日中関係が「国交正常化されて以来、最悪」とも言われるなか、超党派の国会議員団が中国を訪問し、中国共産党・中央対外連絡部の陸慷副部長と会談した。今年2月に日本側から働きかけ、5月に中国側から受け入れる意向が示されたという。議員団は8月末から4日間、北京を訪れた。
もともと6人の参加が予定されていたが、千葉の豪雨被害対応や日程の都合などで人数が減少。最終的に3人で訪中し、途中で1人が帰国するなか、残る2人が副部長と面会した。訪中議員団の団長を務めたのは、中道改革連合の伊佐進一衆議院議員だ。
『ABEMA Prime』では今回の訪中の意義と成果について、伊佐氏本人と専門家らとともに考えた。
■「全ての交流がない」??今回行かなければならなかった理由

伊佐氏はかつて北京の大使館で一等書記官として勤務し、日中外交の最前線に立った経験を持つ。伊佐氏は今回の訪中の背景について、「これまではどんなに日中関係が悪くても、担当者同士はお互いに連携が取れていた。ところが今は、政府間の交流もない。学術間の交流もゼロで、文化交流もない、青年交流もない。本当に全てがない」と語る。
この状況が日本の経済や様々な分野に影響を与え始めているとして、伊佐氏は「このまま行っても、おそらく日本の国益を損なうだろうという思いがあった。だからまず直接会って、私たちのプライオリティは何なのか、中国側の改善に向けた条件は何なのか、お互いに探ることが大事だと、対話の糸口をどうやって掴むかという意味で、こちらからオファーした」と説明する。
訪中について「招待されて行った」と報じたメディアもあったが、伊佐氏は「あれは間違い」と明確に否定した。今年2月に日本側から提案し、中国側が検討した結果、「それなら対面で会いましょう」と5月に回答があったという。
議員団の規模については、日中友好議員連盟のような大規模・高レベルの訪問では「日中関係がこれでOKになりました、というメッセージになってしまい、中国側も受け入れにくい」と伊佐氏が判断。「本当に議論したかった。それなら各党一人ずつで実質的な話をする中堅ぐらいの我々がいいだろうという思いがあった」と背景を語った。
■「2時間にわたる応酬」??副部長との会談で何が語られたか

予定の1時間が2時間に延びた背景について、伊佐氏は「中国側がいろんな意見を言った時に、日本側として納得しかねるところ、理解できないところについては『ちょっと待ってくれ、私たちはこういう風に思っている』と言い、また日本側の意見に対して中国側は『いや、それは違う』とラリーが相当続いた」と振り返る。
従来の中国外交では「非常に儀礼的なものが多く、双方が言いたいことをそれぞれ述べて終わりという形式が2ラウンド続く程度だった」と伊佐氏は言う。「今回はそれが何ラウンドも続いた。実務家である副部長と議論することができたからだと思っているし、そういう意味では非常に実質的な内容のある議論ができた」とアピールした。
一方の中国側は“ハードライン”(強行姿勢)を維持。伊佐氏が日本人の安全確保や、デュアルユース品目・レアアースの輸出規制が日本経済に大きな影響を与えている点を訴えたのに対し、中国側は「高市政権の台湾に対する姿勢と発言、ここが変わらない限りは政策を変更することはない」と繰り返したという。
こうした中、伊佐氏が強く訴えたのが文化・青年交流の再開だった。「交流がないと、相手国についての情報はSNSか報道メディアからしか入ってこない。いいことなんてお互い言わない。だから日本人はどんどん中国が嫌いになるし、中国人はどんどん日本のことが嫌いになっていく。だからこそ“新型軍国主義”…日本はこれから軍国主義になると、本気で中国の人は思ってしまっている。だからせめて文化交流とか青年交流はやりましょうよということを強く申し上げた」と熱弁した。
また、東シナ海・南シナ海での軍事活動の活発化が日本の安全保障政策に直結していることについても、「言わないと伝わらない。我々は当然のことだと思って言っているけど、中国が分かっていないということをしっかり言わないといけないと思った」と述べた。
■「行ったことは一歩だったか」??訪中の意義をどう評価する

国内では批判的な声も多く上がった。「へりくだってまで会いに行く必要があるのか」「言われて帰ってきただけではないか」といったネット上の声に対し、伊佐氏は「今回、中連部の副部長との間で合意したのは、今回の直接・率直な意見交換は『正常化に向けた雰囲気作り』であるということ。両者一致した」と成果を主張する。
解決したと胸を張って持ち帰ることができれば良かったとしつつも、「最初からそこまでの結論にたどりつくとは思っていない。全く担当者すら会えていない中で初めてこれができたということは大きな一歩だ。この後もしかすると少しレベルを上げて、日中友好議員連盟が行くとか他の団体が行くとかつながっていけばいい。そして文化交流が復活し、日本のアイドルのコンサートだけやりましょうかとなっていければいい」と語った。
また、伊佐氏は「日中友好」という言葉を今回の訪中で一度も使わなかったと明言。「私たちの目的は日本の国益だ。戦略的互恵関係とは言うが、友好とは言わない。それはもう前の時代だと思っている」。そして「価値観が違う国とは外交しないというのは逆だと思う。意見が違うからこそ会って、お互いに合意できるところは何なのかと探るのが外交だ」と主張する。
伊佐氏と同じ中道改革連合の衆議院議員である泉健太氏も「日本にいると『わざわざ行って何か言われて帰ってきた』と言われがちだが、実はそうではなくて、こちらから様子をみに行って、今こういう雰囲気でものを喋ってるんだということを得て帰ってくるという考え方もある。その意味で伊佐さんの今回の(訪中)団はとても成果があったし、今後もなんらかの形で増えていくはず」と見解を述べた。
中国情勢に詳しい東京財団・主席研究員の柯隆氏は、今の中国が習近平政権下で「統制が非常に強くなっており、トップが一言言うと下が絶対に動けない」状況にあると指摘した上で、「今の伊佐さんの取り組みは意義があると思う。ただ、日本という国全体の戦略が見えない。ビジョンがない中でミッションをどこに走らせてもしょうがない。プランAを言ったら相手は必ず反発してくる。プランBを持っていなければ言わない。プランA、B、C全部揃えてから言う…今の日中の状況は、私から見ると子どもの喧嘩で、今ルーズ・ルーズのゲームに入っている。日本の戦略を構築することが重要なポイントだ」と訴えた。
(『ABEMA Prime』より)