高市政権の国会対応に対して、野党の反発が続いている。ジャーナリストの青山和弘氏が、現状と今後について解説した。
定数削減先送りに「国会対策が稚拙だった」
2026年の上半期を振り返り、青山氏は「1月解散は今までの常識では考えられない。予算審議が一番大事。4月から予算が始まるためには、1〜3月で審議しなければいけない。あと、真冬だと北海道や東北は選挙が大変。これまではやる選択肢はほとんどなかったが、高市総理はここで一気にやってしまおうと、あまり誰にも相談せずに踏み切った」という。
異論はあったものの、圧勝したことで批判は自民党内で完全に吹き飛んだとする一方で、「投票しなかった人も含む絶対得票率が26.9%で、議席86.2%という現実がある。選挙制度はこういうものだといえばそうだが、こうした現状もある。当初予算は無理をして年度内に成立させようとしたが、年度内にはできず、相当あつれきもあった」とする。
その後は「中傷動画疑惑で答弁が揺れ、国旗損壊罪は自民党内に反対が一部あったが通りそうだ。自民と維新の党首会談で、維新がセンターピンと言っていた身を切る改革、定数削減は、先送りせざるを得なかった。とはいえ維新との連立は、高市総理の生命線。断念に追い込まれたのは、国会対策が稚拙だった」と指摘する。
高市総理は「野党から突っ込まれるのが嫌な人」
高市総理は、国会の集中審議の時間が、歴代政権より短い。「選挙があったので、国会そのものを短くした点もある。石破政権は少数与党だったため多くなったこともあるが、それ以前の総理からしても極めて短い」。
そして「高市氏は野党から突っ込まれるのが、明らかに嫌な人。野党と調整する国会対策の人がお願いしても『嫌だ』と言い、みな頭を抱える。一方で『総理がこんなに国会に来る必要があるのか』とか、仕組みを別途考える必要があると思うし国会に縛られるのもどうかというのも事実だ。ただルールが変わったわけでもないのに極端に少ないのは確かだ」と語る。
少ないのはダメなのか。「高市政権は色々な課題をてんこ盛りにする。皇室典範だけでなく、国旗損壊罪や再審法改正など色々な課題、防衛も経済もあるのに、(審議時間が)非常に少ないと野党は不満だ。総理大臣が質問に答えるのは、国会の中から総理が選ばれている以上は日本のルールでは当たり前」
これに元衆院議員の宮崎謙介氏は「『海外と比べると国会に縛られる時間が長いのは問題だ』という議論はある。制度自体の見直しはまた別の議論だ」と反応する。青山氏は「党首討論をいれて、予算委員会は財務大臣だけでいいという改革が1回進んだのに、結果的に党首討論がほとんど開かれずに、予算委員会ばかり開かれる。これは野党側の求めもあるが、そうした現実が続いているのも確かだ」と返す。
「睡眠時間が短い」国会答弁に見る“危機管理”
働き方としては、「高市総理は仕事を家に持ち帰り、読み込むタイプ。確かに睡眠時間は短いのかもしれないが、それは高市総理のやり方で、『睡眠時間が短いから』と国会で言い訳にしてしまうと、『有事が起こった時に、睡眠時間が短い総理が対応できるのか』と危機管理の問題にもなる。会社の社長が『睡眠時間が短いから経営できません』とは言えないのと同じだ」という。
そして、「それを理由にすること自体が、国会答弁も自分で考えるから、ついああいうことを言ってしまう。石破茂前総理や岸田文雄元総理が言っていれば、袋だたきにあっていたのではないかということを口走るのが、高市総理らしいところでもある」と指摘する。
宮崎氏は「普通はレクを受けるため、逆に効率よく時間を使えるが、高市総理はほとんどレクを受けない。そのためオリジナリティの言葉で話している。それが時に裏目に出てしまう。個性はすごく出ている」とする。
青山氏は「得意分野はいいが、不得意な分野や、急に来た質問、自分に都合の悪い質問だと感情的になるところが出てしまう。人と話し合ってないから」「ああいう時は官僚のペーパーも入ってこない」(宮崎氏)。
その結果、青山氏いわく「周りも任せるしかない。本人も求めていないこともあり、『寝てない』など荒い答弁が目立つことがある」のだそうだ。「自分の言葉でしゃべれるのはすごいことだが、危機管理という意味では総理大臣が言うと国際問題になりかねない。中国との関係もそうだが、そういうところはバランスをうまく取らないといけない」。
皇室典範改正案に盛り込まれた“2つの案”
衆議院を通過した皇室典範改正案については「いま皇位継承者は3人。常陸宮さまは90歳で、天皇陛下よりも年上のため、事実上なかなか難しい。秋篠宮さまか、ご子息の悠仁さま。次世代は悠仁さましかいない状況だ」。
加えて「皇族が女性ばかりで、女性皇族は今の法律では結婚すると、眞子さまのように皇室から出る。皇室は公務、外国訪問、被災地、植樹祭、お祈りの儀式などで忙しい。どんどんいなくなると、役割が担えなくなる」という課題もある。
こうした背景から「まずは皇室の数を維持しようと、皇室典範を改正しようとなった。まずは『女性は結婚で皇室離脱』をやめる。改正案では女性は『出たければ出てもいいが、希望すれば残れる』。あとはもう一つ、旧宮家の男系男子を養子に迎える」という案が出た。
「戦後、11の旧宮家が、GHQによって『もう皇族ではない』とされた。ただ旧宮家は室町時代から血が繋がっている。30代以上前の天皇陛下から見ると、男系の血が繋がっているというかなり遠い親戚だが、この人たちの子どもを、15歳を超えたら養子に迎えることができる案。この2つでいわゆる皇室の数を確保するという2本柱だった」
「国会の総意から逸脱」自民からも棄権者が…
青山氏は「『養子に迎えた人は天皇の継承権はないが、その人に子どもが生まれた場合、子どもは生まれた時から皇族だから継承権がある』という“総意”にはなかった点が盛り込まれた」と解説する。
「女性皇族が天皇になる道を開かなくても、男の子が生まれば秋篠宮さま以外にも継承者が出てくるという内容が盛り込まれたため、『ちょっと待って』となった。女性・女系天皇がいいという人も世論調査でも多数いる中で、『想定していないよ。だまし討ちだ』との意見も出た」
そんな中の採決では、「“総意”の2本柱の部分は、ある程度の政党が合意したが、棄権者が自民党や中道の一部からもでた。自民党の船田元・元経済企画庁長官は『国会の総意から逸脱した』と棄権した」という。
宮崎氏は「話の進め方として“総意”でなかった点はあるが、現在の皇室行事を回すためだけでなく、皇位継承も視野に入れてやるわけなので、皇室制度を維持するには、11宮家から養子で戻して、男系男子を継承していく方法しかない。ただ『進め方が乱暴だ』という批判はある。中道や共産、自民党内からも反対の声が出ているが、それ以外はおおむね賛成したのではないか」と考える。
男系男子維持の立場の一方で、「女性皇族から天皇陛下が生まれてもいい。海外の王室も変わってきているので。そういう立場の人からは、だまし討ちとの批判も出ている。“愛子天皇”を国民も望んでいるんじゃないか、という人からすると、改正案は踏み込みすぎとなる」と、青山氏は補足する。
改正案の国会審議が、わずか3時間だった点は「それまでに議長の下で、与野党の協議会をやってきて、議論は出尽くしているというたてつけだが、国民からすると『国民から見える議論は全然ない』となる。天皇陛下は国民の象徴で、『国民の総意に基づく』と(憲法に)書いてあるのだから、議論した方がいい。しかし国会とすれば、そこで反対意見が出ると『国民の総意じゃないじゃないか』となるため、審議は短く、その前にある意味、密室というわけではないが、水面下で調整しようというやり方でやってきた」。
「食料品消費税ゼロ」に異論噴出、板挟みの“まとめ役”は…
食料品の消費税も話題だ。「今国会で法案を通そうという話ではないが、そろそろ結論を出さないとどんどん遅れてしまう。高市総理は食料品減税が悲願だと言っている。小野寺五典・自民党税制調査会長が、野党も含めてまとめているが、『2年だけ消費税ゼロにしても意味があるのか』と異論が噴出している」。
その内容として「まずは『2年後に再び上げること自体できないだろう』と。ただし2年後に上げると約束しないと、日本はこれからいくらでもお金がかかるのに、そのお金をどうするのかとマーケットが反応する。自民党内からも『どうせ今下げても、イラン情勢などで物価が上がり、すぐ吸収される。それなら他のものに使った方がいい』との意見が出て、小野寺氏も板挟みだ」と明かす。
そして、「小野寺氏が高市総理に『反対論が多い』と言いにいくと、けんもほろろに追い返された。小渕優子氏も付き合っていられないと、やめちゃうし。(税調インナー辞任の意向)。小野寺氏は意見がまとまらないから、『意見が3つあった』という取りまとめだけをして、高市総理に『この中から選んでください』としなきゃいけないんじゃないかという状況になってきている」とした。
宮崎氏は「忘れてはいけないのは選挙だ。衆院選で消費減税を掲げた政党がほとんどだった。国民との約束なので、約束は果たした方がいい。党内で足を引っ張る人がいて、野党も反発しているが、国民は高市総理を支持している。国民との約束をほごにすると、一気に人気がなくなるので、こだわる理由は分かる」と考察する。
相次ぐ歳出増も「選挙で約束したから」で突き進むか
青山氏は「断念すれば支持率に影響する。それを高市総理は分かっているから、小野寺氏に指令を出している。ただ、一方で財政問題は大きい。赤字国債でまかなうとなれば、お金をどんどん市場に出すことなので、お金の価値は下がる。1ドル160円台まで来ているが、これ以上円安になれば、物価高も進むかもしれない。消費税を下げるのに物価高になるなら意味がない。金利も絡んで難しい状況だ」という。
赤字国債を出すかどうかがポイントだとして「赤字国債以外に財源を見つければいい。しかし財務大臣が補助金などを見直しているが、現段階ではあまり出ていない」そうだ。「アメリカが防衛費を増やせと言っている。成長戦略でも2040年までに370兆円を使い、すべてが税金ではないがそれなりに巨額だ。ガソリンや電気代、ガス代も補助金をださないと、イラン情勢が落ち着かないとで厳しい。医療費も増えている。歳出が増える中、どうまかなうか、手当てがつけられていないのは事実。まさに『選挙で約束したから』の一点で突き進むかの瀬戸際だ」と語る。
安倍政権と高市政権の違いは「グリップ力」
「チーム作りは長期政権を続けられるかの最大のポイント。17の政権を見てきたが、総理がいかに理想を掲げても、チームで政策を遂行できないと、“絵に描いた餅”だ。安倍晋三元総理には、菅義偉氏という大物官房長官がいて、霞が関をグリップした。言うことを聞かないと、遠慮なく飛ばす。財務省とか厚労省、経産省、みんな自分たちのいいようにやりたがるが、そこをグリップした」
安倍政権では「今井尚哉秘書官が法案をどうやって行くかなどのスケジュールを全部書き、マスコミの情報も取り、危機管理を任せて乗り越え7年8カ月もった」。これに対して高市政権では、「木原稔官房長官も飯田祐二秘書官も優秀だが、木原氏は霞が関をグリップする力はない。マスコミ情報を収集するタイプでもない。飯田氏は今井氏の後輩だが、まだ秘書官としては慣れていない点がある」のだという。
しかも「高市総理に、官房副長官や飯田氏以外にもたくさんいる秘書官の意見を吸い上げようという意思がない」そうだ。「読み合わせも会議もやらず、一人でどんどん考える中で、得意な話はいいが、中傷動画疑惑が出てきたときに自分で答弁を考えてしまう。サナエトークンや消費税、マーケットにも目配せする必要があり、皇室典範の異論や、維新との関係も難しい。てんこもりでスピード感を持ってやろうとする中で、ハンドリングが難しくなってきているのが国会最終盤に噴き出してきたなという状況だ」。
宮崎氏は「木原氏は非常に素晴らしい。誠実で優しい人だ。ただ菅氏のような迫力がなく、ある種冷徹に物事を判断できるタイプでもない。時の政権は、霞が関をいかに動かし、執行するかが大事だが、省庁がなめ腐っている感じが見て取れる」と分析する。
高市総理が“長期政権”を築く条件
菅政権では加藤勝信氏が官房長官だった。青山氏は「菅氏も自分でやりたいタイプ。加藤氏は大物だが、物を申すタイプではなかった」と振り返る。
宮崎氏は「菅氏はそもそも、安倍氏を第二次政権に担ぎ出した人物で、信頼も厚かった。高市総理と木原氏では、高市総理が上という圧倒的なパワーバランスがある」と紹介する。
この関係を青山氏は「高市氏は人から意見をされることを嫌うところが間違いなくある。木原氏は“忠実な部下”。菅氏は厳しいことも言う“盟友”。今井・菅もライバル関係というか意見が違った場合は、最後に安倍氏が判断するパターンができていた。高市総理は『意見を吸い上げる』ではなく、『指令を出す』形式のリーダーだ」と読み解く。
石破政権との違いはどうか。「石破氏は少数与党だったこともあるが、いろいろな意見を聞いた結果、自分がやりたいことが分からなくなってしまった。高市氏はまったく逆で、自分の考えのもとでのリーダーシップがある。ただ、危機管理面や苦手分野で、自分一人ではどうしても情報が偏る。そのリスクをどれだけ避けられるかが、長期政権になるかの分かれ道だ」。
(『ABEMA的ニュースショー』より)