政府は5日、飲食料品の消費税率を2027年4月1日から2年間、現行の8%から1%に引き下げる方針と、給付付き税額控除の制度導入に関する基本方針を閣議決定した。高市総理はこの措置を「給付付き税額控除への移行を見据えたつなぎ」と位置づけており、自民党総務会では全会一致で了承されたが、消費減税に慎重なメンバー9人が欠席するなど、党内に慎重論が根強いことも浮き彫りになった。
食料品の消費税率を8%から1%に下げることは、日本経済にどのような影響をもたらすのか。また、2年後に控える給付付き税額控除とはどのような制度なのか。『ABEMA Prime』では、この減税の効果と、その先にある制度設計の課題について考えた。
■価格は本当に下がるのか 「下がる派」vs「下がらない派」

減税分が実際に店頭価格に反映されるかどうかをめぐっては、出演者の間で意見が分かれた。
第一ライフ資産運用経済研究所 主席エコノミストの永濱利廣氏は、「コロナ禍のヨーロッパでは完全には下がらなかったが、7割程度は下がった。日本人は節約志向が強く、食料品は汎用性が高いため、価格を競合より下げることが購買行動に直結する。エコノミストのコンセンサスでも、2027年度から食料品消費税を1%に下げた場合、その年の消費者物価のインフレ率を1%以上押し下げるという試算が出ており、それなりに効果が出るのではないか」と述べる。
自民党の中田宏衆議院議員も「(店頭価格も)5%から7%は下がると思う。スーパーが『消費税減税キャンペーン』をやるはずだ。インフレが長く続いた中で少しでも安いものを求める消費者に対して価格を下げるのは、売る側からすれば当然の行動だ」と語る。
一方、慶應義塾大学大学院教授で経済学者の小幡績氏は、「インフレ局面でこういうことをやると、税が下がった分だけマージンや隙間が生まれ、企業側が得をしやすい。結局誰も得をしない政策になりかねない」と批判する。2ちゃんねる創設者・ひろゆき氏も「小売店は値下げ競争をしても、卸や生産者側がコスト分をプラスして売れば、結果として物価は変わらないのではないか」と疑問を呈する。
文筆家・佐々木俊尚氏は「値段が下がるか上がるかを議論しても、やってみないと分からないというのが正直なところだ。3、4年前まで新聞もテレビも消費減税をしきりに主張していたのに、ここに来て180度(減税反対に)ひっくり返っているのは謎で、ポジショントークが過ぎるとも感じる」と述べ、「2年間の限定措置で、うまくいかなければ後世の反省として活かせばいい。そのうえで給付付き税額控除の道を作っていく方向でいいのではないか」とまとめた。
■「5兆円あるなら直接低所得者に届けるべき」

小幡氏は、今回の政策の立て付け自体に疑問を呈する。「政策意図として何がやりたいのかよく分からない。(減税分)5兆円があるなら低所得者にピンポイントで届くよう使えばいい。防衛強化でも教育投資でも、使い道がはっきりした政策の方が、よほど筋がいい」と語る。
近畿大学 情報学研究所 所長・夏野剛氏も「消費税は高所得者ほど絶対額の恩恵が大きい。低所得者を助けたいのであれば直接届けた方がいい。高市政権発足後、17の成長分野に全てアクセルを踏んでいて予算規模がどんどん膨らんでいる中で、さらにこの話が出てきているのはやはり筋が良くない」と述べる。
これに対して佐々木氏は「給付金は金融資産を持つ高齢層に過剰に行きやすいという問題がある。現役世代は税金をしっかり払っていながら金融資産が少ないのに、高齢者ばかりに給付金というのは不公平感を生む。消費減税であれば現役世代にも恩恵が届く」と異なる側面を指摘する。
ひろゆき氏は財源論について「去年インフレで税収が約6兆円上振れしており、消費税財源26兆円から5兆円減らしても上振れ分がある程度カバーする。足りないとしても1兆から2兆円程度なら、国家予算の歳出から削れるはずだ」と述べ、減税自体には賛成の立場を示した。
■「2年後の給付付き税額控除」制度設計の青写真はまだ見えない

今回の消費減税が「つなぎ」と位置づけられる以上、2年後に導入予定の給付付き税額控除の中身が問われる。中田氏は制度の概要をこう説明する。「給付付き税額控除とは、所得に応じて税額から控除し、所得が低すぎて納税できない人には給付を行うものだ。これまでの給付金は一律のばらまきになりがちだったが、所得連動型にすることで本当に必要な人にピンポイントで届けられる。国民会議での議論でも、2年後には所得連動型の給付金をスタートさせるという方向性は一致した」。
ただし、制度設計には課題が山積している。中田氏は「配偶者が高所得の場合はどうするか、子どもの人数による支出の違いをどう反映するかなど、細かな設計が必要で、最低でも1年はかかる。だから(導入は)2年後になる」と説明する。
永濱氏も「給付付き税額控除は住民税の仕組みを使うため時間がかかる。そもそもどの所得層からどれくらい給付するか、財源はどれだけ必要かという議論がまだ進んでいない。」と語る。
小幡氏は「長期的な問題を解決しないまま目先の政策を繰り返すのではなく、資産課税も含めた長期の議論に全エネルギーを注いで決め切らないと、同じバカバカしい議論を永遠に繰り返すことになる」と警鐘を鳴らす。
中田氏は最後に「2年後に消費税を元の8%に戻す、その時には所得連動型の給付金で、消費税増税分を上回る形で中低所得層をカバーする。そのための制度を今から作る」と強調した。 (『ABEMA Prime』より)