政治

ABEMA TIMES

2026年7月14日 07:00

「高市政権の国会戦略の稚拙さそのもの」3時間で強行採決の皇室典範改正案、議員定数削減は見送り 党内からは異論も…ジャーナリストが分析

「高市政権の国会戦略の稚拙さそのもの」3時間で強行採決の皇室典範改正案、議員定数削減は見送り 党内からは異論も…ジャーナリストが分析
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 7月10日、衆議院で大きな法律が1つ通過した。皇室をどう維持し、天皇をどう受け継ぐか、皇室のこれからのかたちを決める法律だ。国のもっとも根っこにある大事なテーマであったが、その審議にかけた時間はわずか3時間だった。

【映像】皇室典範改正案「3時間の審議」→強行採決(実際の様子)

 ジャーナリストの青山和弘氏は「保守派からすれば、高市総理の下で衆院選に圧勝した今は、またとない皇室典範改正のチャンス。とにかく一気に改正してしまいたいという考え」だと説明する。

「立法府の総意」にあった“相違”

 今回の法案改正の背景には、皇室に残り、皇位を継承できる「男系男子」が少ない現状がある。現在の皇室のあり方を定める皇室典範では、女性皇族が皇族以外の男子と結婚すれば、皇室を離脱し、養子を迎えることも禁止されている。

 今回の改正は2つの柱からなる。「女性皇族は結婚しても皇室に残れる」「旧宮家の男系男子を養子に迎える」。

 当面の皇族数の確保が目的で、2024年から与野党13党派が10回にわたり議論を重ねたもので、今回は意見の分かれる皇位継承のあり方には踏み込まないとされた。

 6月10日、衆参両院の「立法府の総意」を取りまとめ、政府に提出。しかしこの「総意」には“相違”があった。

 総意がまとまる2日前、衆議院の森英介議長は、「養子となった旧11宮家の男子は、皇族だけど皇位継承権を持たない。しかし、男の子が生まれれば、その子は皇位継承権を持つことになる」と発言していた。

 「養子の子は皇位継承資格をもつ」と述べた森氏に対して、野党は「総意を超えたものだ」と猛反発。相次ぐ野党側の批判を受け、森氏は言葉足らずだったとして謝罪した。にも関わらず、結局、政府案には養子の子が男性なら皇位継承資格をもつことが盛り込まれていた。

強行採決で自民からも棄権が

 これには自民のベテランからさえ苦言が出た。元経済企画庁長官の船田元氏は、HPで「皇族数の確保という本来のテーマから逸脱した、皇位継承まで言及した」「国会の総意を逸脱したと言わざるを得ない」と指摘している。

 そんな中で採決は強行された。自民・維新・中道・国民民主・参政が賛成したが、中道(4議員)のみならず、自民党(2議員)からも棄権が出る異常事態に。共産は反対、チームみらいは党議拘束をかけず、衆議院で可決された。

 木原稔官房長官は「男系継承が古来例外なく維持されてきたことの重みなどを踏まえ、皇位は皇統に属する男系の男子がこれを継承する」としたが、果たしてこれが「総意」と言える光景なのだろうか。

ジャーナリストが指摘する「稚拙さ」

 自民の皇室典範改正案とあわせ、維新が肝いりで成立を目指した法案は先送りとなった。衆院の定数削減に関する法案だ。衆院のほぼ1割、45議席を削減するもので、議員定数削減は維新がかねてから主張してきた「身を切る改革」だ。

 ただ、今回の法案の定数の削減対象は比例区のみで、中小政党ほど議席を失いやすいため、野党側の反対が極めて強い。参政党の神谷宗幣代表は「打倒高市政権だと言い始めますよ。維新、自分たちは大阪だから勝てると思っているでしょ。大阪に攻め込みませんか、みんなで」と呼びかけた。

 青山氏は「“国民の総意”という見え方が必要な皇室典範改正と、野党が徹底抗戦する定数削減を同時期に国会で審議すること自体が無理筋。これは高市政権の国会戦略の稚拙さそのものだ」と指摘する。

安倍政権とは「政策は似ていても、手法は真逆」

 戦略性の有無。青山氏は歴代最長となった安倍政権と比べる。高市早苗総理は、安倍晋三氏の後継者とも自認するが、「安倍氏と高市氏は政策は似ていても、その手法はいわば真逆。安倍氏は政策に順番を付けて戦略的に実現していった。悲願だった安保法制の国会審議に臨んだのは二次政権の発足から3年目のこと。一方の高市氏は一斉にやろうとしてしまう。スピード感はあるが、調整がつかなくなってしまう」。

 そもそも総理には、支える仲間がいる。一番近くで支えるのが官房長官と首席秘書官だ。本来、彼らが情報を集め戦略を立て、時に総理にブレーキをかける。だが青山氏は、いまの官邸はチームが機能不全に陥っていると話す。高市総理が周辺にほとんど相談しないうえに、意見を言う側近を置いていないのが原因だという。

 安倍政権もいくつもの障害に突き当たった。桜をみる会、森友・加計学園といった、いわゆる“モリカケ桜”問題に加え、河井元法務大臣夫妻による大規模買収事件、さらには政権に近いとされた黒川弘務検事長の定年延長などがあった。

危機管理を行う“政権チーム”の不在

 そんな時、安倍政権を支えたのが、官房長官の菅義偉氏と、首席秘書官の今井尚哉氏。一方、高市政権は、官房長官に木原稔氏、総理秘書官には経産省事務次官(事務方のトップ)だった飯田祐二氏だ。

「安倍総理は2度目の総理就任早々に、靖国神社に参拝しようとした。しかし日中関係の悪化を懸念した今井秘書官が、文字通り体を張って止めた。そして安倍総理もそれを聞き入れた。これは一例にすぎないが、高市氏の周辺にはそういうことができる人がいない。そして野党や霞が関、さらにマスコミの情報なども入ってこない。だから危機管理が極めて弱くなってしまう」(青山氏)

 その指摘を象徴するかのような対応が目立つ。まずは“文春砲”。週刊文春が報じた、先の総裁選や衆院選で候補者に対して作成されたとする中傷動画疑惑だ。衆院予算委(6月22日)で野党議員がこの疑惑をズバリと問うも、高市総理は「歯を食いしばって、働き続けてまいりました」「金曜の夜から今朝までほとんど睡眠も取っていません。一生懸命仕事をしています」と答弁した。

 さらに国会答弁としては異例の発言も。「近日中に奈良の秘書の陳述書と、相手企業から送られてきた提案書、これを予算委員会の理事会に提出をしたい。それを持って本件に関する詳細な問いへの答弁とさせていただきたい」。

 自ら答弁せず、書類でかわそうとする姿勢は、火に油を注ぐ結果となった。「こうした答弁は官房長官さえ知らされていなかった。後から周囲に『なんであんなこと言ったのか』と嘆いたという。答弁を1人で考えるから、自分の都合の悪い話になると感情的になってしまう」(青山氏)。

消費税減税でも荒れる党内

 党内での不満が高まっているのが、消費税問題だ。高市総理は食料品の消費税を下げたいと公言するが、国のサイフは火の車だ。政府は「税収が3兆円増えた」とし、その分を減税に回せばいいという声もあるが、その3兆円は今年度の補正予算に使い道が決まっている。

 さらに出ていくお金は、防衛費の増額、ガソリン代や電気代の補助金、増え続ける社会保障費、新たな成長戦略投資など膨れ上がる一方だ。

 足りない分を新たな借金、つまり赤字国債で埋めれば、円の価値が下がる。専門家の間では1ドル200円もあり得るという声も。そして日本財政の信任が失われ国債の価格が暴落する可能性もある。

 食品の消費税減税には党内からの異論が相次ぐ。自民党税制調査会の小渕優子氏は、消費減税に対する不満からか、税調幹部ポストである「インナー」を辞任する意向を示した。「自民党内にも今本当に消費税を下げて大丈夫なのかという懸念が渦巻いている。もしこれ以上の円安、長期金利の上昇を招くようなことがあれば、高市総理は責任を免れない」(青山氏)。

高市総理は「誰にも止められない機関車」

 党内からの反発は国旗損壊罪でも。自民の中からも、採決では岩屋毅前外務大臣が採決を棄権し、法案を共同提出した野党までが欠席した。日本の国旗を傷つける行為を罰する法案だが、恣意的に運用される恐れがあるとして、刑法学者ら約150人が反対声明を出す異例の事態に。それでも高市総理肝いりの政策として、今国会、成立する見通しだ。

 高市氏が総理総裁になって以来、60年ぶりとなる通常国会の冒頭解散や、強引なやり方での国会運営など異例づくしのオンパレードだ。122兆円もの国家予算を決める衆院での審議時間は、過去20年で最短の59時間。総理出席の集中審議は、少数与党だった石破政権の3分の1程度。

 2月の衆院選で自民党は歴史的な大勝をおさめた。だがその中身をよく見るとあることに気づく。自民の小選挙区の絶対得票率は26.9%だが、獲得議席の割合は86.2%。票では4人に1人ほどの支持に対して、議席は8割を超えた。

 では有権者の7割は、すべてを高市政権に白紙委任したのだろうか。「選挙での大勝と高支持率を背景に、高市さんは自らが信じる政策の実現に一気に突き進んでいる。裏腹に、状況の変化に反応する柔軟性や異論に耳を貸す姿勢が欠けているのは明らか。誰にも止められない機関車が、はずみで脱線した時には大事故につながりかねない」(青山氏)。

(『ABEMA的ニュースショー』より)

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