政治

日曜スクープ

2026年9月10日 11:50

長期金利上昇どこまで…一時3%突破 米国から“円安是正”異例の警告 高市政権は?

長期金利上昇どこまで…一時3%突破 米国から“円安是正”異例の警告 高市政権は?
広告
3

日本の長期金利、新規発行の国債10年物の利回りが30年ぶりに一時3%を突破。高市政権が掲げる「責任ある積極財政」に米国や金融市場が警戒感を強めているとされる。金利の上昇はこのまま続くのか。そして、トランプ政権による、日本への異例の警告が意味するものは?専門家は、高市政権の情報発信のあり方も注視する。

1)「賃貸」の家賃引き上げまで…長期金利上昇 国民生活に影響じわり 

長期金利の上昇により、国民生活に影響が出始めている。住宅ローンなど借入金の利息の上昇に加え、賃貸物件の家賃も引き上げられるケースが相次ぐ。東京借地借家人法律事務所 種田和敏弁護士は「家賃値上げに関する相談が以前の約2倍に増加、値上げ幅が大きくなっている。これまでは家賃の5〜10%程度の値上げが比較的多かった。最近は30〜50%アップを求めるケース」と指摘。その理由として「賃貸物件を購入するために借り入れをしている大家も多く、金利上昇でローン負担が増えている。その負担を家賃に反映させたいという大家が増えている」という。

金利上昇の影響は、世代によって違うという見方も。世代別の貯蓄・負債残高では、貯蓄は世代があがるほど多くなる傾向があり、金利上昇の恩恵を受けやすい。一方で、住宅ローンなどの返済を終えていない若い世代では負担増になる人が多いとみられる。

金利上昇による暮らしへのメリット、デメリットをどう見たらいいのか?

永濱利廣氏(第一ライフ資産運用経済研究所)
端的に言うと、お金を借りている人は負担が増え、貸している側は利息収入が増える。経済主体で考えれば、政府は借りているお金の方が多く、利払い費が増えるところでマイナス。一方で企業も、借金ゼロ経営のところはプラスかもしれないが、借金が多い企業は利息負担増。場合によっては、倒産の増加、設備投資の抑制要因になる可能性もある。家計については年代別でばらつきが出るが、全体で考えると家計は借入金額よりも、預けている金額のほうが圧倒的に多く、全体では利息収入のプラスの面が大きい。
今回、名目金利は一時的に3%になったが、インフレ率も2%ぐらいに上がっている。実質の長期金利は1%ぐらいだ。2020年にも、実質の長期金利1%台を経験しており、そういった意味からすると、ある程度インフレ経済になってきている側面もある。
ジョセフ・クラフト氏(経済・政治アナリスト)
日本は30年間のデフレから抜け出てきている状況で、インフレに慣れておらず、混乱が生じている。岸田政権以降、実はいまだに日本政府はデフレ脱却宣言をしていないが、もう3年前からずっとインフレになっている。政府がデフレ脱却宣言をして、「インフレの時代です」と言わないと、国民は、金利のある世界に対しての準備ができない。
急な金利上昇で、「インフレは悪いもの」という印象があるかもしれないが、2%前後の低インフレは、企業間の投資や競争力を促進し、経済がより強くなる。家計でもNISAなどへの投資意欲を促進し、投資による収入が増える。アメリカだと家計の6割は株式投資していて、株価が上がれば、それだけで収入がプラスになっていく。家計にとってもインフレは必ずしもマイナス要素だけではないが、日本はまだ賃金の上昇が追いつかず、困惑している混乱期にある。
広告

2)長期金利上昇どこまで 警戒すべき「スピード」そして…

30年ぶりに一時3%を突破した長期金利。上昇はどこまで続くのか。その許容範囲と危険水域、そして政府に求められる対応は?

ジョセフ・クラフト氏(経済・政治アナリスト)
金利の水準と上昇スピードの2つに着目する必要がある。水準に関して言うと、今、GDP成長率1%、インフレが2%ということは、3%の名目金利は決して想定外ではない。ただ、高市政権発足時の1.67%から、わずか1年も経たないうちに3%に至るというスピードが速すぎる。企業も家計も追いつけない。政府はもう来年度予算の金利予想を3.8%としており、GDPが伸びればさらに4%台も許容範囲とはなる。金利の水準に関しては4%台でもある程度対応できるとは思うが、これが1年以内に起これば、やはり企業も家計も対応ができない。スピードの部分が問題だ。
永濱利廣氏(第一ライフ資産運用経済研究所)
財政的には、名目成長の範囲内での金利上昇であれば、財政にマクロ的に悪影響が出るわけではないので、まだ水準は大丈夫ではあるが、金利が名目GDP成長率にかなり近づいてきている。金利が上回る場合は、プライマリーバランスを明確に黒字にしていかないと、債務残高対GDP比が下がっていかない。財政収支と名目GDPの関係で、危険水準も変わってくる。
末延吉正氏(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)
デフレの30年の間、日本経済は縮こまった。最近では、例えばお菓子の販売価格は上げられないから量を減らすなど、生活の中で切実に感じる。ところが、高市政権は発足してまもなく1年だが、皇室典範の改正、国旗損壊罪、国家情報局など、いわゆるイデオロギー的に右的なところから入った。第1次安倍政権の失敗はそこにあった。第2次安倍政権はまず経済からいくと。日本の既存メディアは冷ややかな報道だったが、日本がデフレから抜け出して、ちゃんとしたものを作り、ちゃんとした値段で売って、経済がもう一度大きくなっていくというチャンスに、高市氏は政策を掲げることになる。
だからこそ、政府はもっと「デフレから抜けきりました。インフレの時代なので、経済を動かし給料も上がります。資産を持っていなくても、働けば大丈夫」と発信していく必要がある。若い人たちがローンを組んで、子ども部屋も持てる生活を考えられる未来を見せる。人事も含めメッセージを発し、チームを組んで対策していくべきだ。
広告

3)どう読み解く…トランプ政権が高市政権に異例の警告

高市政権の経済財政政策に懸念を示しているのは市場だけではない。米トランプ政権のベッセント財務長官が踏み込んだ発言を繰り返した。
8月31日の米CNBCテレビのインタビューでは「私は市場が持っていない情報を持っている。日本政府と日本銀行が円高につながる措置をとると信じている」と発言。インタビュアーが利上げのことかと確認をすると「市場は今それを織り込みつつある」と回答した。
その後、9月1日に日本の長期金利が一時3%に上昇。ベッセント氏は記者会見で「日本人に『アベノミクスが大成功を収めたので、今はリフレ政策をやめるべき』と話した。今はタカイチノミクスの時代」と発言した。

これらの発言に対して片山財務大臣は、「一国の財務長官が日本の財務大臣に対して、中央銀行の政策をどうこうすべきみたいな話は一切ない。中央銀行は独立している」と否定した。

ジョセフ・クラフト氏(経済・政治アナリスト)
このような発言が出たということは、日本側は高市政権の政策をうまく説明できていない。安倍政権の政策は、デフレ下で需要を喚起してインフレを起こすものだった。私が見る限り、高市政権の政策は、投資などを促して供給を増やすことにより価格を下げていくもので、デフレ時代の政策と真逆だ。それにもかかわらず、ベッセント長官があたかも同じような政策を未だに引き継いでいると言っている。サナエノミクスなのかタカイチノミクスなのかはさておき、それがどのようなものかを説明しておく必要がある。
このような行き違い自体はよくある。大臣同士でがっぷりやるのはいい。問題は、その内容がリークされたり、ベッセント長官が公開の場で発言していることだ。これは内政干渉で、本来は日本側からも、このような発言を公の場でしないよう釘を刺す必要がある。
永濱利廣氏(第一ライフ資産運用経済研究所)
既に公開されている経済財政諮問会議の議事要旨を確認すれば、リフレ政策的な議論は全く行われていないと分かる。情報が正しく伝わっていないと感じる。私も経済財政諮問会議のメンバーなので機関投資家と情報交換をする機会があるが、中には誤った捉え方をしている人も散見される。政府が直接、正しい情報をアナウンスしていくことが必要だ。
末延吉正氏(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)
日米同盟は安全保障を含めた日本の外交の基軸だ。ただし、それをアメリカに必要以上に言われないためには、日本の主体性を増やす。その中のひとつには中国との対話、対話の窓を開いていかなくてはならない。しかし、対中関係は行き詰まっている。一直線なやり方でなく、これは安倍元首相がよく取材に答えていたことだが、「日本外交の最終目的は隣の大国、中国と共存すること。そのためには日本だけでは力が足りないからこそ、日米同盟なんだ」と。チーム高市としての外交、マクロ経済、金融などの政策をきちんと説明し、メッセージ発信をしていかないと、危うい状況になりかねない。今が分かれ道で、今度の臨時国会での議論は、非常に大切だ。

(「BS朝日 日曜スクープ」2026年9月6日放送分)

<出演者プロフィール>

永濱利廣(第一ライフ資産運用経済研究所 首席エコノミスト。内閣府経済財政諮問会議民間議員。著書に「図解 社会人の基本 お金のしくみがわかるおとな事典 金融・経済「超」入門」(講談社)など多数)

ジョセフ・クラフト(経済・政治アナリスト。東京国際大学副学長。投資銀行などで要職を歴任。米政治経済の情勢に精通。米国籍で日本生まれ)

末延吉正(元テレビ朝日政治部長。ジャーナリスト。東海大学平和戦略国際研究所客員教授。永田町や霞が関に独自の多彩な情報網を持つ。湾岸戦争などで各国を取材し、国際問題にも精通)

広告