高市早苗総理は7月30日、食料品の消費税率を来年4月から2年間限定で1%に引き下げ、2年後には責任を持って元の税率に戻す方針を正式に表明した。物価高に苦しむ国民生活の支援を目的とする一方で、特例公債に頼らずに約9.4兆円規模の財源を確保するという方針には、市場や専門家から懸念の声も上がっている。与野党の超党派で構成される「社会保障国民会議」でも議論が交わされたが、最終的な合意には至らず、政治判断に対する賛否が大きく分かれている。この食料品消費税の時限的な減税の実効性や公約のあり方、経済への影響について『ABEMA Prime』でも議論が行われた。
■食料品消費税「2年間1%」方針を正式表明 財源と2年後復元をめぐる波紋

高市総理は記者会見において、「物価高に苦しむ中、低所得の皆さまの負担を減らす」と述べ、来年4月から税率を1%に引き下げる方針を示した。また、「2年後には私が責任もって税率を元に戻す」とも明言した。
しかし、この決定には与党内からも異論が噴出。河野太郎元デジタル大臣は「高額所得者が大きな恩恵を受ける。消費税引き下げより本当に困っている方や子育て世帯を給付で支援すべき」と反対を表明した。
野党側でも、国民民主党の玉木雄一郎代表が今回の案に対して「『遅い』『面倒くさい』『効果が薄い』の三拍子だ」と強く批判している。また、関東学院大学の島澤諭教授の試算によれば、この財源をすべて赤字国債で賄った場合、将来世代の生涯負担は約45万円増加するという見方も示されており、財政規律への影響が懸念されている。
■「公約遂行の責任」か「柔軟な方針転換」か

番組内では、消費減税に賛成する自民党の土田慎衆院議員と、一貫して反対の立場をとるチームみらいの峰島侑也衆院議員が対立軸を示した。
土田氏は、選挙公約を実現する責任の重さを強調し、次のように語った。「高市総理が選挙の公約で決めたことをやりきる意思がものすごくあると感じた。消費税減税を掲げて選挙を戦い、3分の2という大きな議席をもらった以上、そこにとらわれないといけない。今回の目的は、目下のインフレ環境における生活負担の軽減だ。永遠に消費税減税をやるという話と、2年だけやるという話は全然違う。2年後に給付付き税額控除で手当てしていくためのつなぎであり、責任を持って戻すと発信することは、マーケットに対する良いメッセージになる。また、給付してマネーの量を増やせば、インフレ下では将来的に物価が上がる懸念があるため、減税を選択している」。
これに対し、峰島氏は減税がもたらす副作用と、より効果的な政策への転換を主張した。「消費税の減税はかえって国民の生活を苦しくしてしまう。今、物価が上がっている理由は円安の進行であり、その背景には日本の財政への不安がある。減税で国を運営するお金が減り、2年後に本当に税率を戻せるのかという不安からさらに円安が進めば、輸入コストが上がり物価はより上がってしまう。また消費減税は、使う食材が高く、消費が多い高所得者ほど恩恵を受けてしまう。それならば、中低所得者にターゲットを絞った所得連動型の給付を早期に行うべきだ。レジの税率を下げてまた上げるだけで多額のお金がかかり、将来の投資にならない。公約に掲げたとしても、国民会議での議論を通じて非常に危険な政策だと分かったのなら、それを国民に説明し納得してもらうのが政治家の仕事だ。人気投票になってはいけない」。
■海外事例に見る「戻し」の反動増リスクと現場が抱える実務的負担

議論は、一時的な減税がもたらす経済的な反動リスクや、現場の事業者が直面する課題にも及んだ。番組ではフィンランドの事例が紹介された。フィンランドでは美容室の税率を22%から8%へと5年間に限って引き下げたが、税率を元に戻した際、価格が下落前の水準を大きく超えて上昇する「反動増」が起きたというデータが示された。
峰島氏は「国民会議のヒアリングでも、減税時は思ったより価格が下がらず、増税時には思ったより上がってしまう傾向が指摘されている。日本も無縁ではない」と警鐘を鳴らした。パックン氏も「お店側は7%減税されても、価格を全額下げずに利益にしてしまう傾向があり、結局末端(の消費者)には届かない」との見方を示した。
さらに、税率を「0%」ではなく「1%」とした背景には、実務上の大きな障壁がある。多くのレジシステムは「0%」を入力する前提で作られておらず、「0%」と「非課税」では会計上の扱いが異なるため、プログラムの作り直しに最長で1年ほどの改修期間を要するという。また、飲食店においては、イートインが10%のままであるのに対し、テイクアウトが1%となるため、現場の実務負担は大きい。
政治ジャーナリストの岩田明子氏は「言ったことは必ずやるというのが高市総理のトレードマークだが、過去の安倍政権で消費税を2回上げた際はものすごい政治エネルギーを使った。2年後は私の責任で上げると言った時に、どういう理屈で上げることが確約されているのかをきっちり見せると皆さん納得いくのではないか」と指摘した。
一方で、EXIT・兼近大樹は、国民感情の観点からこう語った。「どんなに間違っていても、国全体で消費税を下げようと騒いでいた空気感がある以上、絶対にやらなきゃいけない。消費税を下げないと国民の溜飲は下がらない。一度やってみて、その先どうなったかを全員に分からせない限り、不満は下がらない」。 (『ABEMA Prime』より)