、逮捕・起訴されました。
罰金は約14万円でした。
ドイツの『国旗損壊』の法律です。
国や憲法秩序、国旗、国歌などを公然と侮辱・中傷する行為をした場合、3年以下の自由刑または罰金です。
「ドイツは第2次世界大戦後、現在の国旗に変わった。『ナチスのような時代に戻らないように』という意思の表れで、ナチスやヘイトスピーチに関する表現規制は日本よりも厳しい」ということです。
ただ、実際の有罪件数は、2020年から2024年には、ドイツ西部のノルトライン=ヴェストファーレン州では『国旗損壊』で9件、取り締まりがありましたが、有罪判決は確認されていません。
ドイツの国旗損壊規定は、表現の自由との調整が必要で、限定的な運用になっているといいます。
取り締まりの事例です。
2016年、男性がSNSに、一部が切り取られた国旗の写真をSNSに投稿。
罪に問われましたが、国の基本的価値を損なわない政治的な意見だとして、無罪になりました。
アメリカです。
1989年、アメリカ連邦議会は、全米に適用される連邦法として『国旗保護法』を制定しました。
国旗の損壊、汚損、焼却など行為そのものが処罰対象で、他者に与える心理的影響については記述がありません。
ところが1990年、アメリカ連邦最高裁は、国旗への罰則を定めること自体が、『表現の自由』の抑圧にかかわっているとして、『国旗保護法』は違憲と判断しました。
「アメリカの国旗保護法は現在も存在しているが、過去の違憲判断も維持されている。アメリカ国旗を毀損する行為は、『表現の自由』の観点から保護されており、法律はあるが効力がない状態」
(「羽鳥慎一モーニングショー」2026年7月9日放送分より)















