中道改革連合が結党から7カ月で、事実上の解体となった。ジャーナリストの青山和弘氏が、その舞台裏を解説する。
野田氏の“敵”は自民党ではなかった
青山氏は、「公明党は26年間も自民党と連立政権を組んでいたが、高市早苗総裁が生まれたのをきっかけに解消した。“政治とカネ”を理由にしているが、保守的な政策を持つ高市氏とリベラルな公明党は一緒にいられないということで解消した。ここがスタート」と語る。
そして、「自民は維新と組み、右寄りの政権になった。ここで危機感を持ったのが、公明党の斉藤鉄夫代表であり、立憲民主党の野田佳彦代表(いずれも当時)。野田氏は私に『これからの敵は自民党ではなく、右派ポピュリズムだ』と言った。平和主義への意識が低かったり、外国人への排斥運動などの右派ポピュリズムにあらがっていかなければいけない、日本の政治はとの思いを強くしていた」と振り返る。
そんな中で、突然衆院解散が決まったため、あわてたのだそうだ。「『強い右派政権に対抗するには、中道左派が一緒にならないと戦えない』。この理屈は間違っていないと思う。自維は強く、高市旋風の中では左側も固まらないといけない。票を集めないと選挙は勝てないため、候補者をそろえ票を集めようと、一気に中道を作ることになった」。
結党強行で無党派層も離れ…
しかしながら「あまりにも、いきなり過ぎた。創価学会・公明党と、リベラルの立憲支持者は26年間戦い合ってきた。カルチャーも、安全保障や原発といった基本政策も違う中で無理やり作った。野田・斉藤の“老舗の顔”はそのままで、政策もほとんど変わらない。名前もちょっと古くさい」と感じさせてしまう。
有権者から「ここに期待していいのか」「選挙のためにくっついたんじゃないか」という感想が出る中で、「『リベラル結集で右派ポピュリズムと戦う』という理念よりも、『選挙での生き残りのために無理やりくっついたのではないか』と、支持者が離れ、公明・学会の人々も投票しなかった」のだという。
加えて「左派勢力には『自民党ちょっと嫌だな』と思っている無党派層が票を入れないと勝てないが、ほとんど入らなかった」という事情もあり、「無残な結果になった」と説明した。
参院・地方議員から大ブーイング
7カ月で事実上の解体に至った原因は、「公示前の167議席が、49議席になった」ことにあると指摘する。「本当は増えると思っていたところ、増えないどころか50まで割ってしまった。つまり国民からノーを突きつけられた。この段階で『参議院議員や地方議員が一緒になっても、いいことがない』となってしまった」。
その後、小川淳也氏が新代表になり、党は一定の議席を確保できるとの前提が最大の誤算だったと総括した。「合流協議も約束通り始めたが、公明は自分の小選挙区を捨てたため、合流してもらわないと未来もない。中道の未来もない中で、合流していくしかないと言いつつ、参議院選挙は再来年、統一地方選挙は来年4月だ。」。
こうした背景もあり「目の前の選挙を抱えた参院議員や地方議員からは、大反対の大合唱が起き、結局3党合流しない結論になった」というが、「3党が合流しないことは“事実上の解体”とはイコールにはなかなかならないが、中道までバラバラになることになってしまった。これが想定の中で最悪の事態になっている」のだそうだ。
「失敗は許されない」発言からの大惨敗
野田氏と斉藤氏は1月にABEMA的ニュースショーへ出演していた。その当時の発言から“答え合わせ”をしてみる。野田氏は当時「失敗は許されない」としていたが、結果は「ここまで失敗するのかというほど最悪の状況」だった。
「49議席になった。岡田克也氏や枝野幸男氏レベルの重鎮が少しでも残っていれば、合流の可能性も残ったのではないかと言われている。『地方も参院も一緒にならないと、リベラル勢力がなくなり、国民の選択肢がなくなる』と大所高所から説得する人もいなくなった。小川代表が一生懸命言っても『何言ってんだよ』と反発ばかりで、今回の解体劇につながった」(青山氏)
野田氏は「排除はしない。我々の理念を理解していればウェルカム」とも話していたが、「全員合流のような形をとったが、基本政策もきっちりつめなかったことが、国民の批判を浴びる結果にもなった」と評価する。
出身党別に見ると、「公明党は比例に全員回って増やした(24→28議席)が、立憲側は大きく減らした(144→21)。もし、立憲側が多い結果なら、公明党の参院だけ中道に合流する案もあった。だが今、公明だけ増えると、もはや中道が公明党になってしまうため、できなかった。それが分裂の1つの理由になっている」と話す。
野田氏の発言には「地方議会の人たちが来なかったら、国民政党ではない」といったものもあった。「その通りだが、彼らは自分の選挙を抱えている中で、“中道”になって有権者の批判を浴びるのはかなわない。立憲東京都連の調査(7月末、143人)では8割が『元の党を残せ』と回答した」。
この現状を青山氏は「立憲の事務局も言っていたが、下の人のいうことを聞いていたら話が進まない。企業同士の合併で、社員ひとり一人に『合併に賛成か』と聞けば、反対が多いだろう。強いリーダーが戦略的に『経営のため』『企業が残るため』と、ある程度強引にやるしかないのに、地方議員にひとつずつ聞き始めた段階で、結論は見えていた。結局、有権者を愚弄する形になった」と批判する。
クラファン1億円の行方は…
資金面でも課題が残る。「中道が受け取る政党助成金に加えて、クラウドファンディングもどうするのか。中道支援のためにと予想以上の1億円以上が集まった。公明系と立憲系に分かれ、その中もバラバラになる。『この1億円はどうするのか』『誰が取るのか』『詐欺的だから、戻した方がいいのではないか』という声まで出ている無残な状態だ」。
では、中道の衆院議員49人はどうなるのか。「バラバラになるが、中道は衆院で野党第1党だ。これが公明系と立憲系に分かれる。統一会派を組む話もあるが、立憲系21人がそれぞれ動き、小川代表のもとに何人残るのかわからない。今衆院を解散されたら、どこに誰が候補者を立てるのか」。
加えて、落選した元議員の扱いをどうするのか。「落選中の議員が今どこにくっついたら良いかわからなくなっている。落選中は給料が出ないため、党が活動資金を援助するが、それが出るかすらも不明で、次の選挙を戦える状況を作れるかわからない」。
結果的に「有権者の選択肢がなくなり、『自民がどこと組んで法律を通すか』という選択肢が増えただけだと、いつ“自民に代わる選択肢”が今後復活するか想像がつかない。何十年かかるのかわからないという状態に陥った」とみる。
“創価学会への拒否感”に公明反発
改めて、今回失敗した一番の要因は何なのか。「まとまって高市政権に対抗する考えはいいが、左右対立の構図に持ち込んだのが古かったのではないか。私は左右のイデオロギー対立、“戦後レジーム”の終わりと指摘したが『憲法を守る』『右だ、左だ』という対立軸自体が時代に合っていなかったのに、そこに拘泥した」。
高市政権が右寄りのため、「左の勢力を作れば、ある程度入れてくれるだろう」という予想もあったが、青山氏は「甘かった」と断言する。「既得権益の自民党に対して、『我々はITやAIを使った、期待を持てる新しい社会を作る』のように異なる座標軸を考えられればもうちょっと違った。それを“古い顔”のまま、“昭和のおじさん”のイメージで行ってしまったこと自体に間違いがあったのではと思う」。
合流断念のタイミングについては、「『年末まで協議しよう』と、先送りする意見もあった。しかし公明党側が『協議を続けても、どんどん離れていくだけだ』と不信感を強めた。創価学会の人たちの拒否感が強く、露骨に『一緒になりたくない』と言うようになってきて、『ふざけんな。君たちが一緒になりたいと言ってきたんじゃないか』のような感情的な対立にまで発展した。そして『これ以上続けるのは時間の無駄だ』となった」と解説する。
こうした状況に自民党はどう思っているのか。青山氏は「高笑いしている」と語る。「例えば消費税でも、公明・創価学会は『消費税を下げること』に親和性がある。彼らは困っている庶民に味方したいと思いがあるから、もう公明党を取り込めないかと思い始めている。立憲の人たちはいい。つまり分断を図れる。自民はいろいろな法案ごとに選択肢が増える。全然脅威もなく、これからは公明党とも上手くやっていこうかなとなってきている」。
新しい野党のリーダーは「展望見えず」
中道の解体によって今後、自民へ接近する議員も出るのだろうか。「今の段階ではないだろう。自民は今回勝ちすぎて、選挙区はどこも空いていないため、受け入れる必要がない。公明も消費税などでの協力はあっても、高市政権との連立は無理だろう。ただリベラル寄りの総理になれば、戻る可能性は出てきた」。
元衆院議員の宮崎謙介氏は、「自民党は石破茂前総理の時はダメでも、高市氏になって盛り上がった。トップが変わればまた戻ってこられると少しは期待があったりする。中道で落選した100人以上の元議員は、次の顔もわからず、何をどう期待していいのか『政治生命を絶たれた』と絶望的な気持ちでいるのではないか。次の統一地方選挙での首長選挙などで、身の振り方を変える人も結構出てくるだろう」と推測する。
現在のトップである小川代表は、どう動くのか。青山氏は「立憲系がバラバラにならないよう、1人ずつ会って説得しているが、厳しい状況だ。野党が再興するには、やはり新しいリーダーが出てこないといけない。それを現職から探すのはもはや難しく、『この人は』という地方の首長が、勢いよく国会に出てくるなどでもない限り、本当に展望が見えない状況になった」と解説した。
(『ABEMA的ニュースショー』より)